4.兄妹の絆
「と言うわけで父さんは無罪だ」
「なんでっ!? どうしてっ!?」
ほら見ろとばかりに冷笑するレイカに対して、わけがわからないと騒ぐカナ。
食べたこと自体を咎めたいカナからすれば、食べかけか否かだけでジャッジする俺らの主張は到底受け入れられないのだろう。レイカとカナの言いあいは収束する気配を見せない。
そんな二人の間でおろおろする父さんを眺めながら、俺は、
「うーん……」
首をひねっていた。
「? どうしたのですかサト兄?」
「ああ、いや……。どうにも引っかかるんだよねぇ」
「引っかかる? さっきのパパの話がですか?」
「うん、まあ……」
ミホとのやりとりを早々に切り上げ、黙考に戻る俺。
すると質問に対する俺の無反応を是と捉えたのか、ミホは人差し指を口元に当てながら意見を述べた。
「でも情報的にはパパの証言も他と変わり映えしなかったですよ? 新しくわかったのは、パパがプリンを見つけたのは5人の中で一番初め、ってことくらいでしょうか。あとはパパも食べかけプリンを食べていない……」
「ああ。でも父さんが食ったプリンは冷蔵庫の最上段奥にあった。カナが隠した場所と一致している。だがプリンは未開封だった」
「てことはカナ姉が隠してからパパが見つけるまでにプリンが新しいものとすり替わった、ってことですか? ……確かに、これは手掛かりになりそうですね」
俺の発言を受けてミホも真剣に考えだす。
でも正直にいえば、俺が引っかかりを覚えたポイントはそこではない。もっと別の箇所で、なんというか、これまでの前提とそぐわない発言がなされたような……。
「おいおい騒ぐなよカナ。父さんが困ってるだろ」
「だって意味わかんないじゃん! なんでいきなりパパが無罪になるのよっ!」
「だ、大丈夫だよレイカ、庇ってくれなくても。パパが食べちゃったのは事実なんだしさ」
一体どの部分だ? ミホの送り迎えの時間か? それとも冷蔵庫の話?
「認めたわねパパ! じゃあケーキ40個! 責任とっうにゃあぁ!?」
「だーからやめろって! 父さんも無理に合わせなくていいからな」
「あ、あはは……でも一応お詫びは買ってくるよ。じゃ、そろそろ行ってきます」
風呂の時間か仕事の話か? いや、最後のカナとのやりとりも怪し、
「ああ、いってらっしゃい。ほらカナも。プリンのことはもう忘れろ」
「やだ! パパがケーキ40個買うって約束するまで諦めない!」
「父さんは犯人じゃないって言ってるだろ。話聞いてなかったのか?」
「パパは食べた! だってさっきも「たまには一個くらいいいかなー」って、」
突如俺の脳内に電撃が走る。
「それだ」
『……え?』
俺の発言に、全員が振り向く。その中でミホだけが「何かわかったのですかサト兄?」と訊ねてきた。
「ああ、わかった。いや逆にわからなくなったとも言えるかもな。だからまず事実がどうだったかを確認する。なあ、父さん」
「? なんだい?」
「単刀直入に訊くぜ? 冷蔵庫にプリンは何個あった?」
俺の質問でレイカとミホの表情が動いた。
おそらくこの質問が意味するところに気づいたのだろう。
それは、一度は皆考え、そして捨てた、あまりにも単純なトリック。
すなわち、初めからプリンは複数個存在していたという説の確認を意味する。
そしてその結果がこちら。
「5個だよ。パパが食べて4個になったけど」
「「な……っ!」」
レイカとミホの顔が驚愕に染まる。
やはりそうか。
父さんは「なぜプリンを食べたのか」という質問に「一個くらいいいかなと思った」と答えた。
この「一個くらい」という言葉の裏には、プリンは他にもたくさんあったことが暗に含まれていたのだ。
……いや、本当はもっと前からヒントはあった。今にして思えばカナが空のプリン容器を一個しか持っていなかったこと――ではなく、一個持っていたことに違和感を持つべきだったんだ。
カナが騒ぎ出したのは彼女が朝起きて冷蔵庫を確認してすぐのこと。だから空のカップは台所のゴミ箱から拾ってきたはずで、俺が自室で食って自室のゴミ箱に捨てたカップを探し出すことは不可能なのだ。
父さんも俺と同様自分の部屋に持ち込んでいたし、レイカとミホが台所なんてすぐバレそうな所にカップを捨てるはずがない。……やられた。あのときは朝食に気を取られていたとはいえ、自分の注意力の無さが恨めしい。
しかしすぐさまレイカが反論する。
「あ、ありえねえよ……! たかが買い物の手伝いで、あの母さんがカナ1人に5個もプリンを買い与えるはずがねえ!」
俺だってそう思う。うちの母さんは優しい人だが、娘を過剰に甘やかす人間ではない。
だが残念ながらこれが事実だ。先入観を信じても真実は覆らない。
「それにまだ母さんが買ったと決まったわけじゃねえ。わかったのはプリンが複数あったってことだけだ」
しかもプリンの数は5個。容疑者の人数と一致している。
むしろこれにより本事件一番の謎――なぜ容疑者が5人もいるのかが説明できるのだ。
「えっと、よくわからないけど、そろそろ会社行っていいかい?」
「あ、待ってくれ父さん。最後に一つだけ質問」
父さんはあくまで第一プリン発見者だ。おそらく詳しい真相までは知らないだろう。
でも聞けることは聞いておきたい。
「カナの名前は5個のプリン全部に書いてあったの?」
「うーん、多分。奥のものは知らないけど、見えた分には書いてあったよ」
「そっか、ありがとう。じゃあ気をつけてな」
俺達の見送りに父さんは手を振ると、「じゃあ行ってくるよ」と玄関の向こうに姿を消した。
「おいカナ! どういうことだ、説明しろ!」
玄関の扉が閉まった途端、レイカがカナの両肩に掴みかかった。
「説明も何もないわよ! ていうかあんた達こそどういうこと! 結局みんな1個ずつ食べてたなら、やっぱりあたしの主張正しかったんじゃない!」
「だったらプリンが5個あったって始めから言えよ!」
「だから言ったじゃん! 5人全員が犯人だって! それを「証拠を出せ」なんてとぼけたのはレイカでしょ!?」
「とぼけてねえよ! マジで知らなかったんだよ!」
「どうしてよっ! だってあたしは5個まとめて隠したのよ? 仮に取ったのが一個ずつでも、最後の人以外は他にもプリンはあるって、知ってて当然じゃん!」
その言葉に、カナを掴んでいたレイカの手が離れた。
するとカナは乱れた寝間着を整えながら、「だいたいねぇ」と続けて口を開く。
「あたしは最初、てっきりあんた達の誰かが1人で5個全部食べたと思ってたのよ。だってそうでしょ? サトシもレイカもミホも、5個プリン見つけたのに1個しか盗まないなんてありえないもん」
カナの見解に、3人、顔を合わせる。
そして結論。
「「「確かに」」」
「確かに、じゃない! いいかげん盗みを犯すことに恥を知りなさい!」
「いや正確には違うな。多分3個以上見つけた場合は俺達3人で山分けしてた」
「人のおやつを勝手に共有するなああああああああああああああああ!」
そうかぁ、プリンは元々まとめて隠してあったのか。もしその光景を俺が見つけていたら……なるほど、3人笑顔で「カナの!」プリンを乾杯している図が容易に想像できる。ああ素晴らしきかな兄妹愛。
「でもよ、実際にはプリン総取りして3人でプリンパーティ、なんてことにはならなかったぞ? 私達はそれぞれ1個ずつ、しかもバラバラの場所からプリンを発見したんだからな。なあ、それっておかしくねえか?」
「あんた達のあたしに対する扱いの方がよっぽどおかしいわよ!」
レイカの指摘はもっともだ。確かに矛盾している。そもそも俺達3人はカナの隠し場所――冷蔵庫の最上段奥からはプリンを見つけていないのだ。これじゃまるで一ヶ所に固まっていたプリンが独りでに散らばったみたいじゃないか。
しかし一方で父さんはカナが隠したと主張する場所からプリンを取り出した。
そしてプリンの発見順は父さんが一番(午後5時半)で俺が二番(午後6時半)。
つまりプリンが散らばる外的要因があるとすれば、その一時間の間に何らかの干渉を起こしたことになる。
と、俺がそこまで推測したところで、隣のミホがつぶやいた。
「……ママですよ」
「母さん?」
「はいです。夕飯の準備中、多分一緒に冷蔵庫の整理もしてたんですよ。やっぱりあの食材の量、昨日の夕食の分を差し引いても、冷蔵庫に入れ切るのは至難の業です。プリンが5個も固まって場所取ってたら邪魔ですし、移動もさせますよ」
なるほど、そうか。
カナがプリンを仕舞ったのは午後5時頃で、夕飯の支度は午後5時半から午後7時にかけて。
父さんのプリン発見が冷蔵庫整理の直前だった可能性はかなり高い。
言われてみれば俺の見つけたプリンも、隙間を埋めるように冷蔵庫の隅に挟まっていた。
レイカのドアポケットやミホの野菜室も、おそらく無理やり詰め込んだ結果だったのだろう。
「ミホの言うとおりかもしれねえ。よし、母さんの所に行って真相を確かめよう。ついでに新たな情報も得られるかもしれない」
「だな。あとカナに5個もプリンを買った理由も聞き出さねえと」
「食べかけプリンの行方も気になります。いよいよ事件もクライマックス……何だか燃えてきましたです!」
「食べかけプリン? 何よそれ?」
というわけで俺達は母さんを探しに、二階への階段を駆け上がった。
――スパパーン!
「あんた達今何時だと思ってるの! 完全に遅刻じゃない!」
叩かれた。しかも俺とレイカだけ。
「がぁあいってぇえ! 頬もげるぞおい!」
「私なんて首ごともってかれたぜ……。なんつー平手打ちだ」
「ベーだ! ざまあみろっ! ペッペッ!」
おまけにカナにまで足蹴りされる始末。つーかうずくまる兄と姉を踏んづけてツバ吐きつけるとか、コイツどんだけ性格歪んでるんだ……。
「妹巻き込んでバカやってるんじゃないわよまったく! カナはまだしも、ミホはまだ小学生なのよ?」
「あの、ママ、ママ」
「もー、ミホも! お姉ちゃん達に付き合ってないで、早く学校に行きなさい」
「はいです。でもその前に昨日のこと、もう一度聞いていいですか?」
「えー、またぁ?」
「これで最後なのです。……ダメですか?」
「……ハァ、んもう、しょうがないわね」
ミホの上目遣いにあっさりと口を割る母さん。いつもながら妹には甘い母である。
そして答え合わせの結果、どうやらミホの推理は正解だったらしい。
「昨日は帰ったら冷凍食品だけ仕舞って、忘れないうちにすぐ回覧板を回しに行ったわ。そこでちょっとおしゃべりしたら……うん、戻って冷蔵庫の整理、したわよ。もちろんプリンも移動したわ。最後に入れられる隙間に埋めていった感じ。そのときは忙しくて、どれがカナのプリンかなんて気にしなかったけど」
「やはりそうか……」
「これで謎は一つ解けたな、兄貴」
「うぅぅーっ、いったーぃい!」
起き上がった俺とレイカはカナにデコピンを喰らわせつつ、頷いた。
となると次に確認すべきは、
「あのさ、母さんの食べたプリンにスプーンの跡ってあった?」
ここで母さんのプリンが食べかけなら、さらに謎が一つ消える。
5個のプリンのうち4個の未開封を俺、レイカ、ミホ、父さんが。カナが一口食べて残したものを母さんが食べて、矛盾はゼロだ。
だが、母さんの回答は、
「あるわけないでしょ。買ったばかりだもの」
……なんだと?
じゃあカナの食べかけは、どこに消えたんだよ?
俺が謎の怪奇現象に頭を悩ませる中、レイカが「それよりもさぁ」と強めの口調で母さんに迫った。
「私からすりゃあ、母さんがカナを甘やかし過ぎてることを咎めたいね。いくら手伝ってもらったからって、買い物程度でプリン5個はないだろ。親としてそりゃマズいんじゃないか?」
「何なのいきなり? それに親としてマズいって……」
「さっきだってカナには全然叱らなかったしな。言っとくがこれは嫉妬じゃないぜ? 客観的に見て、母さんはカナに対して甘すぎる」
「バカ言ってんじゃないわよ。あんた達もう高校生なんだから、教育法くらい変えます」
「私は中一の頃からぶたれてましたけどねっ! プリン5個なんて破格の待遇も受けてないし!」
やっぱり嫉妬じゃねえかよ。
まあ俺もレイカと同じ扱いだったから、口には出さないけど。
なんて考えていたときだ。
母さんの口から、またも衝撃の言葉が飛び出した。
「プリン5個? カナには1個しか買ってないわよ?」
『はい?』
俺達4人全員、目が点になった。
おいおい……、もう訳がわかんねえぞ。
一応、当初の前提は守られたが、これじゃ事件はふりだしじゃねえか。
頭を抱え込む俺達。
そんな中、真っ先に異議を申し立てたのは意外にもカナだった。
「嘘だッ! だってママ、「いつも手伝ってくれるから」って、プリン6個買ってくれたじゃん!」
「手伝ってくれてるのはカナだけじゃないでしょう。あれはみんなへのご褒美って意味よ。それに6人家族なんだから、6個買った時点でわかるでしょ?」
……なんだ? 今、数字が一つずれてなかったか?
だが俺たちを置き去りにして、衝撃発言は続く。
「あ! さてはカナ! あなたまたおやつ独り占めしたのね? こないだのシュークリームのときも、その前のエクレアのときも、やめなさいって言ったでしょ! なんべん注意されればわかるの!」
「ううーっ! だってだってーっ!」
母さんとカナが言いあう中、俺達三人は沈黙。
そして小声で情報交換。
「(おいレイカ、ミホ、シュークリームとエクレアってなんだ?)」
「(知らねぇ。つーか食ったとしても何年前の話だ?)」
「(少なくともここ2年ほどは見てないのです。レアキャラさんなのです)」
「「「(……)」」」
そのとき、俺達は思い出した。
カナという人間の唯我独尊ぶり。
息をするように行うおやつの独占行為。
――そして、カナのおやつを見つけ次第、率先して食べる理由。
長年、ルーティーン化しすぎていて、本来の目的を忘れていた。
決していじわるのためではない。
そうでもしないと、俺達におやつが廻らないからだ。
さらに俺は、芋づる式に思い出す。
それは遠い遠い過去の記憶。まだカナの素性を認知していなかった頃の話。
「……なあ、カナ?」
「はぁ!? なによ!」
「おまえさ……、買い物から帰ってすぐ、プリン一口食ったって、言ってたよな?」
「そうだけど、それがなに!」
「その一口ってさ……どのくらいの量?」
「一口は一口よ! 一度で口に入る分、だからちょうどプリン一個分!」
一口ちょうだいと言われて差し出したゼリーを、一口で全部食われたあの忌々しき思い出を!
……とまあ、そんなわけで事件の全容は以下の通り。
母さんが買った家族6人分のプリンをカナが独占。カナが丸々1個食べたあと父さんも食べ、その後冷蔵庫内シャッフルを経て俺、レイカ、ミホ、母さんの手に渡る。
ちなみに母さんはプリンを食べた後、その罪悪感からカップを捨てるに捨てられず、後で謝るときのために洗って保存していたのだそうだ。
だからカナが握っていたカップは、初めに自分が食べたものだったらしい。他のカップは台所のゴミ箱をひっくり返して探した結果、見つからず断念。唯一見つけた自分のカップを俺達に見せつけて、犯人をあぶり出そうとしたようだ。
ともかく、解決にかなりの労力を割いたが、結果だけ見るとプリンは家族全員に分配されてめでたしめでたし、だったというわけだ。
だから普通なら、ここらで清々しく解散! という流れになるはずだろう。
でも我が家の場合は一味違う。
それも、後味がすこぶる悪いのだ。
なぜなら我が家随一の問題児様は、この手のいざこざが終結すると自分がその火種であるにもかかわらず謝罪をするどころか次のようなことを悪びれもせずさも自明の理であるが如く神経を逆なでするような声音で鼻嗤いも交えつつ言い切ってしまうのだから。
「だいたいプリン6個買ったら全部あたしのものだって思うでしょ普通? だってあんた達とあたしじゃあ生まれつき格が違うのよ格が。お姫様がそのへんのハエにお恵みなんて与えないでしょ? それと同じよ。なのに恥じらいもせずあたしの崇高なプリンに寄ってたかって……鬱陶しいのよ。殺虫剤撒いたら死んでくれる?
え? なんでそんなに怒ってるのよ? まさかママにプリン買ってもらえなかったから嫉妬してるの? うわ、だっさ~い! 小学生じゃないんだからさぁ~、もっと大人になりなさいよ。あ、ごっめん、ミホは小学生だったわね。んじゃいつも一緒のサトシとレイカも同レベル? それ以下? まっ、低能な乞食の脳年齢なんてど~でもいいんだけどね。興味ないしぃ。
それよりこれでわかったでしょ? あんた達はあたしのプリンを食べたから有罪なのよゆ・う・ざ・い! あたしの逆転サヨナラ勝訴ってことよ! さあさあ、敗者は勝者に何をしなきゃいけないんだっけぇ? まず両膝を着いてぇ、そう、額を床に擦りつける。はいよくできまちた♡ あはは、ねえねえ教えてぇ? 兄妹三人がかりで妹一人に論破された挙げ句土下座させられるのってどんな気持ちぃ? ねえどんな気持ちぃ? ま、もちろんこれだけじゃ許さないけどね。きっちり責任は取ってもらうわ。てなわけで一人当たり10倍返し、謝罪文付きでよこしなさい! 期限はそうねぇ~、今日の夕食までかな。フフッ、これで30個、パパのケーキとママの分も合わせて50個ね♪ あ、別に甘いお菓子だったらプリンじゃなくてもいいわよ? そこはあんた達のセンスに任せるわ。小指ほどのちっこい脳でも絞ればなんか出てくるでしょ? んじゃ、あたしそろそろ学校行くから。放課後よろしくねぇ~☆」
「「「……」」」
絆を深める最も簡単な方法は、共通の敵を作ることだと何かの本で読んだことがある。
実際これを書いた人が、その意味をどれほど体感していたかは知らない。
だが少なくとも俺達3人には10年来、その効果で培った悪友的な絆があるわけで。
「……なあなあ知ってるー? 俺達の脳って、小学生並らしいぜー?」
「……マジでぇ? じゃあガキはガキらしくあの遊びしようぜあの遊びー」
「……じゃんけんぽんから始まるやつですねー? やりましょうですー」
俺達はゆらりと歩きだし、カナの正面で立ち止まる。
そして放つのは、小学生時代より受け継がれし伝統の連続技。
「「「くらえっ! シッペ・デコピン・馬場チョップ三連コンボーーーーっ!」」」
「みぎゃあああああああああああん!」
レイカの二本指が鞭のように叩き、俺の中指が弓の如く弾け、ミホの手刀が鈍器さながらに脳天を打つ。
そんな一連の技を繰りだして、俺達は、
「おいしゃがんでねえで立てよ殴れねえだろぉ~? おらぁ、デュクシデュクシ!」
「だははははダッセー! 泣いてやんのー! ウェーイ、ウェーイ!」
「バーカバーカ! おまえの母ちゃんでーべーそー、なのですー!」
「ふえぇぇえん! ママぁーっ!」
「あんた達さっきから学校行けって言ってるでしょうがぁぁぁぁあああああーっ!」
「「ゲぶるぁああ!」」「ぎゃん!」
怒りの頂点に達した母による、三連コンボの"続き"(ミホはその流れ弾)を喰らうのであった。
三連コンボの"続き"には地域性があるそうです。
技の詳細につきましては各々の小学生時代の思い出からご想像ください。