第10回 花の終わった胡蝶蘭
【原文】
※胡蝶蘭の打ち捨てられたるに
寒そうに 蹲りたる胡蝶蘭
少しこなれし 店の装ひ
【現代語訳】
寒空の下、店の外の路上に花の終わった胡蝶蘭の鉢が無造作に置かれている。
きっと開店祝いに贈られたのだろう。
寒さが苦手な胡蝶蘭はこのまま枯れてしまうのだろうか。
お店のほうはといえば、どうやら少しずつ回りはじめているようだ。なんだか、人々の息遣いを感じられるようであるなあ。
【解説】
胡蝶蘭は開店祝いなどに贈られることが多い鉢植えの花だ。
花が終わった後の葉っぱだけになった鉢が、店舗の外の路上に並べられているのを見かけることがある。
花が無いので店に飾るのが相応しくないからか、または陽に当ててやろうという親切心ゆえなのか。
実は胡蝶蘭は直射日光が苦手で、レース越しの窓辺などに置くのが良いとされている。
さらに、暖かい環境が好きな植物なので、寒い季節に野外に置けば高確率で枯れてしまうだろう。
うまく世話をすれば翌年も咲かせることができるのだが、持ち主に知識がないのか、花に興味がないのか。胡蝶蘭には気の毒なことである。
それとは裏腹に、新装開店したてのおしゃれでピカピカだった店舗は、少しこなれた感じになっているのが見える。
店というのは生き物で、客や運営方法に合わせて少しずつ使い勝手の良いように変化していく。いい意味で、「使い込まれた」感じになって「新品ならではの無機質なおしゃれさ」というものが減衰していく。
もしかしたら、手書きの貼り紙が貼られているかもしれないし、少し汚れ始めているのかもしれない。
いずれにせよ、回り始めた店の脈動が聞こえてくるようである。
街角の風景を切り取った一首。




