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頼むから俺を巻き込むな!  作者: クロ
ケース1
9/9

妹頼りの俺

みんなと別れて家へと向かう俺…とひな。


「本当にうちに来るのか?」


「えー?ダメなの?」


「ダメじゃないけど…」


確かに俺が誘ったんだけど今になって怖くなったなんて言えない。

…主に妹が。


「アッキーの妹ってどんな子なの?」


「なんだよ急に」


「アッキーと同じような妹だったら嫌だなーっておもって」


笑ってそう言うひな。


「喧嘩売ってんのかおい」


「え?ああ、違うよ!なんていうか…同じ性格とかだったらなんか嫌だなって…」


「結局喧嘩売ってんじゃねぇか」


まったく心外な。俺の性格がそんなに気に入らないのか。


「…ま、そんなに気にすることはないと思うぞ?性格は全然違うし。どんな子って言われると説明しづらいんだけどな」


「そうなんだ」


それきり会話が途切れる。

少し歩いてスーパーの前を通り過ぎるところで俺のスマホからメールを知らせる着信音が鳴る。

ーーピロリン


「ん?噂をすれば…」


『今日の夕飯はお兄ちゃんの好きでもなんでもないお鍋だよー! 白菜買ってくるの忘れたから買ってきてね? 買ってこなかったらお兄ちゃんの夕飯はカップラーメンだよ』


……妹よ、お前はエスパーか。

思わず立ち止まりスーパーを見上げる。


「どうしたの?」


突然立ち止まった俺を気にして止まるひな。

俺は黙ってメールを見せる。


「すごいね妹さん…エスパーみたい!」


「俺もそうなんじゃないかって思ったわ。悪いけど、スーパー寄って行っていいか?」


「全然いいよー」


ひなの承諾を得てスーパーへと足を踏み入れる俺たち。

方やジャージ姿の男、もう片方は制服姿の女子高生。はたから見たらおかしい格好だと思う。


「白菜だから…野菜コーナーにあるから、あっちだな」


買い出しに慣れている俺はさっさと目当てのものを買いに行く。


「ってひな?どこ行くんだよ!」


…行こうとしたのだが、ひながお菓子売り場に直行していたのでついて行く羽目になる。


「アッキー、これ良くない?」


「マイペースにも程があんだろ…」


お菓子を指差すひなに頭を抱える俺。


「買ってやるからほら、行くぞ」


ひなの指差したお菓子をカゴに入れてひなの手を掴んで歩き出す。

じゃないとどこに行くかわかったもんじゃないからな。


「ありがと!」


そう言って笑うひなをみたら正直お菓子なんて買いたくないと思っていた気持ちなんかどこかへ行ってしまったような気がした。


ーーーーーーーーーーーー


スーパーで買い物をした後は特に何があるわけでもなく、互いの何が好きかとかそういった世間話をしている間に俺の家に着いた。


「わ、わ〜。ここがアッキーのお家かー」


「なんだよその反応」


思わずひなを見る俺。


「なんか想像してたのと違ってて…」


「ちなみにどんなのを想像してたんだ?」


「機械の家…みたいな?あとは要塞的な…」


そんなわけがないだろう。どんな高校生だそれは。


「勘違いし過ぎだろそれ…」


ため息をつきながら鍵を開けてドアを開ける。


とりあえず説明しておくが、俺の家は要塞でもなんでもない。普通の…ではないがまあただの一軒家だ。地下がある家なんて普通じゃないだろうからな。

見た目は少し大きめの家だが地下がバカみたいに広い。…まあ、使ったりはほとんどしないけど。


「まあ入れよ。ただいまー」


「お邪魔しまーす」


俺は玄関のすぐ横にかかっている来客用のスリッパを出す。

俺自身はスリッパは好きじゃないのでそのまま上がる。


「玄関にいるのもなんだからリビングに行っとけよ。俺はちょっと着替えてくるから」


「お母さんとかはいないの?」


「いないよ?妹は多分いるだろうけど…まあなんとかしてくれ」


見捨てるようになってすまない、ひな。だが俺は今妹に会うわけにはいかないんだ…!

…川遊びしてきたなんて言われたら洗濯がどうとかうるさいだけなんだけども。


とりあえず階段を上って自分の部屋に入ってさっさと着替えてリビングに入る。


すると入った瞬間、怒りのこもった視線をぶつけられる。もちろん妹だ。


「おかえり、お兄ちゃん」


「ただいま、白菜はちゃんと買ってきたろ?」


「そうだね、買ってきたね。でも…お客さんが来るんだったらなんで言ってくれないのかな?」


現在テレビを占領し買ってやったお菓子を食べつつゲームをしているひなを指差す。


お前くつろぎすぎだろ。仮にも他人の、しかも初対面の人もいるってのにどんな図太さだよ。


「ごめん、忘れてた」


「そうだと思ったよ…」


疲れた様子でソファに座りなおす雅。

肩でも揉んでやろうかね?気が向いたらだけど。


「それでひな、お前は何をしてるんだ?」


「え?ゲームだけど?」


「ああ、そうだな。俺のテレビで俺のゲームをやってるな。俺のデータで」


リビングには俺がゲームのために使う小型のテレビと普通に使うための大型のテレビがある。

テレビゲームをしていても雅が怒っていないのはそのためだ。


「いやぁ〜、アッキー全クリしてるっぽかったからさー…最初っからにしちゃった!」


「…は?」


お前…疫病神か?誰がこいつに常識を教えたんだ。


「お前は俺が必死になってクリアしたゲームを最初からにした…だと…?」


力を入れすぎて握った拳が白くなる。


「必死になってはいないよね。確か三日くらいで終わってたよね。しかもその後は難癖を付けてレビュー批判してたりしてたよね、お兄ちゃん」


お茶を飲みつつ俺をジトッと見つめる妹なんてもう知らない!!


俺が本当に怒ってると思っていたのかしおらしくなっていたひなはポカンとした顔になる。


「雅が言ってることは本当だよ。別に俺怒ってないから気にすんなよ」


笑ってからかったことを謝る。


それを見て状況を理解したひなは怒ったような顔になる。


「本当に怖かったよ…」


「そうか?ほほう、そんなに怖かったなら俺俳優クラスの才能を持って…」


「ないと思うよ、お兄ちゃん」


買ってきたお菓子を食べつつ横槍を入れてくる。なんだお前は兄が嫌いなのか。


「それじゃ、私はお鍋の用意しようと思うけど…瀬野さんはどうします?食べていきますか?」


突然の妹の誘いに驚くひな。

俺を恐る恐る見てくる。可愛いけど俺に聞くなよな。


「好きにしたらどうだ?家の人が良いっていうなら食べていけばいいし」


「…じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな!」


「そうですか。じゃあ、用意しますね」


にっこり笑ってキッチンに向かう雅。


「アッキーの妹さんって…モテるでしょ?」


「ごふっ!」


突然そんなこと言うから思わずお茶を吹き出してしまったじゃないか。


テーブルを拭いて答える。


「知らん」


「えー!そういうの話したりとかしないの?私は絶対モテると思うんだけどなー」


「基本俺はそういうのは関わらないからなぁ…あいつは俺に聞いてきたりするけど」


過去にある一回を除いて妹の恋愛事情に手出しなんてしたことがない。というのは今は話さなくてもいいだろう。


「アッキーはモテないんでしょ?」


「お前は失礼だな!!…まあ、彼女がいたことはないけどさ」


実際はサッカーばかりやっていたから彼女なんて作れなかったしいらないと思っていただけなんだけど。告白だってされたことあるし!!…断ったんだけど。


「そういうお前はどうなんだよ?」


「え、私?私も…そういうのはなかったかなー」


「お前だってモテそうなのにな」


スタイル…というより胸大きいし。ウエストだって普通に細い。顔だって少しばかり垂れ目だけど整ってるし。美少女といって差し支えないんじゃないだろうか。


そこまで考えたところで顔を真っ赤にしたひなに気づく。


「どうした?」


「あ、えと…その…こえにーー」


「ん?小さくて聞こえないからはっきり話してくれ」


「声に…その…」


俺は理解した。声に出ていたときっとそう言いたいのだ。


「ああ、悪かったな。考えたことが声に出るのは悪い癖なんだ」


どこが声に出ていてどこが出ていないのかはわからないがとりあえず謝っておけばいいだろうと思う。


「あ、うん…」


それきり黙ってしまうひな。

なんとなく居心地が悪くてかゆく感じる。


「お兄ちゃん、瀬野さんできたよーって何この雰囲気?」


ナイス妹!!お前は最高だ!


「なんでもないよ、手伝うよ」


「え?ありがと。じゃあお鍋持ってきて。私はコンロとか用意しちゃうから」


「わ、私も手伝います!」


「え、ええ?じ、じゃあテーブルを拭いてもらってもいいですか?」


「任せて!」


テキパキと手伝い始める俺らに首をひねる雅。

そうだよな、変に思うよな。けれど今は仕方がないんだ…。


「よっと」


キッチンに移動して鍋を運ぶ。

蓋がしてあるので中身はわからないがいい匂いがしている。

まあ妹に限って料理の失敗はないだろうし心配することは何もない。


準備が終わってそれぞれが席に座る。

俺と雅が隣で向かいにひなという席順だ。


蓋を開けるといい匂いが辺りに広がる。


「うわぁ〜美味しそう!!」


「ありがとうございます。お兄ちゃんもこれくらい喜んでくれると作りがいがあるんだけどね」


「俺だって喜んでるぞ」


美味いし。綺麗だし。

今回の鍋はキムチ鍋らしい。


「あれ、そういえばひなって辛いの平気なのか?」


「得意じゃないけど…大丈夫だよ?」


「そうだったんですか…すいません、もっと気を使ってれば…」


しゅんとする妹。


「私が急に来ちゃっただけなんだから気にしないで!」


「そうだぞ、こいつが悪いんだから気にすんな。俺はキムチ鍋好きだぞ」


睨むなよひな、便乗しただけじゃないか。


「次来るときはちゃんと知らせてください!そしたら辛いのとか作らないので…」


「そうするね?あ、敬語とかも使わなくていいよ?えっと…雅ちゃん、って呼んでいい?」


「はい、じゃなかった、うん!私も…ひなちゃんって呼んでいいかな?」


「いいよ!ところで家でのアッキーって…」


「それがね、お兄ちゃんたら…」


女は三人じゃなくても姦しいな。なんで話題が俺なんだ。俺がここにいるってのに。

…まあ、仲良くなれたならいいかな。


大人しく鍋をつついて今日も美味いと呟いて賑やかな夕食の時間は過ぎていった。



ーーーーーーーーーーー



「いっぱい食べたな」


やや苦しそうにソファに横になる雅とひなを見て笑う。

キムチ鍋だけでなく締めの雑炊もしっかりと平らげたから仕方ないのかもしれないが。


「美味しかったからねー。もう食べれないよ…うっ」


「ありがと、喜んでくれたなら嬉しいよ…うう」


二人とも辛そうにお腹をさする。


「お茶でも入れてくるよ」


「ありがと、アッキー…あたたた」


「お兄ちゃん私が…うっぷ」


「いいから休んでろって」


動こうとする雅を抑えてキッチンに移動してきゅうすにお茶の葉を入れてお湯を注ぐ。


「二人が仲良くなれて良かったなー…まあ、相性的にも悪くはないと思ってたから連れてきたんだけど…あれであの二人も家に来てたらこうなってなかったろうな…」


ずぶ濡れの二人を思い出して苦笑いする。

麗さんが来たら雅はどうするだろうか、多分気後れとかしそうだな。あの人美人だけど見た感じは厳しそうだし。


「ほらお茶飲めよ」


「………ふぅ〜、なかなか美味しいね、アッキー」


「ありがと、お兄ちゃん」


ひなは俺がどんな奴だと思っているのだろうか。料理だって俺はできるんだけど…言っても信じなさそうだな。


「さて、もう九時半だけど…そろそろ帰るか?」


「そうだねー…そろそろお暇させてもらおうかな」


「それじゃあお兄ちゃん、送っていってね?」


「了解」


「え、いいよそんな!」


「まあまあ、気にせず乗って行けよ」


「安全運転でお願いね、私は片付けとかしちゃうから」


うう、とお腹をさすりつつ食器を片付け始める雅。


「安全運転って…?」


訝しげな顔で見つめてくるひな。


「とりあえず帰る準備しとけよ。俺も準備してくるからさ」


「う、うん」


部屋に戻ってヘルメットとマフラーを持ってくる。


玄関に行くと既に準備を終えたひなが待っていた。


「ごめんね、ひなちゃん。今度来るときはメールでもラインでもいいから連絡してね!」


片付けが終わった(早っ!!)のか見送りをしている雅。


「うん、連絡するよ!それじゃ、またね!」


「いつでも来てね!」


「それじゃ、行こうか?」


「うん」


外に出て、駐車場の方へ行く。


「え、車なんて…未成年でしょ?ダメだよそんな…」


「んなわけないだろ。バイクだよ」


「運転できるの!?」


「まあな」


駐車場の扉を開けて壁際のボタンを押す。

ーーウィーン


「え?ええ!?」


突然動き出した駐車場の壁に驚いたのか狼狽するひな。

まあ確かに驚くよな。こんなどっかの秘密基地みたいになってたら。


「…やっぱり機械の家じゃん」


「失礼な」


バイクの安全点検をしてキーを入れエンジンをふかす。


「うん、平気そうだな」


まあメンテナンスは週一でしてるし月一で専門店にも行ってるから問題はないと思ってたけど。


「それじゃ、これ」


ヘルメットをひなに渡す。


「危ないかもしれないから念のためな。法は守っとかなきゃな」


「なにそれ…」


呆れ笑いつつもヘルメットをかぶるひな。

初めてなのかうまくかぶれなくて困っているのを見つめる。


「ちょっと!なんで助けてくれないの?」


「面白いから」


「そういうのいいから!助けてよ!」


「へいへい」


さっとかぶせて普通に止める。なんでこれくらいのことができないのか不思議でならない。


「寒くなるだろうからこれもしとけよ」


マフラーもついでに巻いてやる。


「あ、ありがとう」


「気にするなよ、ほら、そろそろ行くぞ」


バイクに跨って後ろに乗るように促す。


「しっかり掴まっとけよ?危ないからな」


「わかった」


腰に手が回ったことを確認してバイクを発進させる。

女の子の手は柔らかく、胸も…ってこれはダメだな。

苦笑いしつつ走ったその日の夜空は満天の星空だった。





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