ちょっとした問題
「俺ぁ小龍包っての一つと、そうさなぁ、さっぱりした香りのきつすぎない茶が良いな」
「はい畏まりました。少々お待ちください」
ぽんとボタンを押すとほかほかの小龍包が屋台の内側の棚に現れる。
お茶も、茶葉で頼まれるのとその場で淹れたものを頼まれる場合があるので、希望に沿った物をイメージしながらボタンをポンと押すとその通りの物が現れる。
傍から見れば不思議な光景なのだけど、誰もそれに突っ込まない。
我ながら便利なものだなぁと思います。
「はい、お待たせいたしました。小龍包とアラカナ茶です」
「ほいよ。うむ。この小龍包ってのもうまいしアラカナ茶?っていうのも美味いな。珈琲も良いが偶には茶も悪くない」
「ありがとうございます。次のお客様どうぞー」
私が接客している間、ネルは何をしているかというと。
「えー、小龍包の味見はいかがですかー。美味しいですよー、小龍包のコマ切れ一個お試しなので無料ですにゃー。ぜひ試してみてください」
という具合にお客の呼び込みに余念がない。
事実その試食をきっかけに私の方にお客が来るという事も多い。
ただ、一部の草食系獣人の方には匂いの時点でノーと言われてネルががっくりしてたりもしたけれど。
そういう人は巧い事小龍包の匂いをくぐりぬけて屋台の近くでお茶を出した時に匂いを嗅ぐと、これは、といってお茶を注文してくれるのだけど。
「お茶を頼みたい。太陽の光を浴びてオレンジのような匂いをさせる爽やかなのを一杯。気に入ったら茶葉もいただきたい」
「はい、承りました。……どうぞ!」
「ふむ……うん、良い味だ。茶葉もいただこうか」
「お買い上げありがとうございます!ええと、こちらお勧めの淹れ方を書いた紙もオマケになっております」
「ほう、それは助かるね。ありがとうお嬢さん」
「どういたしまして」
出てくる前は中欧は国家としてはちょっと斜陽なんて聞いてたけど。
この雑踏とお客の入りを見るとそんな感じは全くしない。
思うにあれはネルの思いすぎだったのかしら、と感じるくらいだ。
そんな感じで楽しく営業していたのだけど、その人達は急に現れた。
「お嬢ちゃん。あんた誰に断ってここで営業してるんだ」
「誰ってそれは……」
私が言いよどむとネルが後を継いでくれた。
「街役所に営業許可はでてるはずですにゃ。貴方たちがなにか関係でも?」
「役所は関係ねーんだよ。ドン・カバレロに無断で商売する奴を見逃すわけにはいかなくてなぁ」
にやにや笑いで嫌な人!
どうするの、ネル?
「カバレロだかハバネロだかしらにゃーけど、うちのご主人様には関係ない話ですよ?」
いったぁー!強烈な肉球びんた!掌底っていうんだっけ。
にやにや笑いの男の人はグルンと顔を九十度曲げるとそのままその場にどさっと倒れてしまった。
こ、殺してないよね?
「ご主人様ー、これからちょっと掃除に行くので小龍包一個食べたいです、にゃ」
はわわ、そんな笑顔でご褒美くださいみたいなのりで。
で、でも仕返しは怖いからやるなら徹底的にね?
「じゃあ、はい小龍包。気を付けてねネル」
「まっかせるにゃ。小龍包が冷める前に済ませるですよ」
ニッと不敵に笑うネルは、その。
格好良くてちょっと見惚れてしまいました。




