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狙撃手の素顔
「ご無礼。」
柔磨が牙王を押し倒した瞬間、牙王の頭があった場所を一発の銃弾が
通過して、後ろの柱に炸裂する。
バーン
牙王とて戦国武将、武人、何が起こったか瞬時に理解した。
実は、牙王はバイセクシャルなので、柔磨の激しい抱擁が
嬉しかったが、そんなことは今は言っておれない。命が、惜しい。
二発目の銃弾が襲ってきた。
バーン
牙王の周りに駆け寄った家来の一人が楯となって撃たれた。
見物客はパニックに陥り、わめき騒ぐ。
「あそこだ。」
そんな中、冷静な柔磨は狙撃手の姿を発見した。
かなりの距離があるだけに、銃の名手と見た。
新しい玩具を見つけた子供のように、柔磨は、牙王を家来にまかせ、
疾走する。
バーン
狙撃手は柔磨を狙って撃ったが、頬をかすめるだけであった。
腰を抜かすどころか、笑みを浮かべる柔磨に驚いた狙撃手はあきらめて、
逃亡を図った。
それを許すような柔磨ではない。
たちまち追いつき、銃を奪い、覆面を剥いだ。
「何と・・・・・」
覆面の下の素顔に、柔磨は言葉を失ったのである。