第10話 記憶の魔女たち①
アキセは森の中で考えていた。
パウロと名乗っていたブルーノは誰かに殺された。
あの手を見るまで忘れていた。名前を変えて商売していたとは。しかもあの手を使って。
あの男にはこの手で殺したかった。今でも怒りがこみあげてくる。
「久しぶり~」
唐突に現れた風鳴の魔女ウィム・シルフだったが、無視して行く。
相手する気もない。
「ちょっと無視しないでよ。ねえ。ねえ。ねえ。ねえ。ねえ。ねえ。ねえ。ねえ。ねえ。ねえ。ねえ。ねえ。ねえ。ねえ。ねえ。ねえ」
「なんだ!」
あまりにもウィムがしつこかったので、切れ気味に言う。
「何、怒鳴るのよ」
ウィムが不貞腐れる。
「おまえがしつこいからだ!」
「パウロを殺した相手を気にしているの」
――こいつ
「それはどこ情報だ?」
「私は風の魔女よ。風が吹けば、知らないことはないのよ」
イタズラな笑みをするウィム。
「そうか。タダで教える気がないだろう」
「どうしようかな。この後少し付き合ってくれたら考えてもいいわよ」
ウィムはあざとく答える。
「魔女と付き合い切れるか」
知りたいところだか、魔女とまともに相手できない。
面倒だから、『飛ばしコイン』を使って逃げようと手元に召喚したが、いつの間にか消える。
「あれ?」
「もらうね」
ウィムの手にはコインを持っていた。
「おい!」
『飛ばしコイン』を奪い取ろうとしたが。
「おいで~」
ウィムが声をかけた途端に正体を確認せずに顔に衝撃が入る。
あれからアキセとは会っていない。
それはそれで平和なので、もう気にしないことにした。
このままのんびりといこう。
「こんなところにいた」
ウィムがいた。
無視する。一気に気分が下がった。
「何よ。彼氏と同じ反応しちゃって」
アキセに会ったのか。けど気にしない。
「ねえねえ。いいところ連れてって上げる」
それでも無視をする
「本当につれない」
パチッと何かを飛ばした音がした途端に景色が変わった。
気が付けば、どこかの建物の中にいるようだ。
「どこよ。ここ」
魔女の力では、『光』によって浄化される。どうやって飛ばしただろうか。
ジャンヌは、長い廊下にいた。
白衣を着た人が歩いていた。ぶつかりそうになるが、透き通ってしまった。
「幻?」
ウィムの呪力ではない。別の魔女の仕業。幻を使う魔女だろうか。
幻が触れても消えない。だとしたら、誰かの『タタリ』か空間の中かもしれない。ウィムがここまで連れてきたとしたら。
ウィムの目的を考えようとした時だった。
「リカルド」
女の声がした。
リカルド?
「ローラか」
茶色の男が答える。
「これからどこに?」
「材料が届いた。それを見に」
「私も行く」
リカルドとローラは一緒に歩いていった。
以前と会ったリカルドとは別人だろう。見た目と違う。同じ名前をつけられることはよくあること。
急に景色が変わる。
建物が暗かった。
奥の部屋から声がした。
声をした方へ行けば、広い部屋に白衣を着た人が集まっていた。部屋の中央に大きい陣が刻んでいる。その上に両腕を失っている者が倒れている。体を反対に向いているため、顔を認識できない。
「賢者様」
白衣の男が話しかける。
賢者様は、年取った老人だった。
確か賢者は、魔術師の中でも最高位に当たる。
「準備ができました」
「早速、取り掛かれ」
賢者の視線が陣に向いている。
「もう君への実験はこれで最後だ。最後くらいいい結果を見せ給え。リカルド」
リカルドとは先ほどローラと話していた男だろうか。どういうことだろう。
そして、陣が光り、実験が始まった。




