第3話:恋愛ゴシップスクープ
あれから、評判が広まったのか、知名度が上がったのか、
私のお悩み相談は少しずつ軌道に乗り始めた。
同級生の女子だけではなく、
上級生や、男子生徒の相談も来るようになった。
毎度誰かの受け売りだったり拙いアドバイスのようなものしか出来なかったけれど、
逆に落ち込ませてしまったり、怒らせてしまったりは無く、失敗と言える失敗は特には無かった。
そんな時、相談者の中に、聞き覚えのある名前を見つけた。
「あ、新江さん」
それは、新聞部のゴシップ担当。新江 美弥先輩。
このお悩み相談を始める為に私の記事を書いた人でもある。
あの人も悩みはあるんだ・・・
常にハイテンションで、悩みなんて無さそうな人なのに。
数日後、
新江先輩と、屋上で待ち合わせしていた。
私はいつも先に来て、相談者を待たせないようにしてる。
だけど、今回は、10分前に来たのに、先に新江さんがいた。
日が傾いてきていて、季節の移りを感じる。
「あ、新江先輩」
「六依さん・・・」
「新江先輩が相談なんて、珍しいですね」
「やっぱそう見える?」
「そうですね・・・いつも明るくて、人に言えない悩みなんて無さそうでしたから」
「あははっ、まぁそうだよね。そう見えるよね!」
新江さんは今も朗らかな笑顔で笑っている。けど
「けど、手紙を出したって事は、何か悩みがあるんですよね」
「うん。あるよ」
「それはいったい・・・?」
「私ね、新藤センパイに、告白したいんだ」
「!!」
まさかの恋愛相談!!
新藤先輩って言うのは、同じ新聞部の部長、新藤 薫先輩の事だろう。
「でもさ、私ってこういうキャラでしょ?なんていうか、告白と素直に受け取ってもらえなさそうだし」
「で、でも、真剣に言えばきっと・・・」
「実はさ、今年の夏も、スクープを撮る為に、カモフラージュの彼氏役としてついて来て欲しいって言って、海に連れてった事もあるんだ」
「へぇ・・・」
そんな事してたんだ
「だから、今度も、「またスクープ撮るための彼氏役か?」ってなりそうで・・・」
「なるほど・・・前にやったことがあるなら、あり得そうですね・・・」
「でしょ?でもこのキャラ崩してまで本気で告って、振られたりしたら立ち直れないし」
聞いた事無いけど、このキャラって本性なのかな?作ってるのかな?
「だけど、センパイはあと半年で卒業・・・受験の事考えたらあと数ヶ月がリミット・・・」
これは・・・かなり本気の相談だ・・・
「というわけで!六依クン!何か・・・何か・・・ないかな・・・?」
やっぱりキャラ作ってたのかな。最後の方はいつもの面影が無い。
「えっと、新江先輩・・・先輩のいつものキャラって、作ってたんですか?」
気になって仕方ないので聞いてみた。
「うん・・・あれはなんとなくパパラッチ感を出すキャラ付けだよ・・・その期間が長すぎてそっちが本体になりかけてるけど」
やっぱりそうなんだ。・・・って事は、
「で、ですよ、新藤先輩とは、どっちのキャラで付き合いたいんですか?」
キャラを作ってるってことは、先輩は二種類の先輩が居るわけで、
告白したあと、先輩はどちらでいるつもりなんだろう。
「え?」
「もし告白が成功したら、どっちのキャラで付き合うんですか?」
「そっ・・・そうだね・・・それは・・・」
いつものキャラを忘れて、明らかに狼狽えている。
「好きな人に見せたい自分は、どっちですか?」
ちょっとこの言い方は言いすぎたかも知れない。
上から目線というか、なんというか、
恋愛経験の無い私が言うべき台詞では無かった。
「ああああ・・・えええと・・・」
だけど、衝撃を受けたのか何なのか、新江先輩は顔を真っ赤にして動揺している。
この先輩、結構ピュアなのでは・・・?
「新江先輩。いつものキャラ、もう原型も残ってないですよ」
「えっ」
「その調子だと、きっと新藤先輩と付き合ってるとき、いつものキャラ維持出来ないんじゃないですか?」
もうどうにでもなれという精神で、相手は先輩であるにも関わらず、鈴が朱音さんをからかう時みたいに、畳みかけていく。
「うっ・・・うん。仕事として向き合うなら余裕なんだけどねー。プライベートだと、崩れそうになって・・・で、スクープを言い訳に逃げる事もある・・・かも」
「じゃあ、一択ですね」
「うぅ・・・そっか・・・でもさ、ほら、本来のキャラで振られたら・・・私・・・」
「そういえば、新藤先輩には彼氏は居ないとかってわかってるんですか?」
「そこらへんは調査済よ!パパラッチ魂ってやつね!」
「それなら、もう当たって砕けるしかないんじゃないですか?」
「そうは思うんだけどね・・・振られた時のリスクを考えると動けなくてね・・・」
「そのまま告白しないでモヤモヤを残したまま来年度を迎える方が、私は嫌ですね」
「あぁー・・・そうだよね!・・・うぁぁぁあああ・・・」
「新江先輩にとって新藤先輩はどういう人ですか?ダメなら他が居る存在ですか?」
なんかこの人押していけばドンドン動いていきそうな雰囲気を感じる。
私と似てるかもしれない。
「・・・居ない・・・代わりなんて・・・」
「だったら、告白しないのと、振られるのは、結果は同じじゃないですか。理想の相手は手に入らない」
私は新江さんをしっかり見据えて、言い放つ。
「だったら、願いが叶う確率、0%と50%。どっちがいいですか?」
「その言い方は・・・ズルくない?」
「間違った事は、言ってないつもりです」
でも、物凄い言うのに勇気は使った。
「六依クン・・・キミ・・・説得上手いよね・・・」
「え?」
「だってそうだもん。新藤センパイは私にとってオンリーワン。見逃すのと、捕まえられないのは、どっちも同じ、成果ゼロ。そうなんだよ・・・」
新江先輩は手すりに寄りかかりながらつぶやく
「最初っから選択肢なんてなかったんだなぁ・・・」
と、急に弾かれるように手すりから離れて、
「うんありがと、覚悟できたよ」
「そう・・・ですか?」
「っていうかね、多分、最後のひと押しをして欲しいだけだったんだと思う」
「・・・」
「そういう意味では、六依クン。カンペキなアドバイスだったよ。サンキュー!」
いつのまにかいつものキャラに戻っていた新江先輩は、あはははは!と笑いながら屋上から去っていった。
・・・やっぱり、変な人だなぁ・・・




