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深淵のルシオール  作者: 三木 カイタ
蘇る狂気
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第5話 再会 3

 綺麗な女性が、色んな料理を蛍太郎の為に取り分けてくれていたし、言葉が分からないのにエルフの少女はニコニコ話しかけてくる。

 その様子を見て、青年が笑う。

「まあ、食べながら紹介していきまひょ」

 そう言って、竜の団のメンバーを紹介してくれた。


 エルフの少女は「ミル」。綺麗な女性は「リラ」。もう一人の戦士の男は「ファーン」。背の高いエルフは「ランダ」。黒髪の少女は「アール」。露出の多い元気そうな女性は「エレナ」。

 みんな「冒険者」らしい。

 まるで小説とかゲームのような職業だ。どんな冒険をしているのか、興味が湧く。



 食事の間に、互いの名前を覚え、蛍太郎はみんなから、特にミルから「ケータロー」と呼ばれて声を掛けられた。

 エレナは男性恐怖症だと言う事で、積極的に関わらないようにと注意を受けた。

 蛍太郎も、青年の事を「カシム」とだけ呼ぶようになった。日本語で「カシムさん」と言うと、エレス公用語だと、おかしな具合になるからだそうだ。


 そして、食事が終わったら、全員で大きな部屋に集まる。宿泊するために取ったのは、男性用と女性用の二部屋だが、女性の方が多いので、女性の宿泊する大部屋に集合したそうだ。



「さて、ちょっと通訳しながらやから、手間ぁ掛かるんは堪忍やで。せやけど、これでやっと話せるわ」

 カシムが言う。

「まず、『ルシオール』言うんは、黄金の髪ぃ持つ青い目の少女やな?」

 カシムの言葉に蛍太郎は頷く。そんな存在は他にいないはずだ。多分、ルシオールは四十六年経っていてもあの時の姿のままのはずだ。

「で、おまはんは、エレスと違う世界から来たお人どすな?」

 カシムの方言が、どこの方言なのかやや気になったが、頷く。正確には過去の地球から来たのだが、話をややこしくしそうなのでその事は話さなかった。

 それにしても、言葉が分かるだけで無く、こっちの事情も事細かく知っていてくれるのは、本当に助かる。


 カシムは一つため息を付くと、仲間たちに向かってしばらく説明をする。

 全員の表情が驚愕に変わる。そして、マジマジと蛍太郎を見つめる。

 それまで終始冷静な態度だったエルフの大男ランダが、顔色を変えて立ち上がり、大きな声で叫んだ。

 それにはカシムたちも驚いたようで、今にも蛍太郎につかみかかりそうな勢いで興奮するランダを、必死で押しとどめていた。

 エルフの少女が何かを言って、ランダはようやく落ち着いた。


 苦笑を浮かべてカシムが説明してくれた。

「すまへんなぁ。おまはんが地獄から来たぁゆうて、ランダは情報が欲しいんよ。地獄の第七階層にチヅル言う魔王がおれへんかって」


 今度は蛍太郎が驚き興奮する番だった。

「千鶴だって?!なんで千鶴を知っているんだ?!」

 全員が驚く。

「・・・・・・これは竜恵やなぁ。こうまで話がうまぁ行くとは・・・・・・」

 カシムが微笑む。心配そうに成り行きを見守る黒髪の少女アールの頭を撫でてから、カシムは静かに蛍太郎に尋ねた。

「チヅルは、地上から生きたまま地獄に落ちた人間を保護してはるんか?」

 蛍太郎は頷く。

「そう聞いている。千鶴も生きたまま地獄に落ちて、魔物に食べられた人間だったんだ」

 カシムが息を飲む。

 それから、仲間たちにエレス公用語で伝える。


 説明する必要がありそうだったので、魔物の意識の優先権について、蛍太郎は千鶴に聞いたままの説明をする。

 竜の団の全員が驚く。

「それは、知らん情報やった。多分創世竜も知らへんやろうなぁ」

 カシムがブツブツという。


「それで、千鶴は、生きたまま地獄に落ちてきた生者を、出来るだけ助けようとしていて、何でも第七階層には生きた者たちの町があるらしい」

 千鶴の強さは蛍太郎も見たし、その千鶴が「結構賑わっている」と行っていたのだから中々の規模なのだろう。

「これは・・・・・・希望が持てる話や」

 カシムが仲間たちに伝えると、ランダが顔を手で覆った。

 その様子から、ランダの知っている人が、生きたまま地獄に落ちたのだろうと推測できた。


「・・・・・・千鶴は、俺を助ける為に、今はもういない。でも、彼女の部下も元々生きたまま地獄に落ちた人だから、保護は今も続いているはずだよ」

 蛍太郎が付け加える。カシムが頷き、また仲間たちに伝える。



「ありがとうな。・・・・・・せやけど、おまはんの話ぃ聞いてると、そのチヅルいう魔王は、ケータローの大切な人やったんやろ?」

 カシムの表情が優しさと切なさを孕んでいる。カシムは、命の大切さを知っている男のようだ。

 人に言われて、そして、ようやく状況が落ち着いて、改めて蛍太郎は千鶴の消滅を悼んだ。

 涙が溢れてくる。

 悲しみと、切なさと、喪失感が蛍太郎を襲う。

「うあああぁぁ。千鶴・・・・・・。千鶴・・・・・・」

 嗚咽を漏らす蛍太郎の背を、リラとミルが撫でる。

 皆が皆、蛍太郎の痛みを悼んでくれているようだった。

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