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死にたくないから聖女と悪役令嬢、ついでに妹を攻略します!  作者: ハムえっぐ


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第40話 メンヘラ聖女と道連れ王子

 リリアナが放つ黄金色の聖なる光は、もはや奇跡というより歪んだ執着そのものが形となった、狂気の顕現だった。

 その光はただ浄化するのではない。彼女の独占欲そのものが他の全てを拒絶し、塗り潰そうとするかのような異様な圧力を伴っていた。


 裏庭全体を、いや、世界そのものを終焉の闇で染め上げんとしていた魔王ゾルダークの禍々しいオーラが、リリアナの歪んだ愛の熱量に焼き尽くされるかのように、悲鳴じみた音を立てて掻き消える。


 その異常なまでの浄化の力は、吹き飛ばされて地に伏していた仲間たちにも及び、彼らの傷を癒して失われた気力を有無を言わさず奮い立たせて次々と立ち上がらせる。

 騎士団の崩れかけた円陣も、その絶対的で独善的な光に支配されるように再構築され、再び壁となって魔王の前に立ちはだかった。


「な……なんだ、この忌々しい光は……⁉ 我が絶対的な魔力が……浄化されているというのか……⁉ いや、違う! これは……単なる聖属性ではない! 人間の小娘が持つにしては、あまりにも歪んだ、狂った執着の光! 精神に直接干渉してくるような……! 気味が悪いわ!」


 魔王ゾルダークが尊大な自信に満ちた表情を初めて崩し、明確な嫌悪と焦りの声を上げた。

 リリアナが俺への想い【メンヘラ】を拗らせに拗らせて覚醒した狂気の聖女パワーは、魔王の理解すら遥かに超える、異質で予測不能な力だったのだ。


「リリアナ……すげえ……! いや、これはヤベえ……! マジもんの、ガチのメンヘラ聖女じゃねえか……!」


 俺はあまりにも神々しくも狂気に満ちた、荘厳でありながら背筋が凍る光景を、ただ呆然と見上げていた。


 これが、聖女リリアナの真の力(のヤバすぎる方向性)……!

 この異常な光があればクソッタレで理不尽な魔王に、一矢報いることができるかもしれない!

 ……けど、これ、どう考えても、後始末はどうすんだよ⁉

 俺、この子に完全にロックオンされてるやつじゃん!

 下手したら監禁エンドまであるぞ!


 だが、その代償はあまりにも大きい。

 リリアナは明らかに限界を超えた力を無理やり解放しているのだろう。顔は紙のように真っ白で、瞳の奥は狂的な輝きを放っているが、華奢な体は立っているのがやっとというように小刻みに震えている。

 全身全霊で放たれる黄金色の光は、彼女自身の生命力そのものを、ロウソクのように激しく燃やしているように見えた。


(このままじゃ、リリアナが……! いくらメンヘラパワーが凄まじくても、あんな力を出し続けたら……文字通り、燃え尽きちまう! いや、燃え尽きる前に、俺を道連れに何かとんでもないことをやらかしかねん! どっちにしろマズい!)


 俺は懐に忍ばせていた最終破壊兵器、『小型魔力炉・不安定化MAX・リモート自爆スイッチ付き(超絶危険物)』の冷たい感触を再び強く握り締めた。


 リリアナだけに、こんな狂気の沙汰をこれ以上続けさせるわけにはいかない!

 ここで俺が俺なりのやり方で、このクソみたいな最終決戦にケリをつける!


 俺が悲壮な覚悟を決めて自爆スイッチに指をかけようとした、まさにその時だった。


「まだだ……! まだ終わらせはせんぞ、執着の小娘ぇぇぇぇぇ!」


 魔王ゾルダークが、残された全ての憎悪と魔力を振り絞るかのように咆哮を上げた!

 その巨大な体から、さらに濃密で粘つくような底なしの闇のオーラが最後の悪あがきのように噴き出し、リリアナの放つ狂気の聖なる光と正面から激しく衝突し、拮抗しようとする!


 純粋? な光と絶対的な闇が、凄まじいエネルギーの奔流となってぶつかり合い、空間そのものが悲鳴を上げているかのように激しく揺れる! 大地が割れ、空が軋む!


「ぐっ……うぅ……! アレクシス様は……私の……私のものなのに……邪魔……邪魔しないで……!」


 リリアナの身体が大きくよろめき、ついに片膝をつきそうになる!

 黄金色の光が、ほんの一瞬、憎悪とも取れる激しい色を帯びて揺らめき、わずかに弱まった!


「いかん! リリアナ嬢が限界に近い! しかも精神状態が極めて不安定だ!」


 ヴィンスが冷静な分析を叫ぶ! その声には隠しきれない焦りが滲む!


「今が好機であり、最後の最後のチャンスかもしれん! この暴走聖女の力を利用しつつ、かつ制御できるのは俺しかいねえ!」


 その瞬間、俺の卑怯で回転の速い頭脳が、土壇場で一つの活路を閃いた!

 自爆は最後の最後の手段だ! その前に、まだやれることがある!

 リリアナのこの異常な力すら、俺の生存戦略のために利用してやる!


(そうだ! 魔炎の谷でヴィンスに解析させた魔王の弱点……やつは絶対的な力を持つが故に、その膨大な魔力制御には、ほんの僅かなタイムラグが生じる! そして、ゲーム通りなら奴の核の位置は……胸部中央! リリアナの執着の光で弱らせ、俺の悪知恵と仲間たちの総力でトドメを刺す!)


 俺は叫んだ!


「ヴィンス! 例の『アレ』を使うぞ! 座標は奴の胸部中央! リリアナの光が完全に消える前に、やるぞ!」


「かしこまりました! 皆さん、殿下の合図に備えてください! リリアナ嬢の精神状態にも最大限の注意を!」


 ヴィンスは一瞬驚きながらも、即座に俺の意図を理解して仲間たちに指示を飛ばす!


 俺は懐からもう一つの切り札を取り出した。

 それは魔力を極限まで不安定化させる特殊な液体が充填された、禍々しい輝きを放つガラス瓶だ。それを遠隔操作で正確に目標に叩きつけるための、俺特製の小型投射装置(見た目はパチンコ)だ。

 強化訓練中にヴィンスの知識を借りてこっそり開発しておいた、対強敵用の秘密兵器だ。


 名付けて『魔力循環・強制メルトダウン☆ビンゴォ!ランチャー(聖女の狂気的な愛も添えて・ぶっつけ本番試作品)』


「くらえ、クソ魔王! 俺の悪知恵と科学力(?)、そしてメンヘラ聖女の愛(激重)を舐めるなよ!」


 俺はランチャーを構え、リリアナの光で弱体化し、仲間たちの攻撃でわずかに動きが鈍った魔王の胸部中央……魔力の核が存在するであろう一点に向けて、狙いを定めた!

 そしてリリアナが、俺への独占欲をさらに爆発させるかのように、再び狂おしいまでの黄金色の光を強めた、まさにその瞬間!


「今だあああああ! 全員、合わせろ! 最大火力で陽動しろ!」


 俺の合図と共に、仲間たちが最後の力を振り絞って一斉に陽動攻撃を仕掛ける!


 ヴィンスの指揮能力最大技!『運命の棋譜(フェイト・スコア)』が発動し、仲間たちの動きが神がかり的な連携を見せる!


 ガレスの全身全霊を込めた会心の一撃!『星砕きの一撃(スター・クラッシャー)』 が魔王の足元を揺るがす!


 マリエッタの風魔法と剣技を融合させた新必殺技!『真空裂空斬ヴォイド・スラッシャー』が魔王の側面を切り裂く!


 カロリーネが残った魔力を振り絞り放つ究極奥義!『絶対零度の吹雪アブソリュート・ゼロ・ブリザード』が魔王の動きをさらに鈍らせる!


 ルシアンの風が竜巻となり視界を遮る秘技!『撹乱の風ディストーション・ウィンド』!


 カイルも捨て身の特攻!『忠義の盾ロイヤル・シールド・バッシュ』が魔王の注意を引きつける!


 魔王が一瞬、その多方面からの決死の陽動に気を取られた!


 その本当に一瞬の隙を見逃さず、俺は魔力暴走誘発瓶をランチャーで撃ち出した!

 瓶は正確に魔王の胸部に命中し、バリンと音を立ててガラスが砕け、中の禍々しい液体が魔王の体にベットリと付着する!


「ヌオオオオオ⁉ こ、これは……⁉ 我が体内を循環する魔力が……乱れる⁉ 制御不能に……⁉ この人間め、一体何を!」


 魔王が驚愕と苦悶の声を上げる!

 狙い通りだ! 特殊な液体が魔王の体内のデリケートな魔力循環回路を狂わせ、制御不能な暴走を引き起こし始めたのだ!

 魔王の体から制御を失った魔力が、火花のようにバチバチと迸り、その巨大な動きが明らかに不安定になる!


「トドメだああああ!」


 俺は勝利への道を確信し、最後の指示を出す!


「リリアナ! 奴の核に、お前のその歪んだ愛……いや、聖なる光を全力で叩き込め! カロリーネ! 奴の全身を氷で完全に拘束しろ! ガレス、マリエッタ! 奴の体勢を完全に崩して、核を無防備にしろ! ヴィンス、ルシアン! 全力の補助で、全員の力を最大限まで引き上げろ!」


 仲間たちが、俺の指示に応えて最後の総攻撃を仕掛ける!


 リリアナの黄金色の光が、俺への愛を証明するかのように、暴走する魔王の核へと吸い込まれるように内側から蝕み、カロリーネの絶対零度の氷が魔王の巨体を氷像のように完全に凍てつかせ、動きを封じる!


 ガレスとマリエッタが渾身の一撃を叩き込み、ついにその巨体を大きく傾かせ、核を完全に無防備な状態へと晒す!

 ヴィンスとルシアンが最後の補助魔法で仲間たちの力を最大限に引き出す!


 そして、俺は……!


 震える手で『小型魔力炉・自爆スイッチ付き』を再び構え、完全に無力化されつつある魔王に向かって高らかに宣言した!

 これはブラフだ! だが、本気のブラフだ!


「終わりだ、魔王! てめえは俺様が道連れにしてやる! この俺ごと、消し飛ぶ覚悟はあるかあああああ⁉」


 俺は自爆スイッチを押すフリをしながら、ありったけの虚勢を張って魔王を挑発した!

 メンヘラ聖女と自爆覚悟の王子、ダブルのプレッシャーで精神的にも追い詰める!


「な……⁉ き、貴様……! 正気か……⁉ そのような物を……!」


 魔力暴走と仲間たちの総攻撃で物理的に弱体化し、さらに俺の自爆脅迫とメンヘラ聖女の狂気のプレッシャーに精神的に動揺した魔王の防御が、一瞬、本当に完全に解けた!


 神が与えてくれたかのような、本当に一瞬の隙を俺は見逃さなかった!


 俺は自爆装置を素早く懐にしまい、代わりに腰に差していた、何の変哲もない、ただの装飾過多な王子の短剣を抜き放って叫んだ!


「今だカイル! 例のアレを! リリアナ! 俺のこの短剣に、お前のそのヤバい愛……いや、聖なる力を貸せ!」


「はいっ! アレクシス様!」


 カイルが俺の指示で事前に用意していた、聖水で幾重にも清められた特殊合金製の破魔の矢じりを、俺の短剣の先端に素早く装着する!

 同時にリリアナの黄金色の光の一部が、まるで祝福(という名の呪縛?)のように俺の短剣に吸い寄せられ、刃を神々しくも禍々しいオーラで輝かせた!


 普段なら石ころくらいしかまともに投げられねえ俺だが、今は……やるしかねえんだ!


 俺は最後の力を振り絞り、仲間たちが作り出してくれた最高で最後のチャンスを活かし、完全に無防備になった魔王の核一点を目がけて、聖女の歪んだ愛の力が込められた聖なる破魔の矢じり付きの短剣を、渾身の力で投げつけた!


 ヒュンッ!


 短剣は一条の光となって正確に飛び、魔王の胸部中央である魔力暴走の中心点に、深々と突き刺さった!


「グ……ギャアアアアアアアアアアアアアア! バ、馬鹿な……! 我が……この我が高貴なる魔王が……! こ、こんな……人間の小賢しい策と……メンヘラ聖女に……滅ぼされるなど……! 認めぬ! 認めぬぞおおおおおおおおお!」


 聖なる破魔の力と内部からの魔力暴走、メンヘラパワーの相乗効果、さらに核への物理的な直接攻撃!

 魔王ゾルダークは凄まじい絶叫を上げ、巨大な身体が内側から崩壊するように、まばゆい光と絶望の闇が渦巻きながら砕け散り始めた!


 ズドオオオオオオオオオオオオオン!


 天地を揺るがすほどの断末魔と共に、絶対的な支配者であったはずの魔王の巨体は完全に消滅し、後には静寂と、浄化された清浄な魔力の粒子だけがキラキラと舞う空間が残された。


 ……なぜか、俺の周囲にだけ妙に濃密に残る、リリアナの黄金色の光の残滓だけが、まるで祝福のように、いや、呪いのように、キラキラと舞い散っているんですが。

 戦いは終わった……んだよね?

 

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