6.サイレント・アコード
「パーティに入れてください!!」
緊張していたせいか、声の大きさとトーンを間違えた気がする。
勧誘をしていた青年と目が合う。
一瞬だけ間が空き、それからようやく彼はこちらへ声を返した。
「あっ はい、大丈夫ですよ。 えっと~……これで6人揃いましたね!」
彼は周囲を見回して人数を数えると、ほっとしたように笑った。
気付けば周りに俺と同じように駆け寄ってきた人が集まっていた。
それを見て駆け寄るのをやめた人達が何人もいた。
自分の後ろからも足を止め、去っていく足音がする。
(よかったー、ちょっとでも遅かったら埋まってたな……)
「では、あなたからパーティに誘いますね!」
彼は、自分と同い年くらいの、身長がやや低いイケメンに近寄りウィンドウを操作する。
次に爽やかでフレンドリーな青年に話しかける。
次は高校生くらいの女の子だった。黒髪ロングで整った顔をしていた。
その次は、太った男の子、身長は高いが顔立ちからまだ高校生くらいだと思う。
最後に俺の所へ来た。
「じゃぁ、パーティに誘いますね~」
「ああ...はい……」
彼がウィンドウを操作する間、数秒の沈黙が流れた。
俺は、目の前に表示された[承認]ボタンを無言で押した。
彼は一瞬だけ俺の目を見たあと、すぐに振り返って皆へ指示を出し始めた。
(みんなとは一言ずつ会話してたし、あの爽やかな奴とはかなり話してたよな……俺が嫌そうな顔でもしていたのだろうか、ファーストコミュニケーションは失敗だな..)
落ち着いた所で話がしたいとのことで、全員で正門前の壁際まで来た。
「それじゃぁ 一人ずつ自己紹介でもしましょうか!」
(え、さっそくタメ口?、俺まだその工程踏んでないんだけど……)
「俺の名前は高槻 颯!キャラ名も[ハヤテ]だから、みんなもハヤテって呼んでね、じゃぁ~次はレンが自己紹介して」
指名された背の高いイケメンが気まずそうな顔をしながら口を開く。
「・・御影 漣...です、プレイヤー名は漣牙ですけど、呼び方は[レン]でお願いします。・・」
……
「はいっ、じゃぁ次はコウキの番な、」
ハヤテが笑顔を向ける先には爽やかな青年が待ってましたと言わんばかりに一歩前に出ようとする。
しかし、彼を遮るかのように女の子が発言してくる。
「ちょっと待ってください、こんな状況とはいえ、本名を言うのはちょっとネットリテラシーに欠けていませんか?」
女の子の指摘に、爽やかな青年は少しも気にした様子なく笑った。
「俺は全然平気だよ! 別にバレたって問題ないっしょ!、一緒に戦う仲間なんだから本名くらい、まぁ本名がバレたくないって気持ちもわかるけどさっ」
「たしかにそうだよね、強制はしないから言いたくなかったら言わなくてもいいよ。俺はハヤテって呼ばれたいから教えただけだし、そもそもプレイヤーネームだからね。」
「そう...ですよね...わかりました...」
「まぁ~あんまり重く考えないでっ、ちなみに俺の名前は佐久間 光希!プレイヤーネームは[サクMAX]だけど、呼ぶ時は下の名前でいいから! てか今思ったんだけど、このゲーム……頭の上に名前が表示されないからプレイヤーネーム教えても意味なくない? 仲間のHPバーも見えないし、普通パーティーメンバーの名前くらい表示するよな」
コウキの指摘にハヤテが反応する。
「言われてみればそうだね、自分のHPバーも見えないし、流石に戦闘に入ると表示されるとかじゃないかな?」
コウキは自分の頭上を指さしたあと、呆れたように肩をすくめる。
「ミニマップもねーし、時間もわかんねーし、クソゲーだよな~こんなの」
「ちょっとコウキ、ストップしようよ、今は自己紹介の時間だから……えっと~ 話が脱線しちゃったね、次は君が自己紹介してくれないかな?」
指名された女の子は、胸の前で手を小さく握りながら答えた。
「あっ はい!……ゆうな...です...えっと、プレイヤー名は[猫又]です、私も、ゆうなって読んでください。」
「ありがとう ユウナさん、よろしくねっ! じゃぁ、次は君の番かなっ!」
「え~っと……味玉うどんです。 あっ...え~~~っと、本名は[シュウヘイ]です...はい...」
「ありがとう、 え~っと……じゃぁ 最後、お願いします!」
(このハヤテってやつ……俺の番で敬語に戻っているし……最初の二人にはやけに距離が近かったくせに、シュウヘイと俺にはまったく興味を持ってないんだろうな。)
「白坂 煌です……キャラ名もカタカナで[アキラ]です...よろしくお願いします。」
「はいっ! じゃぁ自己紹介も済んだところで、早速今後について作戦会議をしよう!」
(こいつ!とうとう[ありがとう]も[よろしく]も言わなくなった・・・)
「と言っても、さっきのセレモニーを聞く限りだと、魔法もスキルも無いって言っていたね」
「弓と盾も無いとなると、相当選択肢が狭くなってくるね...みんなは、どの武器が使いたいとかあるかな?」
「はい はい!俺、刀やりたい!前衛でガンガン火力出す役がいい!」
「僕は槍とかかな、命がかかってるから 間合いは取りたいし、弓がない以上なるべくリーチのある武器がいいかな」
「2人ともいいね! じゃぁ俺は双剣でもやろうかな、他のゲームでもよく使ってたし、まぁ体を動かすのは初めてだけどw」
完全に3人だけで会話が回っていた。
しばらくの間、俺達は蚊帳の外だった。
(まずい、このまま会話に入れないと、どんどんアイツラとの溝が深まるぞ……もうアイツらだけで狩りに行きかねない...)
「そっちの3人はどうかな?」
ようやくハヤテがこちらに話題を振ってくれた。
「武器って、どんなのがあるんですか? 私、ログインしてすぐセレモニーを見てたので何もわかんなくて……」
ユウナの問いかけにハヤテが記憶を辿るように視線を上げる。
「事前情報だと、片手剣・短剣・双剣・両手剣・刀・槍・弓に魔法の杖だったかな?」
「…なるほど、いろいろあるんですね、弓と魔法が使えないとなると、私も槍にしようかな……」
(よし……ここなら会話に入れる)
「俺が練習場へ行った時に確認した限りだと、後は、レイピア・棍・斧・片手ハンマー・鎌・鉤爪・ナックルなんかがありましたよ!」
「へぇー!練習場なんてあったんですね!知らなかった~使ってみた感触はどうでした?」
ようやくハヤテが俺にも興味を示してくれた気がした。
「・・・え~っと、全部触ったわけじゃないんだけど、近接だと無難に片手剣か双剣がいいと思ったけど、個人的には槍か鎌がいいかな…練習場で実際にモンスターと戦えたけど、やっぱりリーチの長い武器で間合いを取りながら戦う方がいいかな、動きの速いモンスター相手だと、両手剣やハンマーは攻撃が当たらない上にすぐにダメージを受ける危険性があります」
「おっ! じゃぁ俺とレンの見立ては合ってたってことか!」
「・・僕の場合はだいぶ後ろ向きな理由でしたけど、やはり槍は正解だったんですね・・」
「じゃぁ 私も槍にしようかな、モンスターに近付くの怖いし、」
レンがこちらへ顔を向ける。
「・・ところでアキラさんは何の武器を使う予定ですか?・・」
「俺も、槍を使おうと思ってたけど、ゆうなさんやレンさんが使うなら鎌とかにしようかな、ドロップ品の取り合いにならないし、鎌って他のゲームだとあまり見かけないからやりたいとは思ってたし。」
「たしかに、このゲームで入手できる宝箱や武器は有限って言ってましたからね、ドロップする武器のうち槍の出る確率がどれくらいかも見当がつきませんね。なるべくみんなで得意な武器種は分けて、第二候補くらいまでは考えておきましょうか。」
ユウナが遠慮がちにレンの方を見た。
「…それなら、槍は優先的にレンさんに渡して下さい。私は...余り物でも大丈夫です。」
「わかった、強さが同じくらいの槍が複数手に入ったらユウナさんに譲るよ!」
「・・このゲームのダメージ計算がどうなるかわからないけど、より安全になるのなら1ランク下の武器でも良い気がします...なので、お下がりにはなってしまうのですが、新しい槍が手に入る度に僕が使っていた槍はユウナさんにお譲りします。」
「はい!...それで大丈夫です!...」
「そうだね!必ずしも自分がほしい武器種が手に入るとは限らないから、優先順位は決めても良いと思うけど、全員がどの武器でも戦闘できるように練習する必要があるかもね。」
「よし! これで全員決定かな!」
(マジかこいつ……素でシュウヘイのこと忘れてやがる…)
視界には映らないが気まずそうな顔でキョロキョロしていることは確信できる。
シュウヘイのあまりの挙動不審ぶりと、周囲の空気を見てハヤテもようやく察したらしい。
「あっ! ごめん、ごめん、 えっと~ シュウヘイ君...だっけ? 君はどんな武器が使いたいのかな?」
「・・・えっと、 じゃ..じゃぁ...両手剣...やります。」
「大丈夫かい?アキラさんの話だと、重い武器は不利になりそうだけど」
「……えと、どっちにしろ、僕は早く動けないので、みんなと被らない武器でリーチが長くて使いやすそうな武器は両手剣かなって」
「あ~なるほど、 たしかにそれはアリかもね、手数よりも攻撃を受けること前提で一発やり返す的な?」
(どうでもいいから話を先に進めたくて適当に共感してるな……)
ふと、レンが何かに気付いたように顔を上げる。
「・・あれ、今思ったんですけど、このゲーム、回復は…?・・」
「魔法が無いとなると、ポーションだけになるのかな? アキラさんは何か知ってる?」
「え、すみません、そこまでは……」
コウキが退屈そうに頭の後ろで手を組む。
「まぁ、ここで話し合ってても解決しないし、ひとまず武器を買いに行こうぜ、俺ら初期装備は片手剣しか持ってなさそうだし」
「そうだね!所持金も2000ゴールドあるし、初期武器の中で各々の武器くらいは買えるんじゃないかな?」
「なら!さっそく市場にでも行こうぜ!」
すぐに歩き出そうとしたコウキを、ハヤテが片手で制した。
「待った、その前に練習場へ行ってみないか?自分にその武器がほんとに合っているのか確かめたいし、アキラさんがモンスターと戦ったって言ってたから、多分だけど安全に練習できるんじゃないかな?」
「あーね! まぁ町中で死ぬわけもないと思うからやってみるか、万が一死んでも教会は近い!」
そうして俺達は、揃って練習場へ向かうことになった。
小説を書くのは今回が初めてで、手探りで進めています。
読みにくい点や気になる部分などありましたら、教えていただけるととても助かります。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
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