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SECOND YOUTH~二回目の青春~  作者: 六依由依
序章:過去を失った少女
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第9話:再開の式典


前の私の友達は、今の私を見たら、どう思うのだろう。

私は、前の私の友達を放っておいて、新しい青春に手を出して良いのだろうか。


私は、前の友達に、会って良いのだろうか。



一月一日。

新年早々、私はこんなことを考えていた。



なぜなら、今、私は二十歳。

そろそろ、成人の日がやって来るのだから。



私が二十歳なのだから、かつての友達も二十歳。

会う可能性は、十二分にある。


-----------------






体力的な問題で、成人式は車椅子で参加することになる。


成人式の会場は、晴着やスーツの人たちで埋まっていた。

私も晴着を来てはいたが、当然のように浮いているのであった。


見た目高校生で車椅子なんだから、仕方ないのだけれど・・・





-----------------------





市長の話が終わり、人の波は様々な方向へと動き出す。

場所を取る車椅子では、その波に乗ることも逆らうこともできず、立ち往生していた。





「あ、あそこ、六依さんじゃない?」

「車椅子・・・?」



人ごみの先、遠くで誰かがこちらを指さしている気がする。


「お母さん、あの人たち、誰?」

「え?えーっと、どこ?」


そんな話をしていると、指をさしていた一団がこっちへと向かってきた。


「こんにちは、千尋さん」

「あら、こんにちは」

「あれ・・・?そこにいるのって・・・もしかして・・・由依・・・?」


「え?あっ・・・あの」

この人達も、私の知り合い?突然名前を呼ばれて、狼狽えてしまった。


「由依!?目が覚めたの?」

「ユイっち全然かわってなーい」

「マジかよ。本当に由依なのかよ」

「実は鈴ちゃんだったり?」



「えっ、あっ そのぅ」

四方からもみくちゃにされて、返事が出来ない。


「あっ、あの! ちょっと待って、その、私ね・・・」


「「「ん?」」」







「記憶・・・喪失・・・!?」

少し、個人的に話したいことがあると、お母さんに言って、席を外してもらって、

正直に今私に起きていることを全て話すことにした。

記憶が無い事、五年間の時差がある事、外見に変化が無い事。そのせいで体力が無い事。



「うん・・・だから、実はみんなの名前は憶えて無くて・・・」

こんなおめでたい日にこんなことを伝えるのは、軽薄だったかもしれない。

でも、知らないまま話を合わせてて、ボロを出してバレてしまうくらいなら、始めから伝えるべきだと、

そう判断して、伝える事にした。



「そうだったんだ・・・」

「ごめんね、さっき急に抱きしめたりして・・・」


すこし距離ができる。きっとこれでいいんだと思う。これが今の私との適正距離だから・・・




「じゃあ、今ここで新しく自己紹介しよっか」

「え?」

「顔も名前も覚えてないんでしょ?だったらもう一回覚えてもらわなきゃね!」

予想外の申し出だった。勝手に一人で他の人の事を忘れた私の為に、身内でもない皆が動いてくれるなんて、ちょっと申し訳なくなる。



「でもそんな・・・悪いよ、私の為に・・・」

「由依の為?違うよ、私がもっとこう、ほら、楽しみたいからだよ」

「???」

えっと、つまりどういうこと?

「つまり、また昔みたいにみんなで遊びたいから、一旦全員の情報を共有しておきたいと、そういうことでしょう?彩奈さん?」

「そうそれ!ナイス佳蓮ちゃん!」

次々と会話がパスされていく。そのスムーズな流れを見て、本当に仲がいいんだろうなぁと、そんな事を思っていた。


「というわけで、自己紹介行きます!№1! たちばな 彩奈あやな!二十歳!」

「皆そうだからね・・・」

「そっか、えっと・・・趣味はスイーツ巡りとー・・・映画鑑賞かな?」

「太りそう・・・」

「大丈夫!まだ影響は出てない!」


一番右にいた、このメンバーで一番元気そうな人が自己紹介を始める。

あれ?橘・・・彩奈・・・?どこかで聞いたような・・・


「あっ、じゃあ次は私が・・・えっと、№2、市谷いちたに 結花ゆうかです。由依ちゃんは中学校では演劇部だって、もう聞いた?私も演劇部だったんだよ」


その隣の大人しめな配色の晴着を着た人が話し始める。市谷、結花・・・やっぱり聞き覚えがある。



「№3、行っていいか?俺は八重橋 一馬、 中学の頃は、えーっと・・・」

「あっ・・・!  卒業アルバム・・・」


思い出した。 卒業アルバムの寄せ書きに書いてあった名前だ。

「八重橋・・・一馬さん・・・たしか・・・」


私の、初恋だった人。

私から、何かの返事を待ってる人。


「私の・・・初恋の人・・・だったよね・・・?」


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