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怖い大操作戦

 即日、街を出た。


 貯蓄を切り崩して旅支度を買い揃えて、二人しばらく徒歩の旅だ。


 元よりダンジョン攻略なんかで野宿には慣れているので、準備はすぐに終わった。



「本当について来てくださるのですか? マスター」


「アリスが嫌なら良いけど、俺はしばらく暇だし、久しぶりに王都の師匠に顔出したかったしね」


「お師匠様ですか、それは喜ぶでしょう」


「いやーどうかな。本でも読みながら第一声、お茶って言われる気がするよ」



 レイが苦笑いしながら言うと、アリスはそれを楽しそうに聞きながら、襲いかかる魔物をレーザーで退治する。

 多いであろう魔物との戦闘を想定し、少し勇気のいる決断をしたレイは、そんなアリスにも苦笑いを向けていた。




 ●●●●●●




「やっぱり、様子がおかしいな」



 丸一日歩き通して、二人は道中一つ目の小さな街へと到着した。


 この街は歴史が深く、商人などが旅の途中で物資の補給や暫(しば)しの休息。

 何かしらの不祥事が起きた場合の救助を待つ場として、初代国王が作り上げた街なのだ。


 基本的な人口は二百人以下であるが、普段は商人達で賑わっている筈。

 しかし今日は、人が少ない。

 街本来の住民以外、見当たらないのだ。


 このおかしな様子の街の住民とはあまり触れ合わない方が良いとレイは判断して、早々に宿を取り、食事は手持ちの素材を、借りた窯(かま)で簡単に調理して済ませた。



「この街は、生きていないのですね」


「街が生きてない? 確かに様子はおかしいけど、人は居るよ」



 食事の後、宿の部屋にてアリスが言った。

 元々街に違和感を抱いていたレイはそれに食いつく。



「昨日までいた街は、人が住む為の街であり、その役割を果たして生きていると感じました―――しかし、この街の役割は暮らしではなく、商業であるというのは一眼見れば明らかです。しかし今、それは果たされていない…………まるで、死んでいるようなのです」


「じゃあ、アリスはどうしたい?」


「私は……生きているこの街を見てみたいのです」



 アリスは言った。

 すると、レイは少し考えてからそれに応える。



「明日街を出る前に調べてみようか。何か分かるかもしれない」


「ありがとうございます…………!」



 嬉しそうに言ったアリスを見て、レイは満足したように寝る支度を始める。

 前回のような誤(あやま)ちは繰り返さんと、今回はベッドが二つ付いている部屋だ。


 旅道具の破損を確認してから、食料品などの消費量に、自分の記憶違いなどが無いか確認する。



「よし……間違いなしっと。それじゃあアリス、おやすみ――――――って、アリス、何見てるの?」



 寝る前にアリスに一声かけようとすると、当のアリスは静かに窓から外を眺めていた。


 何かあるのかとレイも外を見るとそこには、大量の松明(たいまつ)の灯りが並んでいた。



「何これ…………」


「敵意は感知出来ませんが、善意もありません。まるで―――人形の様です」


「操られてるって事?」


「恐らくは」



 警戒してか、操られた街の住民たちは宿屋の中には入ってこない。



「アリス、夜目は効く?」


「光源がある状態と変わらない程度には」



 部屋の明かりを消してからアリスに外の見張りを頼んで、レイは急いで寝巻きから昼間旅や戦闘をする際の服に着替える。



「剣、刃毀(はこぼ)れ無し。水筒、満タン。外套( がいとう)も破れてないし、靴底の仕込み刃も異常無し」



 ダンジョンに潜る前や戦闘の前に余裕があれば必ず行う、ルーティンの様な声出し確認を終えて、静かにアリスの元へ行き肩を叩く。



「変わるから、着替えちゃって」


「了解いたしました、マスター」



 小さな声で最小限の伝達を終えて、役割をチェンジ。

 中からは松明の明るさで外が見えるが、外側からレイ達の居る室内は見えない。

 更に念には念をと、窓枠の隅ギリギリから身を乗り出して、体全体が見えないよう外を覗く。


 人数は恐らく住民全員。

 武装は鎌や鍬(くわ)、包丁やフライパンなどなど、日常的に使う物が多かった。

 中には剣を装備している物もいるが、整備が行き届いていないのか、錆が目立ったり、柄に巻かれた布が綻びていたりする。



「敵の装備は寄せ集めっぽい。誰かがここにいて細かい指揮をしているってよりかは、遠くから簡易の命令を出すタイプの魔法だ。武器なんかを見るに多分、家にある武器になりそうな物で、旅人を襲撃しろってところだ」


「目が良いのですね」


「昔師匠に、嫌ってほど鍛えられてね」



 着替えを終えたアリスに言って、再度見張りを交代する。

 危険度は高くないとはいえ、意識を一人一人の動きにまで張り巡らせて警戒するのは体力を消耗する。



「マスター、行動を開始するようです」


「ちょうどいいタイミングだ。こっちから打って出よう」



 外を覗くと、数人が宿屋に侵入を開始している。

 耳を澄ませば―――部屋の外の廊下で床が軋む音も聞こえた。



「今から俺がキャンドルを投げるから、そしたらアリスも飛び出してもらいたい」


「了解しました、マスター」



 レイはキャンドルにマッチで火をつけて、指で三、二、一とカウントダウンをする。


 そして指を全て折り畳んだ瞬間に、窓を割ってキャンドルを放り投げた。



「今だ!」



 レイは叫ぶ。

 瞬間、二人揃って窓から飛び出した。


 二人に注目が集まる中、レイはアリスにしか聞こえない程小さな声で、なるべく早く生かして無力化するようにと伝えた。


 着地と同時、戦闘を開始する。


 鍬を振りかぶる男のみぞおちを蹴り上げ、悶絶する間に大衆へと蹴り飛ばし、人の列を崩してから抜刀。


 飛来する矢を一本剣で叩き落として、弓手の位置を把握。

 剣で叩いた際に真っ二つにへし折れた矢の矢尻が付いている方は回収して、次襲いかかって来た剣を持つ男の膝に突き刺した。


 すると男は、それは大きな叫び声を上げた。


 痛い痛いと、明確な意思を持って。



「アンタ達、喋れるのか!」


「そうだ! だから助けてくれよ!」


「なんでこんな事になってる! それが分からなきゃ何も俺た達は動けない!」



 レイは男の膝から矢尻を引き抜いて、ダンジョンなどで無理な地形を登るために使用するロープを使い、男を近くの街灯に縛り付ける。



「アリス! 原因が分かるかもしれないから、俺の周り防衛を頼む!」


「了解、マスター」



 アリスは普段と変わらない様子で応えた。

 自分の元へと駆けつけるアリスを見たレイは一まず安全エリアを確保出来たと安心して、剣を納める。



「よし―――しばらくは安全の筈だ。話してくれ」


「ああ、話すとも。ことの元凶は、二日前――――――」

1時ごろにもう1話投稿します。

また会おう!

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