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第46話 一網打尽

「うわあっ!? 何だこれは!」


 暗部の精鋭であれ、人である限りいきなり予想外のことが起きれば悲鳴のひとつもあげる。目的地まで戦闘をするつもりのなかった男たちは急速に伸びる蔓に足を取られ次々に宙へと吊り上げられていく。中には腰に下げていたナイフで蔓を切り裂こうとした者もいたが、魔法で強化された蔓にそんなものは通用するはずもなく、ほんの数分で全員が無力化された。


「思ったよりも無能な奴らだったようだな」


 俺とセシリアが現場に到着した時には襲撃者全員が吊り下げ状態になっていた。


「お前たちは一体!? これはなんだ!?」


 蔓に絡め取られた状態で襲撃者のリーダーが俺に向かって叫ぶ。動揺しているのは分かるが、暗部ならば基本的に声を上げるものではない。


「お前たちの依頼主は誰だ?」


 俺は喋るまでのんびりと付き合うつもりはなかったので単刀直入に問う。もちろん答えが返ってくるとは思っていない。だが、その問いに殺気を込めることで動揺を誘うつもりだった。


「……答えるつもりはないということだな。ならば仕方ない、少々手荒いことをするが我慢してくれよ?」


 俺はそう告げるとセシリアに魔法の準備を促した。


「どうやら、コイツらは口を割るつもりがないらしい。だが、どう見ても真っ当な者ではないようなのでここで始末をしようと思う。せっかくの機会だ、攻撃魔法で人を殺める経験をしておこうじゃないか」


「本当に良いのですか? 殺してしまえば情報源を絶つことにもなりますよ?」


「まあ、これだけ居るんだ。一人残せば問題ないだろう」


「そうですね。こんな怪しい人たちをここで逃がせばきっと領地にとって悪い影響を及ぼしそうですから。わたくしの経験値になってもらうのがせめてもの使い道でしょう」


 セシリアがそう告げて不敵に頬笑む。その本気の表情を見て襲撃者のリーダーの表情が一瞬にして驚愕へと変わる。


「なっ!?」


 実はこのやり取りはこの場に来る前にセシリアと予め打ち合わせをしていた内容で、セシリアの残虐性の高いセリフも全て演技だった。最初はうまく演じることが出来るか不安そうだったが、いざ本番となると目の前の襲撃者が大切な領地を奪いに来た者の仲間であると認識したことにより冷静に出来たようだ。


「ん? なんだ、依頼主のことを話す気になったのか? 残念だな」


「だ、だれが喋るものか」


「そうか。面倒だからコイツを狙ってみろよ。なに、こいつが死んだら別の奴に聞けばいいだけだ」


 相変わらず俺は殺気を出しながらセシリアに指示を出す。このあたりも予定どおりの展開だ。


「わかりました。では……火風弾(クロス・バレット)!」


 ゴウッ


 セシリアの放った魔法は襲撃者の男の鼻先をかすめて後ろに立っていた木へと直撃する。


 バキバキバキ


 魔法の直撃を受けた木は大きな音をたてながらズシンとその場に倒れていった。


「もっとうまく狙わないか。相変わらず威力は十分なのにコントロールがいまいちだな」


 本当はセシリアがわざと外したのだが、いかにもコントロール不足で失敗したかのように装う。木が豪快に倒れるほどの魔法威力に男は冷や汗が止まらないようで口をパクパクとさせたまま声も出ない様子だ。


「なかなか口が堅いな。その忠誠心には感心するが、残念ながらお前たちが誰の依頼でここに居るかはすでに判明している。ルドリアス子爵だろ? 今の情勢で刺客を差し向けるとしたら彼しか居ない。お前たちが罠にかかった時点で子爵の仕業だと断定できるんだよ」


「ち、違う! 我らはそんなお方から依頼は受けていない!」


「あくまでも白を切ると言うんだな。まあいい。ここには子爵本人はいないようだし、送り出したお前たちがいつまで経っても戻ってこなければ焦ってボロを出すだろう。面倒だから一人を残して他を始末しても良かったのだが、死体の処理が面倒だからお前たちの身柄はゼオン侯爵家に預けることにするよ。あいつは正義感の強い男だからな、俺よりも厳しい調べがあるだろうよ」


 正直言って口を割らないのは想定内なので俺は特に焦った様子も見せずに襲撃者にそう告げ、睡眠魔法を付与し眠らせて回収したのだった。


「――ここからは政治の問題だからゼオンに任せたほうが楽だ。恐らく刺客が戻らない状態でゼオンからの警告が届いた時点で子爵も観念するだろう」


「もし、抵抗したら?」


「その時は俺が乗り込んで捕縛をしてくるさ」


 俺が笑うとセシリアも安心したように微笑んだのだった。

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