ブラン(後)
ブラン、二十四歳のとき。
父さんと兄弟が視察中、何者かに襲撃を受けたと情報がはいる。詳しく真相を調べると、魔王軍の配下となっていた友、ヤンの指揮の元だった。怪我をした父達は癒しができる俺を王城に呼んだ。
一応、父親だからと……心配して向かえば、三人に威圧的に見下ろされ。
『ブラン、私たちの傷を癒せ』
『それぐらいしか出来ないんだから、早く怪我を癒やせ!』
『怪我を治しやがれ』
『私の旦那と、息子たちの傷を癒やしなさい!』
彼らの態度は――血の繋がった俺に対する言い方ではなかった。この人たちと俺は家族ではないんだ。お前達がその態度なら……悲しいが、俺もそう思うことにした。
お前達が、怪我を負ったのは自業自得。
俺はポーションだけを置いて帰った。
それから何度も屋敷へ呼ばれたが、会いに行かず、ポーションだけを送った。俺の家族は母さんだけ……人間の国から助けだす。
ロンは人間の国で、仲良くする人ができたと言った。
それは国境付近の屋敷に住む、年配の夫婦。俺も魔力を扱えるようになり、子供の姿なら人の国に入れる様になった。
一年をかけて、王城の内部を調べあげた。
母さんは起き上がることができず、ズッとベッドに横たわっていた。
早く、早く助け出さなければ!
何度も計画を練り、ロンとスラで母さんを助け出すことができた。急いで、老夫婦がいる屋敷に連れて行き事情を話すと。夫婦は奥の部屋が空いているから、幾らでも使いなさいと優しい言葉を言ってくれた。
(まずい、母さんの力がこんなにも弱っている――人間は母さんに無理をさせていたんだな)
俺は母さんを癒そうとしたが……母さんの癒しの力は強く、俺の癒しの力を跳ね返した。栄養が高い食事をあげ、体を拭き、母さんの体力が徐々に回復するのを待つことにした。
人間の王は消えた聖女の事を探すことなく……亡くなったと国民に報告した。
それから、5年の時が流れ――老夫婦の屋敷へ遊びに来た人間の子供。はじめは知らない人間がいると、遠目に見ていたけど……彼女を見ているうちに、気になりはじめた。
ロンと一緒に挨拶をして話すと、花が咲いたように彼女は笑った。
(可愛い、ヒーラギと言うのか)
だが、俺とヒーラギは歳がかなり離れているが……いまの俺は子供姿だからと、ヒーラギ、弟と遊び、幼な頃に満たされなかった心を――俺は彼らで満たした。
ここの人達は……見ず知らずの俺に優しくしてくれる。父さんと、弟達もこうだったらよかったのにな。
こうして迎えた、運命の日。
俺のミスで、魔物を人間の国へ入れてしまった。
どうにか守ろうと戦い、俺は深いキズを負ったが、みんなを守れたし母さんも助けられた。
もう『死んでも悔いはない』と思っていた。
その俺の側にヒーラギが駆け寄り、大粒の涙を流した。
『いや、死なないで!』
と、叫んだ彼女の体は光り、俺のキズを治した。
その力の元はすぐにわかる。これは母さんの癒しの力だ……どうしてかわからないが、癒しの力がヒーラギに移った。
ブラン、二十五歳の時だった。
それから半月が立ち、母さんは癒しの力を失ったせいか、俺の癒しの力で起き上がれるまで回復した。だが、癒しの力を受け継いだヒーラギは……母さんの後にその国の聖女となった。
聖女となった、ヒーラギの結界は無敵だった。
器用なロンすら、中に入れない鉄壁の守り。
俺達は悩み、闇雲に駆け回った。
そして久しぶりにヤンと再会して、魔王ならあの結界を壊せるかもしれない、それに賭けたが魔王ですら結界は壊せなかった。
何もできず、時だけが過ぎる。
魔王は諦めず、人の国へ何度も魔物をけしかけた。
その魔物を討伐にきた人間の中に『聖女ヒーラギ』がいたと魔王の配下に聞いた。
――ヒーラギ!
母さんから力を受け継いだときから、5年の月日が経ち12、13歳となった彼女は。大の男達に文句を言われながらも、癒しの力を使っていた。その話に俺は我慢後できず、迎えに行こうとしたがロンに止められた。
『お前がいま、人間に捕まればヒーラギに会えず殺される』と、俺を止めた。ロンは情報を収集すると彼女には婚約者がいて、ソイツにも酷い目にあっていた。
『俺は、ヒーラギを助けたい』
俺達は策を練った……新しい聖女が現れればいいんじゃない? ……ロンがなにげに言った言葉。俺はそれだと古文書などを調べて知る。――大昔、異世界というところから"召喚の儀"で聖女を呼び寄せたと、そこには記されていた。
だが、召喚の儀には莫大な魔力がいる。
魔王とも話し合い、異世界から呼び寄せることにしたが、その準備にさらに時が過ぎていた。
魔力が集まり、魔王、ロン、俺とでおこなった"召喚の儀"は無事に成功して、アリカという少女が召喚された。
アリカの協力を得て、彼女は人の国へと侵入した。
しばらくして、ヒーラギの婚約者は自分を気に入ったと、アリカから報告がはいる。
これでアリカが新聖女となれば。あの婚約者はヒーラギを必要としなくなり、ヒーラギは聖女としての役割を終える。ヒーラギの祈りが消えて、結界が弱くなったころに魔王軍が城へと攻め入る。
異界から、呼び寄せたアリカには魔力が貯まるまで、この世界にいてもらい。俺達の魔力がたまった頃、元の世界へと送り返す手順だ。
――全てうまく行っている。
『彼女に会いたい』
俺はヒーラギに早く会いたくて、無理やり結界を超えて、会いに行った。
舞踏会の夜。祈りを捧げるヒーラギは綺麗だと、見惚れているうちに……彼女の姿を見失った。
『バカか、俺!』
どうする……いや、ヒーラギはあの老夫婦が住んでいた、国境の屋敷に来るんじゃないかと。屋敷に向かう途中、無理をしたツケが周り、傷口が開き、魔力不足で道端に倒れた。
そこに、たまたまヒーラギが通り、俺は拾われた。
彼女にケガを癒やしてもらい。
俺は手筈通り、嘘を吐き。
ヒーラギを国へと、招いたんだ。




