第13話 再出発⑤
夜になってもコルンは追いかけてくる。
動けない体を無理やり動かし、逃げるだけで限界だった。
「一日中逃げ回って~いい加減しろ~」
コルンの鉄人形が追いかけてくる。
「しつこいんだよ!」
銃を撃っても、実弾では歯が立たない。まだ銀の血の影響で鉄人形を破壊できるほどの魔術が使えない。
「そんな弾で効くか!」
鉄人形の手が発射された。
走ろうにも迫ってくる鉄の手の方が早い。
避けられない。
鉄の手に掴まれ、コルンの鉄人形の元へと戻る。
「ぐふふふ。やったーこれで殺せる!」
コルンがやっと獲物を使えたように喜んで笑う。
「このまま握って潰してやる!」
握力が強くなってきた。
手が塞がり、魔術が使えない。指輪の中にコルンの鉄人形を破壊するものがない。このままでは握り潰される。
こんなところでしかもコルンに殺されるとは。
もう死の覚悟を決めた時だった。
「ぎゃ!」
コルンが悲鳴を上げ、急に倒れる。
その反動か、手から離される。
「なんだ・・・」
その時、目の前に誰かが立っていた。
顔を上げれば、銀の街以来会っていないジャンヌだった。
コルンの鉄人形が倒れたのもジャンヌの仕業だろう。
「あれ、何してるの?」
「どう見ても俺が危ない目に合っているだろうか」
――わざとなのか。この女は。
少しキレ気味に言う。
「あ!ジャンヌ!」
コルンの鉄人形が指を指す。
「やっぱりコルンか」
ジャンヌは呆れたように言う。
「邪魔しないで!こんなチャンス滅多にないんだから。殺させてよーー」
「コルンの気持ちは分からないが」
そこは同情しないで。
「悪いけど、殺すなら私の用事終わらせてからで」
ジャンヌは白い炎をまき散らす。
放った白い炎でコルンから逃げ出せた。
「まだ完治されていないの?」
木に背中を預けているアキセに目を向ける。
「あのな。俺は半分魔族だぞ。あの銀の血を直接受けたんだ。俺だってここまでかかるとは思わなかった」
不機嫌にアキセは言う。
あれから一か月は立っている。重症だとは分かっていたが、奪う魔力で『光』を奪い、回復を早めていると思っていたが。
「ねえ。あの約束生きてる?」
「約束って、銀の街でしたことか」
「まだ、あの男を殺していない。約束は終わっていない」
「あのロリコン司祭をまだ追いかけるのか」
アキセに胸倉を掴む。
「あんた。見つけたらいつでも襲撃できるって言ったよね」
脅すように言う。
「確かに言ったけど・・・」
「私は絶対にやり返す女よ。あんただって知っているでしょ。私のこと」
「はい・・・十分に知っていますよ」
「だったら、あんたから言った約束を守りなさいよ」と胸倉を雑に離す。
「ということは、あの最後の約束も守ってくれるってことか」
「そうなるね」
肩を竦める。
でも、この男は使える。動かすには、あの約束を守るしかなかった。
「いいだろう。俺もまだ聞きたいことがある」
アキセも立ちあがる。
「その前に君が看病してからいい」
「あと三日で完治しろ」
「それは難しい・・・」
これ以上看病するためにそばにいるのも嫌。
「あんたの魔力ならもっと早く治るんじゃないの」
アキセが一瞬固まった。
「そういえば、右手」
怪我は治った様子だか。
最古の魔女でさえ、直接触れれば、怪我を負うほどの『光』を持つ。リリムであるアキセが、何かしら影響はあるはず。もしかしたら、浄化され、魔力を失う可能性もある。
「宝石心臓を直に触れたにしても・・・」
その時、アキセがジャンヌの胸を触る。しかも掴むほどに。
思いっきり殴り返す。
「真面目な時に・・・」
拳に怒りを込める。
「ほら、ジャンヌから『光』が奪えた」
両手にエンジェライトを持っていた。つまり、あの一瞬で両手で魔力を使ったということ。
「俺は抗体があるって言ったろ。健常だ」
アキセはへらへらと言う。
「だとしても胸を触って見せるのはどうなのかな」
「いいじゃねえか。久しぶりに触りたかったし」
「次やったら、もう約束を破棄するから」
「んだよ。俺がいないと何もできないくせに」
「そこまで弱くありません!」
口調強めにいい、ジャンヌは歩き出す。
「さて、君の復讐に付き合いましょうか」
アキセもついていく。
「その前にあんたの完治が先でしょ」
本当は組みたくないけど、ジル・ド・レイを殺せるなら手段なんで選ばない。
私の復讐を終わらせるために。
朝日と共に歩き出す。
第2章 完
「うわああああああああああああああああああああああああああん。今回も殺せなかったあああああああああああああああああああああああああああ」
朝日に照らされた鉄人形の頭の上でコルンは泣いていた。
「また失敗しちゃったのね」
風鳴の魔女ウィム・シルフがコルンのそばに寄る。
「も~殺したいいいいいいいいいいいいいいいい!」
さらにコルンは泣き叫ぶ。
「そうだ。コルン。君の空き巣に使うからさ。発明品を頂戴よ」
「あいつを殺してくれるなら、いいけど」
涙目になったコルンは言う。
「何がいいの?」
「そうね」
ウィむはイタズラの笑みをする。




