プロローグ
「いよいよ、私たちの旅も終盤ね」
私の隣にいた勇者が、そう言った。今は夜で、街に辿りついた私たちは五人パーティーだ。
この街は竜の王が棲む山に、距離的に最も近い。世界を滅ぼすと預言されている竜は、ここ百年のあいだは静かに眠っている、と言われていた。洞窟の奥に潜んでいて、実際のところはわからないのである。山には怪物がうじゃうじゃいて、鍛えぬいた私たちでさえ立ち入るのは難しい。
「気負うことはないさ。もう十分に、あたしたちは力量を上げてきただろ。別に、一気に竜を討伐するわけじゃないんだ。まずは洞窟までの進路を確保する。無理そうなら一旦、撤退する。それだけさ、難しいことじゃない」
少し後ろにいた戦士が、皆を安心させるように言う。彼女は私たちの中で最も大柄である。赤の鎧に身を包んでいるが、その下にある豊かな胸やお尻は実に素晴らしい。包容力という言葉は彼女にこそ相応しいのだと私は思っている。
「そうですね。すべては神さまの思し召しです。なにが起きても対応できるよう、皆で努めましょう」
戦士の隣で、僧侶がそう言って天を仰いだ。西洋風の僧衣に身を包んだ彼女は、体つきがスレンダーで戦士と好対照だ。女性の身体とは、ふくよかでも良いし、細身でも良いものである。みんな違って、みんな良い。私も女性だが、同性の身体が私は大好きなのだった。
「別に気負ってないし、私には信心もないから。ただベストを尽くすだけよ」
最後尾で、魔法使いの彼女がクールに言った。強大な魔力を持っているが、背丈は前世の単位で言えば一四〇センチ程度しかない。ローブの裾が地面に着きそうで、そんな彼女のことも私は深く愛していた。幼女じみた身体というのも、それはそれで素晴らしい。彼女はこちらの世界で飲酒ができる年齢なので、私が愛しても問題などはないのである。
「ほら、宿が見えたよ。早く休みましょう」
そんな無個性な言葉を発した、私の職業は野伏だ。西洋風の忍者、といえばイメージしやすいだろうか。前世の自衛隊にもレンジャー部隊というのがいた気がする。危険な状況での救助活動などが仕事なのかな。私も自衛隊には詳しくないけど。
私の仲間は、みんな一騎当千の強者である。勇者に戦士に僧侶に魔法使い。ゲームで使っていたときも今も、実に頼りになった。私は前世も今も、目立たないモブキャラに過ぎない。このゲーム世界のなかでは一応、女主人公ではあるけれど。成年向けゲームの主人公というのは、モブキャラ仕様なのがお約束なのである。
もう、おわかりだろう。私は転生者で、今いるのはタイトルを忘れてしまったが、エッチなゲームの世界なのであった。
「ようこそ、勇者さまのご一行ですね。本日、宿は貸し切りとなっております」
宿の主人が出迎えてくれる。勇者が私たちを代表して主人と話しているなか、私は宿の入り口近くにいた、花売りの少女の元へと行った。「お花は要りませんか」と言われて、私は四人の仲間に渡すための花を購入する。これは私への、仲間からの好感度を上げられるアイテムなのだった。
「ありがとうございました」
赤頭巾で顔を隠した、花売りの少女は、かろうじて見える口元に笑みを浮かべて去っていく。彼女はどの街にもいて、貴重な好感度アップのアイテムである花を売ってくれる。街によっては見つけにくいところへいるときもあって、すべての街で花を買うには根気がいるのであった。マニアな私じゃなければ見逃しちゃうだろうねぇ。
「なにしてるの、宿に入りましょうよ」
勇者が屋内から声をかけてくる。今、行くからと私は仲間の後へ続いた。




