repeat
兄さんが俺の代わりに時間を捨てた。
ごめん、兄さん。
構わない。
俺を忘れてたって、それより、
兄さんが決断したすべてが嬉しいから。
どうか目覚めて。
俺はどんな兄さんだって構わないから。
心の中でずっと祈るように呟いていた。兄さんの寝顔を眺めながら、日が沈んでいくのを感じている。
兄さんが倒れてから一週間が経とうとしている。
「あら、夏月…」
俺が学生服のまま病室にいたので、驚いているみたい。今日はどうしても兄さんの顔が見たくて、学校サボってセンターに面会に来ていた。
どうせあの赤先のことだ。
母さんに報告してるだろう。
「あなたってホントにお兄ちゃんっこよね」
カバンからバスタオルなどを取り出して、棚に入れていく。
「俺、この前、兄さんが宇宙に行く時の話…センター長から聞いた」
母さんは驚いたのか、バスタオルを落としてしまう。
心底びっくりしたように目を見開くが、やがて少し納得したように目を細める。
「それ、驚いたでしょう…。
夏月には秘密にしてくれって、春雪が言うから」
ごめんね、と消えそうな声で呟く母さん。その顔は痛々しかった。
俺はたまらず首を横に振る。
「仕方ないよ。兄さんの気持ち、俺も分かる」
もし俺が兄さんなら、きっと同じ選択をしただろう。
弟に恩を売るために行ったわけじゃないし、変な罪悪感も持ってほしくないし。想像だけれど。
「あの時…母さんか父さんが行くってもめたのだけど、実験の範囲上どうしても私達じゃだめだって言われたの。
だからすごく哀しかったけど、春雪を止める方法も言葉も無かった…。
春雪はどうせ三年だって明るく笑ったけど……」
顔をうつむける母さん。
初めて実感した。
母さんも父さんも、ずっと兄さんへ罪悪感を感じていたことを。
改めて、兄さんを見る。
ただ眠っているだけに見えるのに、その瞳は固く閉じられたままだ。
それから、さらに二週間後。
「おー…夏月」
「今日、晴れてるか?」
「良かったぁ。
…約束通り、バレーしよーぜ」
春雪は、笑う。
「ああ……夕飯食ったらな」
俺も、笑う。
空には夕焼けが姿を潜め、夜空の青が広がりはじめる。
兄さんと眺めた空も、これからまた眺める空も、同じだけど少し違う。
それでも……
ここにいるのは、俺の兄さんだ。




