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休憩のあと、のんびり荷馬車は畑道を進む。
おむすびでお腹の膨れたヒーラギは、ユラユラと揺れる荷馬車の後ろでウトウト眠っていた。その荷馬車の速度が徐々に緩やかになり止まった。
「お嬢さん」と眠ってしまったヒーラギを揺り起こす、誰かがいる。
(まさか、お祈りの時間に遅れた?)
「遅れました、すみません……」
あ、あれ? ヒーラギの目に住み慣れた部屋ではなく、自然豊かな風景が飛び込んだ。ヒーラギはそうだったと――もう、自分は聖女ではないとホッと息を漏らした。
「お嬢さん、いきなり起こしてごめんな」
「いいえ、少し夢を見ていて驚いてしまいました……それで、ここは何処ですか?」
木造の家が数件建っている。その中の、一軒の家の前に荷馬車は止まっていた。
「ここがアーク村で、ここが家がワシの家だ。お嬢さん、少し待っていてくれ」
おじさんは荷馬車を降りると家に入っていき、しばらくするとパンパンにふくらんだ、革製の大きな肩掛け鞄を持ってやってきて、その鞄をヒーラギに渡そうとした。
「こんなに貰えません」
「いいんだ。あのままワシは夜まで帰れんかった、お礼だ受け取ってくれ」
ヒーラギはおじさんから鞄を受け取り、中を覗くとお肉、野菜などがたくさん入っていた。
「こんなに、たくさんの食べ物ありがとうございます……あ、あの、私にできることないですか? 治療しかできませんが」
「お嬢さんの治療か――ここは医者も遠くて来てくれん、みんなが喜ぶな。そこで待っていて、村のみんなにも声かけてくるよ」
「はい、お願いします」
おじさんの声掛けで集まった、村の人達を私は治療した。みんなにお礼を言われ、更にお野菜、おにぎり、果物を貰い。革製の肩掛け鞄の中身は、治療が終わる頃には食べ物でパンパンに膨らんだ。
「ありがとう、久しぶりに腰が痛くない」
「膝の痛みが消えたよ」
「こんなに体が軽いのはひさしぶりだ」
村の人々はヒーラギの治療を喜んでくれた。その姿を見てヒーラギは城で祈るのも大切だけど、もっと外に出て人々の治療をしたかった。
「ありがとうございました」
村のみんなの治療を終えたヒーラギは、お礼を伝えて、アーク村を後にした。トランクだけだった手荷物が、村のみんなからのお礼で増えたけど平気だ。
だって、ヒーラギは騎士団の遠征に重い回復薬、薬が入った医療箱を担いで参加していたのだから。
「日もまだ高いから、もう少し歩こう」
と、のんびり畑道を歩くヒーラギ。
そんなヒーラギの瞳に黄金色の稲穂が見えた。
――あれが、おじさんが言っていたコメが採れる田んぼかな? とよそ見をしていたヒーラギは足元に落ちている、白くふんわりした物をムニッと踏んだ。