第10話:決意と別れ
「私の。初恋の人・・・だったよね・・・?」
八重橋 一馬。
卒業アルバムに挟まっていた写真に、ハートマーク付きで装飾されていた、初恋の文字。
恋人だった人が記憶喪失で自分を覚えていないっていうのは、どんな気持ちなんだろう・・・
「あー、卒業アルバムかー、ってことはあれ、見られちゃってんだなぁ・・・なんか恥ずかしいな・・・」
でもそんな事、彼から直接聞くなんてできないよね。
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「へー、これから高校生になるんだ。確かに、経歴的には中学を卒業したばかりだもんね」
「外見も高校生のまんまだし、案外すぐ馴染めるんじゃないかな?」
自己紹介が終わった後は、私が今、高校受験に向けて勉強しているという話になった。
「でもさ、そんなにいろいろ事情があるんなら、夜間学校とかでも良かったんじゃないの?通常の教育課程だと体力的に無理があったりしない?」
「実はね、その志望校、妹も同じタイミングで志望してるの。それで、一緒に合格したらいろいろサポートしてくれるって」
「妹さん?確か、鈴さんでしたっけ?」
「あー、5歳下だったもんね」
「鈴ちゃん由依にべったりだったしね」
「って事は、何がなんでも今年合格しなきゃね」
「うん。今必死に勉強してるよ」
そんな話をしていると、急に橘さんが前に入り込んできた。
「高校生を体験してきた私たちが教えてあげよう!高校生は楽しい!青春は最高だよ」
「だから、高校生になったら、私達の事を気にせず、思いっきり青春を楽しんでくるといいよ、それこそ、私達の事なんか忘れちゃうくらいにね」
「えっ、それは流石に悪いよ・・・」
「いやいやいやいや、私達の事を気にかけて高校生ライフ謳歌しきれなかったって方が私たちが気まずいからさ、沢山友達作って、沢山恋して、沢山楽しんでくれないと」
「私達はそれを謳歌してきましたからね。由依さんも楽しまなければ、それこそ不平等です」
「ま、そうゆうことだ。初恋とか気にせず楽しんでこいよ」
「皆・・・」
私達は気にせず、楽しんでこいと
かつての友達は、皆口々にそう言ってくれた。
私の心配は、杞憂だったのかもしれない。それどころか、私を後押しするような、勇気をくれる言葉を送ってくれた。
「そうだ由依。中学の卒業アルバム、見たんだよな?」
ふと、八重橋さんが言う。
「うん、たしか、返事がどうとかって・・・」
「ああ、どうせだから、今日、それに決着をつけちまおうって思ってる」
「・・・・・・」
「あれな、「高校は遠くに行っちゃうけど、まだ恋人で居てくれないか?」って奴だったんだ。本当はあの次の週に予定してた打ち上げ会で結果を聞く予定だったんだけどな。俺は今でも由依の事が好きだけどさ、」
「今日・・・・・・それを断ってくれ」
それは、今までとは違う、真剣な声だった。
「由依が、高校生ライフを送るときに、しがらみがあっちゃ困るだろ?だから、関係を整理しこうと思ったんだ」
「でも・・・」
「さっきも橘が言ってたけど、俺たちはもう、充実した高校生ライフを送ってきたんだ。もちろん、恋愛面でもな」
「浮気?」
いきなり橘さんが参戦してきた。
「違うって!今真剣な話してんの!茶化さないでくれよ・・・」
「ゴメンゴメン、カズがシリアスな話してんの耐えられなくて・・・」
「橘は俺をどんな目で見てたんだ・・・まぁいいや、話を戻すけど、つまり、俺は、由依が寝てる間、普通に楽しんで、恋して、遊んでたんだ。だから、次は由依が普通に楽しんで、恋して、遊ぶ番じゃん?俺たち過去に囚われないでさ」
次は、私が楽しむ番・・・確かに、私は何か決意しようとした時、いつも私がやり残した過去が引っ掛かってたかもしれない。
私は、過去の私に無理に重ね合わせようとし過ぎていたのかもしれない。
「まぁ、高校三年間で彼氏が一人も出来なければ戻ってこいよ。それまで待ってるからさ」
「うわキモ」
「だーかーらー!」
「ふふっ」
思わず笑みが溢れた。作り笑いでも社交辞令でもない、無意識に出た笑顔だった。
目覚めてから、こんなに明るい気分になったのは、始めてかもしれない。
「だからさ、俺を、思いっきり振ってくれ」
「わかった」
「じゃあ、行くぞ? ・・・"これからも、恋人で居てくれないか?"」
「・・・ごめんなさい・・・・・・・・・ありがとう・・・・」
わたしの、初恋の人"だった"人




