第10話 記憶の魔女たち⑤
向かった部屋は、景色が変わった時にいた部屋で、あの実験を行っていた部屋でもある。
壊れた陣が再構築し、魔術が発動している。魔女の『呪い』が原因だろうか。
蹴り飛ばしたノノエの体が禍々しく溶けていく。
「何これ!やだ!やだああああああああああああああああ」
ノノエが泣き叫ぶ。
魔女が不可解なことに恐れている。
「ナナエ!ナナエええええええええええええええええ」
ノノエが肉塊した手を伸ばしていく。
その先には頭がないナナエに掴む。槍ごとナナエを食らいながら手元に戻していく。
ナナエを取り込んだノノエは、小さかった体が肉塊に膨らんでいく。顔が崩れていくノノエは泣きながら見つめる。
「ナリカケ?」
魔女の共食いは、ナリカケになる傾向がある。深刻すれば、黒女神になると言われている。
なぜ急にナリカケになった。今は考える場合ではない。どっちにしても、退治しないことには変わりない。
ロザリオを懐から引き抜き、床に刺す。ロザリオに白い炎を通して、床一面に白い炎が広がる。
陣とナリカケを共に浄化させる。
白い炎に纏ったナリカケがジャンヌに近づく。
ナリカケが手を伸ばしてくるが、銃声がなった瞬間に顔の手前で止まった。それはナリカケの頭に穴が空いた。
それっきり止まったナリカケは、白い炎と共に消えていった。
残ったのは、浄化された陣だけだった。
先ほどまで陣は床が割れていた。魔女の『呪い』に触れたのか、陣が再構築して魔術が発動し、魔女をナリカケにした。
それになぜ魔族がこの施設に現れたのか。
考えられるとしたら、人為の魔族化。
急性の魔族化は、『呪い』に過剰摂取か魔女によるものしか起きない。それを人間、魔術の力で起こそうとしている。その実験体になったのかあの魔族だろう。
魔女に見せられたのはおそらく過去。アキセの過去であれば何かを知っている。けど、アキセがあそこまで怒っていたというと。
――まずい。
忘れさせるために奪う魔力で記憶を奪われる。『光』を盗まれるならできないはずがない。
逃げようとしたが、アキセが瞬時にジャンヌの額を触る。
「ちょ・・・」
ジャンヌは気を失う。
体制を崩すジャンヌをアキセは片腕で受け止める。
アキセの手には、小さな玉が収まっていた。
「ちょっとこれは。知られたくないんでね」
アキセはジャンヌから奪った記憶の欠片を地面に落とし、踏み潰した。
「あれもな」
アキセが銃を向けた時だった。
ギィーと高い鳴声がしたと思えば、陣にノレッジが集まってきた。
四角の嘴を持っている鳥。書館の魔女ラプラス・ライブラーの使い魔で知識を奪うために世界中に飛んでいるという。
そのノレッジが陣を床ごと食べている。知識を奪うのは、人間の脳だけでなく、陣だけでも対象のようだ。
底が見えるほど、陣はノレッジが食べられ、部屋を出で行った。
「回収するのが遅い」
アキセは呆れて言う。
「は~い。お疲れ」
くうそうの魔女ルシア・ファンタジアの手にノレッジが集まってできた本が出来上がっていた。
「薄いな」
薄い本を見つめる。
「あらあら、空想の魔女ルシア・ファンタジアじゃ~ん」
ルシアが振り向けば、かざなりの魔女ウィム・シルフだった。
「君でしょ。今回の主犯」
ルシアは声をかける。
「ええ。個人的に知りたいことがあったので」
「前から君に話をしたかったんだよね」
「あたいには何も用事ないけど」
「君さ。ちょいちょい絡んでくるけど何なの?」
ルシアはウィムに尋ねる。
「あ~あれ。あいつらにからかいたかっただ~け」
ウィムは語尾を伸ばして言う。
「じゃあ、あの魔族も離したんだ」
「ええ。地下にいたの。面白くなるかなって思ってね」
「あっそ」
ルシアは、ぶっきらぼうに返す。
「それにあんたたちの計画には興味ないの」とウィムがはっきり言う。
「知っているんだ」
ルシアは鋭い目つきをする。
「風が流れていれば、耳に入るもの」
「だったら、邪魔しないでよね」
ルシアが強めに言う。
「邪魔?だから、興味ないって。魔女みんな思うわよ」
「ならいいんだけど」
ルシアは不機嫌に言う。
「じゃあ。少し手伝うよ。知りたいヤツがいるんでしょ」
ウィムはイタズラな笑みを見せる。
「見~つけた」
ウィムはある者を近づく。
「ねえねえ。話があるんだけど」
ウィムは話かける。




