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ブラン(前))

 雪狼族――俺の母さんが生まれた北の大地。


 元々、雪狼は何らかの力を持って生まれてくる。母さんは五人兄弟の中で、癒しの力と守りの力を持って生まれる。


 母さんは人々を癒す、癒しの巫女として育った。


 中央大陸を収める黒狼族。年に一度開かれる当主会で父さんと母さんは出会ったらしい。黒狼の国王は一目で母さんの能力を気に入り、第一王子の嫁にしたいと白狼の王に申しでた。


 白狼の王は縛ったが作物があまり育たない、雪深き北の大地と、多くの作物が育つ豊かな中央大地。


 民を、白狼族を支援をする約束を交わし、母さんは父さんの婚約者となり、王太子となった翌年に結婚した。

 数年後――俺が生まれて、父さんは黒狼の長となった。


 戦争が好きではなかった前国王と父さんは違った。

 多様な力を持つ白狼を使い、父さんは戦争を起こした。



 ブラン0歳のとき。


 二年を費やして南のエルフ国、西の竜人国、東の鬼人国と手に入れ黒狼大国となる。大きくなった勢力は豊かな大地を持つ、隣国の人間の国が欲しくなる。


 しかし、人間の多様な武器、勢力の前に黒狼は敗れた、人々は何もできない亜人達を力無き者を、大量虐殺を繰り返し奴隷として扱った。


 全てを失った父さんは、ただ自分の命を守るため"癒しの巫女"俺の母さんを人間に差し出していた。

 



 ブラン五歳のとき。


 父さんは妻の座が空くと直ぐ、元々の恋人を嫁として向かい入れた。その翌年、俺の弟となる双子が生まれる。父さんは愛する嫁との間に生まれた、子供を次の長にしたいと考えた。


 


 そうなると長子の俺が邪魔になる。


 このときの俺は弟達と対等に扱われず、愛に飢えていた、良心の言うことを素直に聞き入れていた。父さんから領土を1つやるから、自分の力を試しなさいと住む家を追い出された。


 ブラン、十五歳の時だ。


 俺が父さんから贈られた領土は、いくどの戦争で体を負傷した者、村も町で口減らしのため追い出された者、親のいない者が集まった国の端にある寂れた村だった。


 その村でエルフのロンと、竜人のヤンと幼馴染のリコと出会った。ロンはエルフと人間との混血の種族ハーフエルフ、竜人の二人は戦争で両親を失っていた。


 年上のロンと、同じ歳のヤンと二歳下のリコと力を合わせて、食べ物が少ない村を再起させようと奮闘した。魔力を器用に扱えるロンと、有り余る魔力を暴発させる俺……俺はロンの下で、魔力の扱い方を習い始めた。



 その一年後、竜人のヤンとリコが村で初めての夫婦となった。この日、村で盛大に祝った。

 


 ブラン二十歳のとき。


 順調に進む村の復興。俺の双子の弟達は、兄の俺が落ちぶれ、惨めな思いをしている姿が見たくて、村に偵察へやって来た。


 だが、弟達の思惑が違った。

 

 村で仲間と楽しく働き、暮らす俺に腹を立て暴れた。

 このとき、弟が放った魔法は運悪くリコに直撃して、リコは負傷する。まだまだ暴れ足りない弟達は家を壊し、畑は荒らし再建途中の村は崩壊した。


 跡形もなくなった村を見て、弟達は満足したのか笑いながら村から帰っていった。

 

 このとき、負傷したリコは両目を失明してしまった。

 その両目を俺の癒しの力で治そうとしたが、けっきょく彼女の瞳は治らなかった。――残ったのは村の住民達の傷、踏み荒らされた大地だけ。


 翌日、ヤンはリコを連れて村から姿を消した。

 


 +


 

 ときは十六年ほど遡る。癒しと守りの白狼族を手に入れた人の国王。黒狼国を倒して、次に狙ったのは魔族達が住む魔王の国。


 国王は密偵を送り、魔王など幹部が不在の日に戦争をふっかけた。もちろん癒しと守りの巫女を使い、魔族達の力を抑えて王は魔族軍に勝利する。


 このとき魔王城に残っていた、魔王が最も愛する妻を連れていった。この魔王の嫁には不思議な力があったのだ。彼女の血が皮膚から流れ落ちると、コロンと真っ赤な宝石に変わる……その不思議な宝石は人々を魅了して、高価な値段で取引された。


 魔王の嫁、彼女の一族はストーン族。


 その国の王の涙は透明な宝石となった、生まれた子にもその力は宿るとされていた。ストーン一族は宝石を欲した者達に滅ぼされ、消えた悲劇の一族。


 彼女は最後の生き残りだった。


『ワレの愛き姫を返せ!』


 怒りに、人間の国へと攻め入った魔王は癒しと守りの巫女の結界を破り、愛する者を助ける前に致命的な傷を負い死んだとされた。




 ブラン、二十三歳のときだった。

 スラと出会ったのも、このとき。


 人間が癒しの聖女を使い、魔王を倒したと俺の所まで話が届く。癒しの巫女から呼び名は変わっていたが――聖女の容姿を聞き……病気で亡くなったと、父さんから聞かされていたが、白い髪と、琥珀色の瞳は自分と同じ。


 もしかして、母さんは人間の国で生きているのか?


『ロン師匠、その聖女を一目見たい……もし、その人が母さんだったら助けたい』


 ロンはその願いを聞き入れてくれた。俺より、魔力の扱いが器用なロンは事情収集をお願いした。俺は何かの時のためにポーションなどの薬作り、スラは……みんなの癒しだった。


 やはり、人間の国に母さんがいることが分かった。

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