表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

repeat

兄さんが俺の代わりに時間を捨てた。


ごめん、兄さん。


構わない。

俺を忘れてたって、それより、

兄さんが決断したすべてが嬉しいから。


どうか目覚めて。

俺はどんな兄さんだって構わないから。



心の中でずっと祈るように呟いていた。兄さんの寝顔を眺めながら、日が沈んでいくのを感じている。

兄さんが倒れてから一週間が経とうとしている。


「あら、夏月…」


俺が学生服のまま病室にいたので、驚いているみたい。今日はどうしても兄さんの顔が見たくて、学校サボってセンターに面会に来ていた。

どうせあの赤先のことだ。

母さんに報告してるだろう。


「あなたってホントにお兄ちゃんっこよね」


カバンからバスタオルなどを取り出して、棚に入れていく。


「俺、この前、兄さんが宇宙に行く時の話…センター長から聞いた」


母さんは驚いたのか、バスタオルを落としてしまう。

心底びっくりしたように目を見開くが、やがて少し納得したように目を細める。


「それ、驚いたでしょう…。

夏月には秘密にしてくれって、春雪が言うから」


ごめんね、と消えそうな声で呟く母さん。その顔は痛々しかった。

俺はたまらず首を横に振る。


「仕方ないよ。兄さんの気持ち、俺も分かる」


もし俺が兄さんなら、きっと同じ選択をしただろう。

弟に恩を売るために行ったわけじゃないし、変な罪悪感も持ってほしくないし。想像だけれど。


「あの時…母さんか父さんが行くってもめたのだけど、実験の範囲上どうしても私達じゃだめだって言われたの。

だからすごく哀しかったけど、春雪を止める方法も言葉も無かった…。

春雪はどうせ三年だって明るく笑ったけど……」


顔をうつむける母さん。

初めて実感した。

母さんも父さんも、ずっと兄さんへ罪悪感を感じていたことを。


改めて、兄さんを見る。

ただ眠っているだけに見えるのに、その瞳は固く閉じられたままだ。





それから、さらに二週間後。


「おー…夏月」



「今日、晴れてるか?」



「良かったぁ。

…約束通り、バレーしよーぜ」


春雪は、笑う。


「ああ……夕飯食ったらな」


俺も、笑う。


空には夕焼けが姿を潜め、夜空の青が広がりはじめる。

兄さんと眺めた空も、これからまた眺める空も、同じだけど少し違う。


それでも……


ここにいるのは、俺の兄さんだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ