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 ムニッと、ヒーラギに踏まれた白いフワフワは『キュウン』と力なく鳴いた。


「……ひゃっ、え、子犬? だ、大丈夫?」

「キューン」


 ヒーラギが踏んでしまったのは、白いフワフワな子犬だった。よく見れば、その子はお腹に怪我をしていて苦しげに息をしている。この辺りに住む、犬同士の争いに負けたのか、はたまた猫にでも負けたのかな。

 

 お腹のキズを治そうとしたヒーラギに、子犬は唸り声をあげ威嚇した。だけど、この道はいつ馬車、荷馬車が通るわからない畑道だ。


 このまま、この子をここに置いていけない。


「お願い、あなたの怪我を私に直させて」

「キュー、キュー」


「っ――!」


 触ると、やめろと言わんばかりに噛み付く、小さなモコモコをヒーラギほ無理やり抱き上げ、道外れの木陰で聖女の癒しの力を使いお腹のキズを治した。


 痛みがひいて、楽になったのだろう。

 子犬は、不思議そうに首を傾げた。


「キュ?」

「キズが痛くなくなった? もう少しで、このキズが癒えるからね」


 でも、この子のお腹のキズ。鋭い爪のようなもので引き裂かれていて、キズを治すときかすかに瘴気を感じた。


 コレは騎士団の遠征で、魔物のキズを直すときに感じたことがある……この子は犬や猫ではなく、魔物に襲われたんだ。


「うそ? こんなに早く?」


 カザール国を覆う結界が薄れてしまった? ヒーラギは空を見上げ結界を確認したけど、結界がまだ薄れた気配はなかった。


(これなら、まだ数日は持つわ。あとは新聖女が、祈りを捧げれば保たれる)

 

「キュ?」

「あなたのキズは治したから、動いても大丈夫よ」


 ケガが治った子犬はクリクリな瞳で、キュンと可愛く鳴いた。


「他に痛い場所ない?」

 

「キュン」

 

「ないのか、よかった。お腹すいていない? チーズを挟んだパンを食べる? 私の食べかけだけど……」

 

「キュン、キュン」


 食べると鳴いたので、パンをちぎって渡すと美味しそうにかぶりつき、よほどお腹が空いていたのか子犬は一瞬でパンを平らげた。


(おお、この食べっぷりは。私と同じ食いしん坊かもしれない)


ヒーラギは食いしん坊仲間が出来たと喜んでいたが、まだ足りないのか、子犬は残りのパンにもかぶりついた。


「あ! 君もよく食べるね。私にも少しちょうだい」

 

「キュン」


 残りのパンは半分こにして、仲良く食べてしまい。

 次は腰の痛みを治したおじさんに貰った桃を、ふくらんだカバンから取り出し。携帯ナイフで小さく切って渡すと、子犬は美味しそうに桃を食べた。


「桃、美味しい?」

「う、美味い! もっとそれをくれ!」

 

「もっとくれ? って、え? ……ええ⁉︎」

 

(この子。いま、人の言葉を話さなかった?)

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