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クレイジーレズと呼ばれた少女、自分が戦闘あり乙女ゲーの大ボス悪役令嬢だと気付いたので開き直って今世で推しのサブキャラメイドを愛でる  作者: エスツー
第一章 覚醒編

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第21話 サプライズパーティーは相手側の都合を考えろですわ!

 △△(side:リリアーゼ)


「リリアーゼ!ロゼ!今すぐ起きなさい!!」


 アクアルお姉様の必死な怒号が飛ぶと同時にわたくしとロゼはテントをぶち破って外に出ましたわ。

 お姉様が叫ぶ以前に先程の地響きでとっくに目は覚めてましてよ?


 さて、わたくし達以外にこの第8階層まで辿り着ける者がいただけでも驚きですけれど、一体どんな低俗な輩が喧嘩を売って……



「は?」



 外に出たわたくしの目に映ったのは完全に想定外の……あまりにも馬鹿げた光景でしたわ。

 隣にいるロゼは可愛らしい小さい口を開けてポカンとしてますの。


 第9階層へと続く階段前に鎮座してるのは5mは優に超える水色の鱗に覆われた巨体に加えて鮫のように大きく裂けた品のない口にギザギザのきったない牙を剥き出しにした竜。


「【幻竜王げんりゅうおうシャーク・ドレイク】じゃねぇですの!?お姉様、これは一体どういう事ですのよ!?」


 まさかテントごとボスのいる第9階層に来ちゃったとかいうオチじゃないですわよね!?


「私だって分からないわよ!とにかく逃げ––––」

「GYAAAAAAAAA!!!」


 まだ話終わってないというのに幻竜王はその背に引っ付いた巨大な翼をはためかせると、真っ直ぐわたくし目掛けて突っ込んで来やがりましたわ!


「危ない!」


 咄嗟に横にいたロゼが声を上げてわたくしに抱きつくと、そのまま横に跳ぶ事で幻竜王の体当たりを回避しましたわ。


 ––––って、ロゼ!?

 何を無茶してやがりますのよ!

 あんなデカい図体の攻撃ぐらい、わたくしだって当然回避できてましたわ!


 ……庇ってくれたのはちょっとだけ嬉しかったですけれど。


「リリアーゼ、どうするの!?」


「もちろんここでぶっ倒しますわ」


 既に体当たりから退避していたお姉様からの問いに答えますわ。

 何でこいつがセーフティエリアに現れやがったのかは知りませんけれど、下の階に逃げたところで追いかけてくるのは目に見えてますの。


 ならば雑魚がいる下の階で戦うよりも、魔物が入ってこれない(目の前の例外は除く)セーフティエリアで倒した方が安全という物なのですわ。


「ロゼは待機!お姉様は足止め!アレはわたくしがぶち◯しますわ!」


「分かったわ!」「分かりました!」


 真っ当な作戦なんて立ててる暇はないし、今はこれが精一杯ですの。

 とりあえずロゼが死ななきゃ問題ないのですわ!


「グ……GYUOOOO!!」


 体当たりを躱されダンジョンの壁に突っ込んでからようやくこちらを振り向いた幻竜王はその巨大な腹をパンパンに膨らませてやがりましたわ。

 アレが何をしようとしてるかなんて一目瞭然ですの。


「お姉様」


「ちょっと待ちなさい……【氷壁(アイスウォール)】!」

「【黒羽(クロハネ)】」


 幻竜王の攻撃を受け止めるべく、目の前に分厚い紫色の氷の壁が現れましたわ。

 わたくしはその間に背に漆黒の翼を生やし、攻勢への準備を整えますの。


 幻竜王シャーク・ドレイクの属性は水属性。

 原作である『ふぉーみら』において同属性への攻撃は半減される事を加味すれば、ここは同じ水属性(闇混じり)であるお姉様に防御を担当させるのが最善手なのですわ。


「BAAAAAAAAAA!!!」


 そして無駄に裂けた品のないデカい口から放たれた超高圧の水流をお姉様の【氷壁(アイスウォール)】が受け止め––––ってなんか壁がビキビキ言ってヒビ割れてるじゃねぇですの!?


「お姉様!パワーが足りませんことよ!」


「うるさいわね!【二重氷壁アイスウォール・ダブル】!」


 一つ目の壁が砕かれる直前、間一髪で二つ目の氷の壁が張られた事で何とか難を逃れられましたわ。

 わたくし一人だけなら余裕で逃げられますけれど、それじゃあロゼが巻き込まれてしまいますものね。



 さて、ロゼの安全も確保できた事ですし、幻竜王がお姉様の出した壁の破壊に夢中になってる間にケリをつけますわ。

 わたくしは背に生えた翼をはためかせる事で氷の壁から真上に飛び出し、一気に幻竜王の下へと距離を詰めますの。


 そしてそのままぶっさいくな顔面に拳を––––


「GYAUッ!!」

「……っ!?あぶねーですわね!」


 拳を叩き込もうとしたわたくしに対して幻竜王は生意気にも反応すると吐いていた水流を中断し、わたくしの完璧で美しいボディをその牙で喰いちぎろうとしてきやがりましたわ。


 原作ゲームならこんな小ボスより大ボスであるわたくしの方が当然HPも多いのですけれど、残念ながらここは現実。

 あんな巨大で不潔できったない不衛生な牙で噛み砕かれたら普通に死ぬので避けるしかありませんの。

 不覚にもわたくしが一瞬だけ尻込みしたその時––––


「えいっ!!」


 バスンッ!!!


「GYAAAAAAAッ!!?」


 可愛らしい掛け声と共に何かが飛んできて幻竜王の左目にブッ刺さりましたわ!

 よく見ればそれはミスリル製の短剣であり、後ろを振り返るとロゼが遠投した直後の姿勢になってましたの。


 急速なレベルアップによる身体能力上昇に加えて対内魔法を駆使したあの凄まじい膂力。

 元からやるつもりはなかったとはいえ、もう力尽くで彼女を百合乱暴(控えめな表現)したりはできませんわね……。


 とはいえ、これはチャンスですわ!


「【黒閃(コクセン)】!」


 わたくしは黒色の風を収束させて鋭い刃を創り上げると、それを悶え苦しんでいる幻竜王の首に向けて放ちましたわ。

 もちろん1発だけではなく、何発も連続で放ち続けますの。


 これはターン制RPGではなくってよ?

 反撃がないならずっとわたくしのターンですわ!!


「これでトドメですわ!」


 最後にわたくしは自分の脚に【黒閃(コクセン)】を纏わせると、そのまま千切れかかった首に回し蹴りを叩き込んでやりましたわ。


 すると幻竜王のぶっとい首が跳ね飛び、ズン、と大きな音を立てて転がりましたの。

 そこから数秒経って残った身体がまるで今自分が死んだ事に気付いたかのようにして横倒れになりましたわ。


 次に起きたのはレベルアップによる鈍い胸の痛み、そして塵となって消え行く幻竜王の残骸。

 残ったのはドロップ品である魔石と幻竜王の牙、そして水属性魔法の威力を高める効果のある装飾品、アクア・アミュレット。


 ここにきてようやく残心を解く事ができますわ。

 これにて第9階層ボス戦終了ですの。



 ◇



「流石です!アーゼちゃんなら絶対勝ってくれるって信じてました!」


「ロゼ……」


 わたくしはにこやかな笑みを浮かべながら走り寄ってくるロゼを罵倒……ではなく叱るべきかどうか迷いましたわ。


 先程の幻竜王シャーク・ドレイクとの戦い、極論を言ってしまえばロゼは当然として、お姉様がいなくても少し時間さえかければ一人でも勝つ事ができたとわたくしは分析していますわ。

 にもかかわらず、この子は勝手にわたくしを庇い、比較的安全な状況下とはいえ指示もしていないのに幻竜王に対して投擲で攻撃した。


 自分の安全よりわたくしの身を案じて行動するなど、自ら死地に突っ込んでいくような物ですわ。

 それは分かってはいるのですけれど……。



 それ以上にこの子の心遣いを、この子の成長を嬉しく思ってしまう自分がいるのも事実ですの。



 思えばここに来てからアクアルお姉様はロゼが気を利かせた行動を取ったり、戦闘で活躍したら彼女の事を毎回褒めてましたわね。

 これは別にわたくしからロゼを奪おうとしてるとかそういう事ではなく、相手がいい事をしたら褒めるというのがお姉様にとってはごくごく当たり前の行為なのでしょう。


 だけどわたくしはロゼを褒めたりする事もせず、むしろマウントをとって彼女を自分の支配下に置く事ばかり考えていた。

 これじゃ、好きな相手から嫌われるのも当然ですわ。



 ……今からでも挽回できるのかしら?



「ロゼ」



 わたくしがロゼに声を掛けようとして。


 目の前の彼女の表情が驚愕に歪み、わたくしの後ろを指さして何かを叫んでいるのが見えましたわ。


 一体、何を––––



 ––––ブスッ



 ……え?



 ––––唐突に背中に強烈な痛みを感じて。



 わたくしの身体はそのまま地面に倒れ込み、意識が薄れていくのを感じましたわ。





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 原作ゲームでリリアーゼのHPが高いのは現実に照らし合わせると、たぶん速すぎて攻撃が当たらないとかそんな感じだと思います。


 ここまで読んで頂きありがとうございました。

 もし宜しければブックマーク、評価、レビュー、ご感想、リアクション等をして頂けると作者のやる気が爆上がりしますので、少しでも面白い、続きが読みたいと思った方は宜しくお願い致します。

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