第三十二話 新体育祭
六月。梅雨の時期を迎え、からからになる夏に向けて準備をする季節。普通なら屋内で静かに過ごすことを余儀なくされてしまうだろう。しかし、この学園では、そんな準備期間などつゆ知らず、決闘が盛んになる。外でやることがないのはもちろん、決闘場は屋内だからだ。
それに、中間テストが終わってばかりのみんなの考えとしては、期末テストが始まるまでに勉強以外のことを楽しみたいというのがある。加えて、この学園の六月にはみんなが参加したがるようなイベントがないのだ。普通の学園では嬉しい人がたくさんいるようなあのイベントでも、ここでは見向きもされないイベントになっている。……そのはずだった。
「いやー、なんやかんやでもう六月か。時間が過ぎるのは早いもんだぜ」
「そうですね。入学してから二か月経ってるなんて信じられませんよ。割かし濃密な日々を過ごしていたんですけどね」
「忙しいほど時間が流れるのを早く感じるっていうしな。ま、その点今月は退屈な日々を過ごすことになるだろうが」
「決闘が盛り上がるこの時期に、決闘しても意味がないんですからね。八雲先輩は順位が変動しませんから。何か他のイベントはないんですか?」
「あるにはあるぜ。だが、参加するような人は少数だろうな」
「あるんですね。イベントの名前は何ですか?」
「うん? 体育祭だよ、体育祭」
「はい? なんで体育祭なんていう一大イベントがあるのに、少数しか参加しないんですか? この学園の戦闘希望者ならこぞって参加しそうなものですけど」
「新体力テストと同じようなものだと思ってもらえればいい。これに少し毛が生えた程度のイベントに参加すると思うか?」
「ああー……なるほどですね」
この学園の体育祭は必ず参加する必要はない。そして、新体力テストと同じでスキルや魔力を使ってもいいということになっているが、そうすると体育祭の種目自体がしょぼくなってしまうのだ。例えば、亜音速手前ほどの速度を出せる帝人先輩が五十メートル走をやったらどうだろうか。絶対に帝人先輩が勝つだろうし、やってる本人からしてもあまり楽しくはないだろう。
体育祭は出場すると多少はランキングポイントをもらえるが、そのために自分のスキルをみんなに見せるかと言われれば、見せはしないだろう。それなら、まだ自分のスキルを知らない相手と戦って勝利した方がポイントを稼げるというものだ。
話を纏めると、出場するメリットがないのだ。面白くもないし、自分の手札をさらすだけ。もちろん出場する人も少しはいるが、ゆるく運動を楽しみたかったり、仲間を作りたい人の最後の手段の場所となっているのが現状だ。あの決闘研究会の部員さえ出場しない。体育祭はこの学園では興味のないイベントに成り下がってしまっている。
「ま、ゆっくりできるときにゆっくり過ごすのはいいことなんだろうな。今月の目標はとことん休むとかにでもしようかね」
「何もないとか言ってると、天王寺先輩から新たな任務を任されるかもしれませんよ? 残り六つとはいえ、時間は限られてますからね」
「馬鹿野郎! 確かにアンノウンの任務のおかげでたくさんのものを手に入れることができたが、たまにはゆっくりしたいときだってあるんだよ。そんなこと言ってると……」
ピロンとスマホの音が鳴る。誰かからメッセージが送られてきた合図だ。俺が恐る恐る送り主を確認すると……、
「おい夜月。帝人先輩が生徒会長室まで来てくれだとさ。多分、新しい問題の解決だと思うぞ」
「良かったですね先輩。これで暇にならずに済みますよ」
「誰がフラグを立てたんだろうな、夜月?」
「退屈な日々を過ごすことになると言っていた先輩じゃないですか?」
「……かもな。いくぞ、夜月」
「はい!」
元気よく歩く夜月に背中を押されるようにして前へ進む俺。初めての任務が特級魔道具の解析だったんだ。一体次はどんな任務が待ち受けているのやら。……ったく、ワクワクしてしまうと帝人先輩に上手く乗せられてる気がして素直になれねぇな。
俺が複雑な気持ちを抱えながら生徒会長室にたどり着く。いつものように声をかけて入ると、これまたいつものように手を後ろに組んで外の景色を見ている帝人先輩がいた。
「やあ、八雲くん、夜月くん。突然の連絡であったのに迅速に対応してもらって嬉しく思うよ。呼び出しておいて申し訳ないが、私も予定が立て込んでいてね」
「こんにちは帝人先輩。それなら早速本題に入ってもらいましょうか。今回の要件は何ですか?」
「要件は新しい問題、君たにとっては二つ目の問題を解決してもらいたいと思っている。問題の内容は『視線を感じる部屋』だ。この学園のどこかにありそうなんだが、居場所が特定できなくてね。その居場所というよりは、それが本当にこの学園にあることを確認してほしいんだ」
「視線を感じる部屋ですか? どんな内装をしているんですか?」
「体験者が数名いるのだが、皆、口をそろえて普通の教室と答える。しかし、周りに人の気配はなく、誰かが覗いているわけでもないらしい」
「普通の教室で居場所を特定してほしいというのはどういうことでしょうか? 体験者が数名いるのですから特定できそうなものですけど」
「それが体験者全員、どうやってその場にたどり着いたのか、どうやってそこから帰ってきたのか覚えてないみたいなんだ。正確には気が付くとその部屋にいて、気が付くと外にいたという話だ。そして、その体験者たちが部屋に入った時期は、いずれも何かの催し事のタイミングと重なっている。これらのことから私は魔力遺跡ではないかと判断している」
「「魔力遺跡!?」」
魔力遺跡とは、普通の遺跡とは違い、魔力が関わっている遺跡のことを言う。単純にとんでもない魔力を保持していたり、その遺跡の内部だけ無重力空間になっていたりと、固有の性質を持っているものがある。
特級魔道具と同じで珍しいものには違いないが、危ないものは少なく、世界遺産として観光地になっているところすらある。自然界によって偶然できたものが多く、人の手によって作られたものはないと聞いている。
「イベントのタイミングと重なっているってことは、人が集まるタイミングと言ってもいい。すなわち、人の魔力を少しずつ吸収することで魔力を蓄え、その真価を発揮する遺跡ってことなんですかね?」
「うん、いい考察だね。私も八雲くんと同じ考えだ。だから、体育祭が行われるこのタイミングに君たちへ調査を任せることにした。魔力遺跡が確かに存在するということを把握しておきたい。ついでに遺跡内も軽く調査してほしい。そこで調査して独自に推測した遺跡の内容をレポートとして私に提出してほしいんだ。構わないだろうか?」
「そりゃ構いませんが、一つ不安要素があります」
「何かね?」
「そもそも、この学園の体育祭に人が集まるとは思えません。調査するなら文化祭のタイミングがいいんじゃないですか?」
「はははははははは! そうだね。今までの体育祭を知っているならそう考えるだろう。だが、安心したまえ。今年の体育祭は生徒会が主導となって種目を一新した。もうすぐ生徒会から全生徒へ通知が行くだろう。様子見する生徒はたくさんいるだろうが、新体力テストのようにはならないはずだ」
そういえば前に綾辻先輩が言ってたな。物事には優先順位があると。生徒会としては新体力テストよりも先に体育祭を変えるべきだと思い、行動に移したということか。
「それなら大丈夫そうですね。その任務受けさせてもらいます。夜月も問題ないよな?」
「はい、大丈夫です。ですが、今回は前回と違って聞き込みと調査だけで終わりそうですね」
「ああ、それなんだけどね。実はもう一つ任務を遂行してもらうに当たって頼みがあるんだ。二人とも、この新しい体育祭に参加してほしい」
「「え?」」
「理由は二つ。一つは、実際にイベントを体験しながら周りに変化がないか確認してほしいから。もう一つは、新しい体育祭の感想が二人の口から聞きたいからだ。どうだろうか?」
「それも任務の内というなら断る理由はないですよ。体育祭に出場させてもらいます」
「私も新しくなった体育祭には興味があります。新体力テストとは違うというのなら、どういったものになっているのか楽しみです」
「そう言ってくれると嬉しいよ。よし、決まりだね。体育祭の種目や日程については後日連絡が来るはずだ。その時にインターネットによる参加申し込みを受け付けているから、そこで申し込んでくれたまえ。それでは、これで話は終わりだ。体育祭でも魔力遺跡の任務でも、活躍を期待しているよ」
「「はい、ありがとうございました」」
いつだっただろうか。六月は何もない月になると話していたのは。退屈になるはずだった俺の六月は、瞬く間に忙しい月へと変化したのであった。
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帝人先輩から任務を受けて二日後。俺と夜月、荒武と小波でトレーニングをしようとなったとき、四人の元へ生徒会からメッセージが届いた。
「おや? 生徒会から連絡とは珍しいね。みんなも生徒会からかい?」
「そうですわ。それも体育祭の案内なんてなおさら珍しいですわね。この前あまり意味のないイベントだと聞いたばかりですの」
「おっ、ようやく来たか。今年の体育祭は今までとは一味違うらしいぜ。生徒会が内容を一新したらしい」
「体育祭のプログラムもpdfで全部公開されてるみたいですね。私と八雲先輩は出場することが決まっているんですが、みなさんもこれを見て出場するか決めませんか?」
「うん、そうしてみようか。意義のあるものであるならば、僕も出場したいからね」
「人が多い催し事は苦手ですが、興味はありますわ。わたくしも見てみようかしら」
俺たちは最寄りのカフェに入る。テスト期間が終わったので人は少ない。すぐに座れる場所を見つけて商品を頼み、プログラムを確認することにした。
「ええーと、どれどれ……生徒会主催による第一回体育祭の案内と……おおー! 見たことない競技が半分くらいあるぞ!!」
プログラムに書いてある競技は全部で十一種類。上から、チェックポイントリレー、サバイバル鬼ごっこ、騎馬戦、タイヤ取り、障害物競走、魔力弾合戦、綱引き、妨害玉入れ、天岩サバイバー、防衛作戦、決闘という構成になっている。チームは赤と白の二チームに分かれているみたいだ。
「これぞ体育祭というものまであれば、珍しいものまでたくさんあるね。相当力を入れてるみたいだ」
「決闘希望者ならではのプログラムもありますし、これはかなり面白そうですよ」
「人数制限のある種目とそうでない種目がありますわね。参加申込者の数によって人数制限のない種目の人数を決める形みたいですわ」
「ひとまず、上の方から種目の内容を確認していくか。まずは、チェックポイントリレーだな。定員は四名。一人約四キロメートルを走り、校内を回っていく種目になっている。各走者のスタートとゴールの間にはチェックポイントが三か所あり、このチェックポイントを通過できるのであれば、どんな手を使っても構わないと書いてある」
「近道を使ったり、瞬間移動をしてもいいということですね。コース的に空を飛べる人はかなり有利かもしれませんね」
その他のルールに妨害してはいけないと書いていないから相手を妨害するのもありだろうが、シンプルなルールゆえに、単純に走るのが早い奴か空中移動できる奴が求められるだろうな。雷属性や身体能力が跳ね上がるスキル持ちを選ぶのが無難だろうか。
「次にサバイバル鬼ごっこだな。これは鬼相手に最後の一人まで生き残った人のチームが勝ちということらしい。分かりやすくていいな」
「鬼が誰かは気になるところですね。当日まで内緒で生徒会主導ということは生徒会の方が鬼をやるんですかね?」
生徒会の人が鬼をやる。それはこの競技がかなり難しくなることを意味している。生徒会には戦闘ランキング五位の東雲先輩、九位の綾辻先輩だけでなく、十一位の方も在籍しているのだ。どうなるかは分からないが、隠密できる人が適任かもしれない。
「次に騎馬戦だな。ルールは普通の騎馬戦と同じで、相手に鉢巻を取られたら再起不能になり、最後まで生き残ったチームが勝ちらしいぞ」
「どんな人が適任なのかは実際にスキルを確認しないと分かりづらいね。上の人が地面につかなければいいということは、空中機動力のある人が有利に働くということかな」
「だろうな。これは仲間が決まってから考えたほうが良さそうだ。次にタイヤ取りだな。これもシンプル、ポイントの違う大小のタイヤを奪い合い、ポイントが多い方が勝ちということだ」
「単純に力の強い人が適任だと思いますわ。荒武様には勝てる気がしませんもの」
「意外とルールは普通の体育祭と同じなんですね。というより、同じでも問題ないものはそのままにしているのかもしれません。今のところ、リレーの距離が長いくらいですからね」
「いきなり全部を変えるのは難しいんじゃないかな? 少しずつ変えていって、レスポンスを見るのも生徒会の目的だと思うからね」
「前の体育祭と違って、みんなが参加したがるような体育祭になっているのか。これが一番重要だからな。よし、次いくぞ。次は障害物競走だ。これはどんな障害物が待っているかは当日まで分からないらしい。勝利条件はチーム内の誰か一人でも先にゴールへたどり着くことみたいだ。これは……メインで走るやつを決めて他がサポートするのが一番だろうな。相手からの妨害もあるかもしれないから、それに対抗できる手段も持っておいた方がいいだろう」
「意外と人選のバランスが大事な種目かもしれませんの。これも、味方のスキル次第ということですわね」
「それでだ。問題の一つ目は次。魔力弾合戦とは何ぞやという話なんだが、簡単な話、雪合戦の魔力弾バージョンらしい。魔力弾の大きさや威力にはレギュレーションがあるみたいだ。あんまり強い威力や大きな魔力弾は禁止ということみたいだ。数重視の魔力弾を簡単に撃てないように、ある程度の威力のある魔力弾がヒットしないと当たった判定にならないとも書いてある。感応装置の魔道具が魔力と衝撃を同時に感知してヒット判定を行うため、普通の雪合戦と同じく魔力によるガードはなしだそうだ」
「そうしないと自分の魔力に反応してヒット判定になってしまうからね。そうなると、土属性の地形防御や八雲くんの【進んで戻れ】のようなスキルが重宝されるだろうね。八雲くんの出場種目は一つ決まったようのものじゃないか」
「まー、全ての種目に出場できないだろうから、他にどんな種目があるかを見て調整していってからだな」
俺の【進んで戻れ】は放った魔力弾の軌跡を戻ってくるというもの。よって、壁裏の相手に当てることはできない。それでも、属性系の魔力弾も禁止ということなら、普通の人よりは役に立てるスキルを持っていることには変わりないか。今までの種目に別段適性がある訳ではないし、この種目に出場するのは全然ありだな。
「どうやら一人二種目までしか出場できないみたいですよ。例外としてチーム内で一人だけ三種目出場できるみたいです。それと、防衛作戦と決闘は重複して出れないというルールもありますね」
「夜月くんのような強者が何種目も出れたらチートだし、戦闘系で二種目も出れたら強いからね。妥当というべきかな」
「まだまだあるぞ。次は綱引きだ。これは普通の綱引きと同じだが、これまたパワー系の種目だな」
「うーん、僕は戦闘系の種目には出場したいから、タイヤ引きか綱引きのどちらかにしたいところだね。三種目出場するのもありだろうけど、柊一さんは絶対参加するだろうしな。そうしたら、柊一さんは夜月くんとは別チームになるだろう? どちらのチームになっても強い人が三回出場した方がいいだろうしね」
「ですが、基本的に体育祭の種目は行われる直前に人員を決めてもいいそうですので、臨機応変が大事かもしれませんわね。現在の持ちポイントによって三回出場する選手を変えたほうがいいと思いますの」
意外と考えられているんだな。ルールもしっかりとしている。なるべく戦闘ランキングの高い人は戦闘系の種目に出てもらった方がいいだろう。そうなると、他の種目をどうするかだな。得点の配点も後で調べた方が良さそうだ。
「妨害玉入れは、玉入れを入れる側と妨害する側に別れるって書いてるな。それを交互に行うらしい。妨害手段と言っても基本的には魔力弾になるだろうし、難しいところだな」
「妨害と玉入れ、どちらにも強く出れる選手が欲しいですわね。これも仲間次第ですの」
「これまた次は問題児の登場だな。天岩サバイバーって何だよ? うーん、定員は八名。押し寄せる敵から身を守り、一定時間生き残った数の多いチームが場利する。一言でいえば、某サバイバー系ゲームをシミュレーションルームで現実に再現したものである……大丈夫なのかこれ?」
「……ルールは分かりましたが、大丈夫なのを祈りましょう」
「これは多分、生徒会会計の趣味だろうね。あの人ならやりかねない」
「人によって与えられる特殊スキルが違うため、各自生徒会に確認してくれってさ。あの人らしいな」
「詳細は後で連絡が来るそうなので、次に移った方がいいと思いますわ。それに、面白そうな種目には違いありませんもの」
「はぁー、それもそうだな。じゃあ次は防衛作戦だ。これは自分チームの建物を守りながら、相手チームの建物を壊すというもの。建物が壊されたり、どちらかのチームの全員が再起不能になったらもう一方のチームの勝ちになると書いてある。タワーディフェンスゲームをしながら、相手の拠点を破壊するゲームでもあるということか。人員の配置が鍵になるだろうな」
「防衛作戦は一回戦と二回戦があるみたいですね。しかも、これは今までの種目と違って、得点がそれぞれ、今までの倍の百ポイントですよ。やっぱり戦闘系に力を入れるのが大事そうですね」
戦闘種目は防衛作戦か決闘のどちらか一つしか出られない。人員を一回戦目と二回戦目で分散させるのか、それとも一つの戦いに総力をつぎ込むのか、難しいところだな。
「最後に決闘だな。こちらも二回戦あって定員は各一名。こちらもポイントはそれぞれ百ポイント。ルールは普通の決闘と同じだが、誰が出場するかは勝っているチームから選び、負けたチームはそれを見て出場者を選ぶことができる。また、負けているチームが勝てば、通常得点の百点に加え、戦闘ランキングの差だけ追加ポイントをもらえる。一つ順位が下がるごとに、二ポイント追加でもらえるみたいだ」
「一応一発逆転も狙えるけど、その分条件が難しくなるってことですね。まあ、基本的には順位が高い人が決闘に出ると思いますけどね。勝たなければ意味がありませんから」
「これで、種目の説明は終わりになるな。どうだ、二人は参加する気になったか?」
「「もちろん(ですわ)!!」」
「それじゃあ、今ここで申し込みをするか。チームの割り振りがどうなるか分からないが、お互い同じチームになれればいいな」
「私としては敵同士として戦ってみるのもありだと思いますけどね。ま、どれだけ人が集まるのか、どんな人が集まるのかにも注目ですね」
「決闘研究会のみんなは必ず参加すると思うから、みんな覚悟しておいた方がいいと思うよ。想像よりもハードなイベントになるかもしれないからね」
「それは厄介なこと極まりないな。けど、参加するだけでランキングポイントもかなりもらえるみたいだしな。適度に頑張りながら楽しもうぜ」
みんなが笑いながら申し込みをする。しかし、この時の俺たちはまだ知らなかった。この体育祭に多くの強者が参加するということを。
ーーー
一週間後、締め切りを過ぎてから二日が経過した。生徒会の会計はとんでもないほどの働き者で有能な人だ。二日もあれば、チーム分けも終わっていることだろう。俺が夜月とトレーニングをした後、学食で夜ご飯を食べているときに生徒会から再び連絡が来た。
「おっ! 体育祭のチーム分けの連絡だとよ。一年生、二年生、三年生と分かれているな。流石に一、二年生は様子見の人が多いのか数が少ないな……って夜月、同じチームだな」
「本当ですね。荒武先輩や紬も同じチームですよ。あっ! それに、双葉先輩や小春先輩もいますよ!」
「前遊んだ時に、二人とも出場するって言ってたもんな。二人が俺たちと同じなのは、戦闘希望者の知り合いが少ないであろう二人への生徒会の計らいかもしれないな……うん? あれ? おいおいおいおいおい! 獅子王先輩までこっちのチームだぞ!! 一体どうなってるんだ!? それに五十以内どころか十位台の精鋭が集まってるじゃねぇか!? シングルと十位台が合計で七人もいるぞ!! 一体相手は誰、なん、だ……」
「一体先輩どうしたんですか? そりゃ、あっちのチームにも強い人はいるだろうって……え? 嘘ですよね……?」
チームの参加者は学年ごと、戦闘ランキング順に記載されてある。そして、俺たちを黙らせたのは数多いる強者の名前の中でも一際目立つその名前。『天王寺帝人』という学園最強の男の名前であった。




