第12話 銀の街 後半 ③
月夜に照らされる部屋の中でノエルは呟く。
「せいじょ・・・せいじょ・・・かわって・・・かわって・・・」
――なんで私が聖女に選ばれたんだろうか
3年前 7歳の時。
身よりがなく教会に引き取られ、この街にきた。
この街は、聖女によって守られ、魔女や魔族が決して入ってこられない最も安全な街だという。
シスターとして日々祈りをささげていた。
そんないつもの変わらない日に祈っている時だった。
何かが聞こえる。はっきりとは聞こえないが、何かを言っている。
「ノエル。どうしたの?」
声をかけられたのは、カリーナだった。この街に来てから、いつも一緒にいる親友だった。
「カリーナ。私に何か言わなかった?」
「何も」
「そうなの」
それからだった。
聞こえる日々が増え、少しずつ言葉がはっきり聞こえるようになった。不気味だったけど、なぜか落ち着いてしまう。とても優しく包まれるような綺麗な声になっていった。
そんなある日。
「目覚めなさい」とはっきり聞こえた時だった。
手の中でキラキラと小さな星が輝くように光った。
一番にカリーナに見せた。
「すごいよ!ノエル!聖女様になれたんだよ」
カリーナは喜んでくれた。
「聖女ってすごいことなんだよね」
「そうだよ。私たちから魔女や魔族を守ってくださる方なんだから」
「私が・・・」
信じられなかった。自分が聖女になれたということに。
シスター長にも伝えてから翌日のことだった。
「初めまして。ノエル様。私はジルと申します」
ジル司祭がいらっしゃった。
ジル司祭は、聖女の元でお仕えし、主に研究をしているらしい。
「おめでとうございます。あなたは、白女神様が聖女として選ばれたのです」
「本当に私がですが・・・」
「はい。しかし、聖女として目覚めたばかりです。私が導かせます」
「こんな私でも聖女になれば、みんなのお役に立てますか」
「はい」
その言葉を信じて、ジル司祭の元で聖女の修行をすることになった。
聖女として修行に当て来る日が続いたが、2か月経っても手の中に『光』の粒を集めるしかできなかった。
ジル司祭の指示通りにやってもできなかった。どんなにやっても変わらなかった。
周りから本当に聖女なのかと疑わしい時もあった。
ジル司祭やみんなを困らせてしまった。
期待に答えられなくてごめんなさい。本当に分からない。どうすればいいか。
そうだ。聖女様がいる。聖女様であれば、分かるかもしれない。
ジル司祭にお願いするも。
「申し訳ございません。聖女様は魔女狩りに出かけています」
「お帰りになりましたら、お会いしてもよろしいでしょうか」
「はい、お戻りになりましたらね」
ジル司祭に約束しても、会うことはなかった。
いくら言っても「まだ戻ってきません」「魔女狩りに行っている」ばかりで会えなかった。
悩みは解決できず、どうすればいいのかも分からず、落ち込む日々が続いた。
そんなある日だった。
「タスケテ・・・タスケテ・・・・」
以前と聞いた声とは違う。
誰だろうか。
その声に辿っていけば、広い部屋に着いた。
神殿のような造り。天井や壁が透き通った壁で日が当たるようになっている。くぼんだ中央に四方八方に水路に銀の水が流れている。その中央に銀の水の中に宝石が輝いていた。
その宝石から声が聞こえる。
近くによれば、宝石は小さな山のように盛り上がり、宝石の中にもさらに光輝いている。
「タスケテ・・・タスケテ・・・」
その光から声がはっきり聞こえる。
「助けてほしいの・・・」
宝石に触れた時だった。
光が弾けた。あまりの眩しさに下がった。
少し手がしびれた。それに妙な感覚に襲われる。
「何だろう。今の・・・」
自分の手を見ても怪我した様子もなかった。
「ここにいらっしゃったんですね」
声をしたと思えば、ジル司祭だった。
「あの・・・」
「送りましょう」
ジル司祭と共に部屋から出た。
暗い中、血走った目で見つめられる。
「カワッテ・・・カワッテ・・・カワッテカワッテ」
銀色の輝く宝石の手が伸びていく。
怖い。逃げなきゃ。
「ニゲナイデ・・・イカナイデェええええええええええええええええええええええええ!」
声が響く。
前から宝石の手が胸を掴まれる。
後ろから逃げていたのに前から宝石の手が伸びてきた。
掴まれた腕から宝石に侵食していく。
「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
目を覚めれば、自分の部屋だった。
夢を見ていたようだった。
それからだった。寝ても同じ夢を繰り返す。怖くて眠らない日々が続いた。
「大丈夫ですか」
ジルが声をかける。
ベッドの中で布団にくるんでいた。
「カリーナ・・・カリーナといたい・・・」
「分かりました」
ジル司祭はすぐにカリーナを呼んでくれた。
「どうしたの。ノエル?」
心配そうに声をかける。
「怖い夢を見たの・・・」
小さく体が震える。
「一緒にいて・・・」
カリーナの手を優しく掴む。
「いいよ」
その夜だった。




