特別編⑨ 「聖誕祭に重なる、五人のぬくもり」
冬の空気が、いちばん澄む頃。
街は完全にクリスマスに染まり、
どこを歩いても、光と音楽が重なっていた。
⸻
――12月24日 クリスマスイヴ
朝。
結翔、未来、莉嘉の三人は――
真希の実家にいた。
⸻
「今日は何する?」
未来が聞く。
⸻
「おえかき!」
莉嘉がすぐに答える。
⸻
結翔も頷く。
「手紙も書こうぜ」
⸻
三人はテーブルに座り、紙を広げる。
⸻
色鉛筆。
クレヨン。
⸻
「パパはここ」
「ママは隣」
⸻
五人の姿を描く。
手を繋いだ家族。
⸻
その横に、小さな文字で書く。
⸻
“ありがとう”
“だいすき”
“またいっしょにあそぼうね”
⸻
少しだけ不揃いな文字。
でも、それが一番まっすぐだった。
⸻
一方――
真希と悠真。
⸻
久しぶりに、二人きりの時間。
⸻
訪れたのは
TOHOシネマズ 渋谷
⸻
映画館の中。
少し暗く、静かな空間。
⸻
「こういうの、久しぶりだね」
真希が小さく言う。
⸻
悠真も頷く。
「ほんとにな」
⸻
上映が始まる。
⸻
恋愛映画。
⸻
舞台は高校。
ある女優が、撮影で訪れた学校。
⸻
過去。
彼女は、かつてその場所で――
傷ついていた。
⸻
クラスの女子たちからの、静かな孤立。
言葉にしない圧力。
⸻
そんな中で――
一人の男子が現れる。
⸻
名前も名乗らない。
ただ、手を取る。
⸻
「行こう」
それだけ。
⸻
そして、そのまま去っていく。
⸻
時間が流れ、
再び同じ場所に立つ彼女。
⸻
「ありがとう」
⸻
そう言って、彼にキスをするシーン。
⸻
その瞬間――
⸻
横から、柔らかい感触。
⸻
真希の唇が、悠真の唇に触れていた。
⸻
「……っ」
悠真は一瞬だけ固まる。
⸻
だが、声は出さない。
周囲には他の観客がいる。
⸻
真希は、何も言わない。
ただ、ほんの一瞬のキス。
⸻
それだけで、十分だった。
⸻
映画は静かに終わる。
⸻
館内が明るくなる。
⸻
二人は、何も言わずに席を立つ。
⸻
外へ。
⸻
夜の渋谷。
イルミネーション。
人の流れ。
⸻
その中で――
真希が後ろから、そっと悠真に抱きつく。
⸻
「……」
驚く悠真。
⸻
耳元で、静かな声。
⸻
「愛してる」
⸻
その一言。
⸻
悠真は振り返る。
⸻
何も言わずに、ただ軽く笑う。
⸻
その夜は、それで終わる。
⸻
言葉は少ない。
でも、それ以上は必要なかった。
⸻
――12月25日 クリスマス
朝。
⸻
家に戻ると、三人が待っていた。
⸻
「おかえり!」
⸻
「ただいま」
⸻
その瞬間、家の空気が一気に温かくなる。
⸻
テーブルには、準備された料理。
⸻
クリスマスケーキ。
ローストチキン。
ローストビーフ。
⸻
「シチューとピザはまた今度ね」
真希が笑いながら言う。
⸻
「今日はこれで十分だよ」
悠真も頷く。
⸻
「その前に!」
結翔が声を上げる。
⸻
未来と莉嘉も並ぶ。
⸻
「これ、あげる!」
⸻
三人から渡されたのは――
手紙と、お絵描き。
⸻
五人の家族。
手を繋いでいる。
⸻
その絵を見た瞬間、
真希の目が少しだけ揺れる。
⸻
悠真も、ゆっくりと息を吐く。
⸻
「……ありがとう」
⸻
自然と、三人を抱きしめる。
⸻
「大好きだよ」
⸻
子どもたちも嬉しそうに笑う。
⸻
そのまま、食卓へ。
⸻
「いただきます!」
⸻
にぎやかな時間。
笑い声。
⸻
ケーキを切る。
⸻
「せーの――」
⸻
「メリークリスマス!」
⸻
五人の声が重なる。
⸻
その瞬間、
すべてが満たされる。
⸻
忙しかった日々。
すれ違いそうになった時間。
⸻
それでも――
ちゃんと戻ってきた場所。
⸻
“家族”
⸻
食事をしながら、笑い合う。
⸻
それが、何よりも大切だった。
⸻
夜。
⸻
子どもたちは満足そうに眠る。
⸻
真希と悠真は、その姿を見ながら並ぶ。
⸻
「いいクリスマスだったね」
⸻
「うん」
⸻
静かな返事。
⸻
外は寒い。
雪も降っている。
⸻
でも――
この家の中だけは、あたたかい。
⸻
五人で過ごす時間。
⸻
それが、これからも続いていく。
⸻
ゆっくりと、確かに。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——
ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!
その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。
読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。
「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!
皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。




