0.プロローグ
俺は、目の前に立つ筋骨隆々な男を真っ直ぐ見据えた。
彼はもっともな疑問を俺に問いかける。
「第2世界の転移ポータルを起動するなだ? お前……自分が何を言っているのか分かってるのか?」
「……わかってる」
「『今この瞬間にも誰かが命を落としている、だから、すぐにでも転移ポータルを起動するべきだ』、そう言ったのはお前だろ?」
「……事情が変わったんだ」
男は舌打ち混じりに鼻を鳴らす。
「フンッ……俺はそれでも構わねぇよ、
だが、この件が露見したら、俺は“お前の指示だった”って正直に話すつもりだ。
そうなったらお前は全プレイヤーから恨まれることになるぞ?」
「……それでも…構わない」
男はしばらく俺を睨みつけていたが、やがて深く息を吐いた。
「ハァ~~……ったく、 何かあったみたいだな…話してみろよ」
「……」
俺はゆっくりと息を吸い込む。
そして――彼と別れてからの一週間を、静かに語り始めた。
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人間の脳とコンピューターを繋ぐことに成功してから苦節10年、ようやくフルダイブ型VRが一般流通するようになった。
視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚
五感全てを再現したフルダイブ型VR機器『オムニセンサリアライザー』が販売され、
同年、VRMMORPG『レジェンドオブミスティカ』のサービスが開始された。
――物語は、発売が決定したリリース日の3ヶ月前に遡る――
将来はゲーム開発に携わりたいと考えていた 白坂 煌は、県内にあるコンピュータ系の専門学校に通っている。
昔から人付き合いが苦手だった白坂は、中学・高校ではクラスに馴染めず、どこか周囲と距離を置いて生きてきた。
しかし、専門学校で出会った仲間達は特別な存在だった。
ゲーム制作という同じ夢を追いかけるうちに自然と集まり、
放課後はくだらない話で笑い合い、時には互いの作品を本気で批評し合う。
白坂は、この場所で初めて“友達と過ごす青春”を知った。
入学から1年後、待望のVRMMOが発売されるとのことでクラス内は大いに盛り上がっていた。
授業中に先生が教室を歩き回りながら生徒のパソコンを眺めていた。
「お~い、白坂~授業中にVtuberの動画を見るのはやめろ~」
「ちゃんと作業もしてますよ、 てか、ふなっし~だって見てるじゃないですか?」
「ぇっ?……」
後ろの席の八重樫がそっと近付いて俺の耳元で話してきた。
「ふなっし~は、もう大手に就職が決まってるからな、あまり強いことは言えないんだろ」
「だろうなぁ、俺達も就職頑張らなきゃなのに、マジ...なんでこの年にレジェンドオブミスティカがリリースされちゃうかな~、絶対 就活と両立できないって...」
「ほんまそれな...早く出てくれるのは嬉しいけど...あと1年か2年は待って欲しかった」
「ふなっ……船橋君も、ちゃんと授業に集中しなさい..?」
船橋は、先生が背後に立ってもなお、堂々とYouTubeを開いてダラけていた。
「だって先生、もうそろそろレジェンドオブミスティカのライブ配信が始まりますよ?」
「え、もうそんな時間!?、まずい..まずい、授業なんてやってる場合じゃなかったわ」
「それ先生が言っちゃダメなセリフですよ(笑)」
「いいの! じゃぁ今日だけ特別に皆でライブ配信でも見るか! 絶対他の先生に言うなよ?」
教室中に笑顔が溢れる中、先生が画面共有で中央モニターにライブ配信を映し出した。
(知らんぞ急に他の先生が教室に入ってきても……)
そして発売の告知がされるであろう開発会社のライブ配信が始まり、授業を止めてまで全員が魅入っていた。
「皆さんこんにちは、『アルカディア インタラクティブ 』の風間です。今回は皆さんに重大なお知らせがあります。まずは、こちらの映像を御覧ください。」
社長の挨拶のあとにPV映像が流れ始めた。
そこには広大なオープンワールドの世界と、幻想的で吸い込まれるような風景が映し出された。
まるでイラストから飛び出したような色鮮やかな景色。
剣を携え、中世の街を走り抜けていく主人公、その圧倒的なグラフィックで映し出される映像は、まるで実写と疑ってしまうほどの出来だった。
フルダイブ技術で実現した自分の体を動かして戦う自由な操作性。
16種類の武器と20種類の職業からなるビルドの幅広さ。
釣りやハウジングなどの生活系コンテンツの充実さ。
奇を衒っていない王道の中世ファンタジー。
俺が求めているものが全て詰まっているようだった。
映像が終わり、また社長が話し始める。
そして発売日が公開された瞬間、歓喜が教室に響き渡った。
一番大声で喜んでいたのは、先生だった。
小説を書くのは今回が初めてで、手探りで進めています。
読みにくい点や気になる部分などありましたら、教えていただけるととても助かります。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
引き続きお付き合いいただければ幸いです。
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