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第9話 自然薯

 二つに割った丸太は更に斧で割って行く。オベリスクが面白がってどんどん割って行ったこともあり、すぐに薪は山積みになった。


 午前中に採った魚はビニール袋に入れてクーラーボックスに入れてあるが、クーラーボックスに入れてあった氷はもうかなり溶けてしまっている。多分今日一日で保冷能力は無くなってしまうだろう。


 腐らせては勿体ないので、転移前に用意してあった食材は、米やインスタントラーメンの様に保存が効くもの以外は今晩のうちに食べてしまった方が良さそうだ。


 そう思ったところで俺はハタと思いついた。


「オベリスクって氷魔法も使えるの?」


「もちろんだ。魔王の血族は全属性の魔法が使えるぞ。まぁお湯を沸かしたり丸太を切ったりするくらいの威力しかないのは、氷魔法も一緒だがな」


「じゃあ、この容器の中に氷を出してくれないか?」


 そう言って俺はクーラーボックスの蓋を開けてみせた。


「ああ、その宝箱のようなものは食材を冷やす為の物だったんだな。お安い御用だ」


 そう言ってオベリスクはまた何やら呪文を唱える。


「コオリ!!」


 そう叫ぶと、細かい大きさの氷が大量にクーラーボックスの中に落ちて来た。


「大きな塊でも出せるが、小さくした方が使い勝手がいいだろう。この体で魔力は少ないが、絶妙なコントロールが出来るのは余だからこそなのだ」


 そう言ってオベリスクは胸を張る。そのあたりの魔法の細かい話はよくは分からないが、確かに凄いとは思ったので、俺は大げさに驚いて見せた。しかしこれはあわてて食材を食べ尽くしてしまう必要も無そうだ。ただ晩飯が昼と一緒で焼き魚だけというのもどうにも味気ない。


 昼飯を食べて川で水浴びをして薪割をして……まだまだ夜は遠くて日は高い。明日のテント移動の準備はまた明日するとして、こと今晩に関しては薪も食材ももう心配はない。キャンプというのは暇な時間が大半だ。


「なぁオベリスク、自然薯を掘りに行こうか?」


 そう俺は提案した。自然薯というのはつまり野生の山芋だ。以前山に精通している人の話で、自分は仮に遭難したとしても絶対に餓死の心配はないというのがあった。


 何を食べるんだと聞かれた彼は『自然薯』と答えた。実は山の中には至る所に自然薯が生息しているのだ。ただ、人が頻繁に通るような場所は地元の人に掘られてしまっていることが多い。食料として役立つほどに成長するには年単位の時間も必要だ。


 更には似た形の葉をもつツタ類も多い。特にオニドコロというやつは毒をもっているので要注意だ。


 俺もたまには山登りなどもするのだが、この話を聞いてから自然薯の葉を見分ける練習を一時期していた。但し実際に掘ったことは無かった。


 ここまでのところで、どうやらこの世界の生物の生態系はかなり俺の世界のそれと近いことを実感していたので、自然薯もきっと生えているに違いないという、根拠のない確信を抱いていた。


 行こうかといった割に藪漕は疲れるので、結局また川までの道を往復することになる。自然薯はツタ類なだけあって、木に巻き付いたりして育っていることが多い。そうしてそれは。少し探しただけで面白いくらいにたくさん生えていた。


「で、この葉っぱの生えているツタを辿って地面を掘ると、その自然薯とやらが出てくるのか?」


 一本のツタを辿って地面を掘っている俺にオベリスクはそう聞いてきた。


「まぁこれは聞いた話なんだけどね」


 幸いにして小型ではあるが、スコップも持ってきていた。本来想定していた使い方はこれではない。あまり大きな声では言えないのだが、キャンプ場とは違って山の中で野営するときは当然トイレがない。ではどうするのかといえば地面に穴を掘るのだ。スコップはその為に持参しているといってもいい。


 地面を少し堀っただけで自然薯はすぐに顔を出した。もっと深く掘らないといけないと思っていたのに拍子抜けだった。しかしここからが過酷だった、掘っても掘ってもその先が続いているのだ。


 太さは見慣れた山芋ほどはなくて細い。となれば後は長さで勝負するしかない。ただ深い穴を掘るには穴全体を大きくする必要があるので、それはかなりの労力を要した。結局1mちょっとほったところでその先はあきらめることにした。オベリスクはへとへとになった俺を見ながら笑っている。


「今度は自分にも掘らせろとは言わないんだね」


「うむ。それは面倒くさそうだから遠慮しておく。その葉っぱのやつの地面から下の分を取り出せばいいんだろう?」


 そういうとオベリスクは周囲から自然薯のツタを一本探し出すと、また呪文を唱え始めた。するとツタの入り込んでいる地面が波打ったかと思えば、ツタは上に向かって動き始めた。


 すぐに自然薯部分は土から頭を出し、それはツタとともに更に上に向かって動いていく。そうして2mぐらい行ったところで、自然薯の地中での先端部までもが出てきた。


「土魔法で柔らかくして、浮遊魔法で上に引き上げてみた。これぐらいの重さならなんてことないぞ」


 果たして俺達は自然薯二本を手に入れた。俺の掘り出した方は1mにも満たなかったが、オベリスクが採ったものは倍近くあった。


※山に登った時は、自然薯を探してみる事もありますが、麓付近はあまり見かけません。多分地元の人に掘られてしまっているんでしょうね。自然薯は育つのに何年もかかります。滅多に人がはいらないようなところなら掘り放題なんでしょうね(私有地で掘ったらダメですよ)。

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