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『高卒で人生終了?――伝説の投資家に資本主義の裏ルールを学んだ俺、4年で資産1億円を築いて元同級生を見返します』  作者: 月神世一


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77/88

EP 2

お盆休みの帰省費用に悶絶する社畜と、同級生の内定先企業の「大株主」へ君臨する資本家の逆転劇

 八月上旬、列島を襲う強烈な太平洋高気圧により、工場の敷地内は呼吸すら息苦しいほどの猛烈な熱波に包まれていた。

 蝉の鳴き声が耳をつんざく中、第一工場・社員食堂のエアコンは完全に悲鳴を上げ、生ぬるい風が淀んだ空気をかき回しているだけだった。

 だが、正午のサイレンが鳴り響いた食堂の片隅からは、猛暑の熱気すら凍りつかせるような、生ける屍の断末魔が響き渡っていた。

「……ぎゃあぁぁぁっ! お盆休み! 連休があるってだけで、なんで俺の口座から金が全部蒸発するんだよぉぉぉっ……!!」

 パイプ椅子から崩れ落ち、床に両手両膝をついて額を打ちつけていたのは、同期採用四年目の山岸だった。

 今年で二十一歳になった山岸だが、作業着の背中は汗で塩を噴き、目の下には消えないドス黒い隈が張り付いている。

 手元のテーブルには、新幹線と高速バスの予約画面が表示されたスマホが、熱暴走の警告マークを出して転がっていた。

「おい山岸、床で頭を打つな。熱中症で倒れたら救急車を呼ぶ羽目になるぞ」

 俺――倉科湊が、保温ランチジャーから氷でキンキンに締めたスダチ香る稲庭うどんと、母が持たせてくれた若鶏のレモン南蛮漬け弁当を取り出しながら声をかけると、山岸は涙と鼻水を撒き散らしながら俺の作業着の裾へすがりついてきた。

「熱中症で運ばれた方がマシだぁぁぁっ!

 先月の夏のボーナスから、自動車税の滞納分とリボ払いで手元に残った金……たったの【三万五千円】だっただろ!?

 それなのに……来週からのお盆休みで実家へ帰省しようとしたらさ……

 新幹線の往復チケット代で【二万八千円】、地元の親戚の集まりに持っていく菓子折り代で【五千円】、地元の悪友どもからの『帰省飲み会やるぞ!会費六千円!』のLINE通知が一斉に届いたんだよ!

 完全にマイナス四千円! 実家に帰るだけで破産確定だ!

 新幹線代が払えねえから、片道十時間かけてエアコンの効かない軽自動車で高速代ケチって下道走るしかねえんだぞ!?

 手取り十三万の安月給で、なんで年に二回の帰省すら命がけのサバイバルなんだよぉぉぉっ!!」

 周囲のベテラン工員たちも、手元の財布を覗き込みながら「お盆の帰省は新幹線代もホテル代もハイシーズン料金で跳ね上がるからな」「ガソリン代もリッター百八十五円超えだし、どこにも行けないよ」「連休明けは電気代の請求も待ってるしな」と、死んだ魚の目で安売りのカップ焼きそばをすすっている。

 俺は小さく息を吐き出し、水筒の冷たい麦茶を一口喉へと流し込んだ。

「山岸。中学生でもわかる、ダイナミックプライシングと盆暮れ消費の搾取構造の算数をしよう」

「算数なんか聞きたくねえ! 新幹線代をタダにしろ!」

「タダになるわけがない。

 お盆や正月、GWといった国民的一斉休暇は、交通機関や観光業が年間の利益を最大化するために運賃や宿泊費を一・五倍から二倍へ引き上げる【ダイナミックプライシング(価格変動制)】の最前線だ。

 価格決定権を持たない労働者が、企業から指定された画一的なカレンダー通りに移動しようとすれば、最も高いピーク料金を搾り取られるのは資本主義の基本原理だ。

 有休を柔軟に使って閑散期に移動する知恵も持たず、親戚や地元の同調圧力に屈して数万円の交際費を払う……。

 自分の口座残高が瀕死なのに、世間の見栄に付き合ってハイシーズン価格を払うのは、親孝行でも友情でもない。単なる【無計画な経済的自殺】だ」

「ぎゃあぁぁぁっ! 正論で俺の親孝行を切り刻むなよぉぉぉっ!!」

 耳を塞いで食堂の隅へと転がり込んでいく山岸。

 山岸は震える指でスマホを取り出し、自暴自棄に画面をスクロールした。

「……あ、そういや倉科! 東京の大学組の同級生たちの最新の就活事情、聞いたかよ……!?」

「同級生がどうした?」

「もう完全な地獄の身分差別が始まってるぜ!

 大手企業から内々定をもらった大学四年の勝ち組連中、いま東京で『内定者限定インターン研修』ってのに参加させられてるらしいんだけどさ……

 『うちの内定先は東証プライム上場のメガIT企業!』『俺は大手総合商社!』『メガバンクグループ!』って、大学のグループLINEで内定先の看板使ってマウント合戦の嵐だ!

 『高卒の工場勤務とか、初任給どころか生涯年収で俺たちの3分の1以下じゃんw一生油まみれの底辺で頑張れよw』って、わざわざ俺たちの名前出して嘲笑うメッセージまで送ってきやがったんだよ!

 佐伯凛が入院した閉鎖病棟や、金子拓海が放り込まれた無料宿泊所のことすら『あいつらは自己責任の負け組w』って切り捨てて、自分たちだけが選ばれたエリートだってワイン片手にイキがり倒してんだよ!

 あいつら……東京で大手に入った連中が、来年の春から偉そうにふんぞり返ると思うと……悔しくて夜も眠れねえよぉぉぉっ!!」

 他人の傲慢さに歯ぎしりし、パイプ椅子を殴りつける山岸。

 だが、その山岸自身も、手取り十三万円とお盆の帰省費用に怯えて震えているのだ。

(山岸、お前には見えていないんだよ。

 東京の内定者どもが大手企業の看板を誇ってワイングラスを掲げ、お前が新幹線代に泣いている横で……

 目の前にいる高卒四年目のライン工が、今夜どんな【資本主義の絶対的な階級の答え合わせ】を仕掛けようとしているのかがな)

 同級生たちが大学を卒業し、社会に出て自らの市場価値の低さに絶望するまでの、残り二百四十日。

 前話(第76話)で、シングル・ファミリーオフィス(SFO)を設立し、確定総純資産は【5億2,840万円】を突破。

 グループ月間純キャッシュフローは【月1億1,500万円】を記録している。

 そして――来春の「運命の卒業式」に向けて、俺たちが仕掛けていた【最も冷徹で圧倒的な一手】。

 それこそが、あいつらが「エリートとして誇る内定先企業群」に対する【大株主・戦略的パートナーとしての資本包囲網】だ。

「定時で上がるぞ。今夜、あいつらが頭を下げる相手の正体を確定させる」

 午後十七時零二分、定時退社。

 タイムカードをパチンと切った俺は、夏の夕暮れの心地よい風を切り裂き、地方都市の駅前に構えたミナト・ホールディングスのオフィスへと自転車を疾走させた。

 ◇ ◇ ◇

 午後十七時三十分、合同会社ミナト・ホールディングスのオフィス。

 ダイキンの最新エアコンが静かに二十四度の快適な室温を保ち、ディフューザーからはペパーミントとベルガモット、そして上品な白檀と完熟白桃のアロマがふわりと漂っていた。

「湊くん……! お帰りなさい!」

 扉を開けると、そこには白石詩織が待っていた。

 淡いアイスラベンダーの透け感のある上質なノースリーブブラウスに、清楚な純白のロングシフォンプリーツスカート。

 ショコラブラックの豊かな髪を首元ですっきりとハーフアップにまとめ、黒縁メガネを外した大きな茶褐色の瞳が、夕陽を浴びてキラキラと輝いている。

 すっかり垢抜けて洗練されたその姿は、二十一歳の美しい大人の女性としての気品と透明感をまとい、株式会社スタジオ・シオリの代表取締役としても誰もが息を呑むようなオーラを放っていた。

 部屋に入った瞬間にふわりと広がる甘い石鹸と柑橘のアロマに、俺の心拍計がピクリと跳ね上がる。

 デスクの上には、最新のM4搭載iPad Proと、氷を浮かべた特製の耐熱グラスが用意されていた。

「白石、待たせたな」

「ううん、全然待ってないよ! 湊くん、猛暑の中の工場のライン作業お疲れ様……!

 これ、外はすっごく焦げるくらい暑かったでしょ? 買収したハーブ園の無農薬ペパーミントと、初摘みの瀬戸内レモン果汁をじっくり抽出した『特製アイスハニーシトラスミントジュレティー』だよ! 冷たいうちに飲んでね!」

「サンキュー、白石。生き返るよ」

 グラスを受け取り、一気に喉を潤す。

 レモンのキリッとした爽快な酸味と、ミントの清涼感、そして蜂蜜の上品な甘みが、渇いた身体の隅々までじんわりと染み渡っていく。

 めちゃくちゃうまい。

 だが、俺は彼女の華奢な指先に、上場企業向けIR(株主向け広報)および大株主専用ダッシュボードUIの集中監修による微かな強張りがあるのを見逃さなかった。

(……いかんな。また俺の経営者センサーが過敏に作動している)

 俺はデスクの引き出しから、あらかじめ用意しておいた重厚な桐箱をスッと取り出し、詩織の前に差し出した。

 銀座の老舗名門サロンが完全予約制で一日二箱のみ仕立てた『最高級・完熟シャインマスカットと山梨県産白鳳桃の極上サマークリスタルパフェテリーヌ』と、高密度ナノグラフェン温熱と超音波ナノミスト温冷機能で指先から手根管までを深層ケアする最新型コードレスメディカルハンドスパ機だ。

「ほら、白石。これを受け取れ」

「えっ……!? これ、すごく大きなシャインマスカットと桃がエメラルドみたいに敷き詰められたパフェ……! それに、最新のハンドスパ機……!?

 湊くん、私がお茶を出しただけなのに、どうしていつもこんなに高価なものをくれるの……?」

「勘違いするなよ」

 俺は腕を組み、冷徹な仮面を必死に張り直して早口でまくしたてた。

「中学生でもわかる組織財務と資本業務提携に伴う人的資本BCP防衛の講義だ。

 純資産五億円(超富裕層)を突破した我が企業グループの最高アートディレクター(お前)が、盛夏の気温上昇によって浅指屈筋および手根管周辺の柔軟性を低下させ、これから執行される東証プライム企業群との資本提携発表用インフォグラフィックの最終ベクター検収を〇・四秒遅延させた場合、株主総会アジェンダへの反映遅延に伴う事業機会損失は【試算で最低でも月額八千万円】に跳ね上がる!

 シャインマスカットの高純度レスベラトロールと白桃のクエン酸による疲労物質の急速キレート排出、ならびにグラフェン温熱による指先の微細神経機能維持は、グループ中核クリエイターの【中長期的アジリティを担保するための戦略的盛夏BCP防衛および役員福利厚生投資経費】だ!

 お前への甘やかしなどではない!

 今夜生み出される何億円もの資本シナジー純利益から逆算すれば、このパフェテリーヌ代などROI(投資対効果)は【実に十億%】を超える!

 極めて合理的でドライな財務上の防衛支出だから、一ミリも遠慮せず胃袋に収めて手を突っ込め」

 息をつかずに言い切った俺の、世界一長くて過保護な言い訳。

 詩織は桐箱を胸にぎゅっと抱きしめ、目をパチクリさせて聞いていたが――やがて、その桃色の唇をふにゃりと綻ばせ、クスクスと愛おしそうに笑った。

「ふふっ……あはは! インフォグラフィック……? ROIがじゅうおくパーセント……?

 湊くんの言い訳、本当に世界一長くて……世界一甘くて幸せだよ!」

「な、何がおかしい。純粋な企業防衛だぞ」

「うん、そうだね! じゃあ私、湊くんの『防衛経費』で美味しく手をポカポカにして、十億パーセントのお返しができる世界一可愛いデザインを描き続けるね!

 ……あ、湊くん! パフェテリーヌ、ブドウがキラキラで桃がすっごくジューシーだよ! はい、あーん!」

 フォークに大粒のシャインマスカットとみずみずしい白桃の果肉をたっぷり乗せ、夕陽に照らされた満面の笑顔で差し出してくる詩織。

 至近距離から漂う甘美な果実のアロマ、彼女自身の透き通るような白い肌、潤んだ茶褐色の瞳。

「お、おい……自分で食える……」

「ダメー! 大株主着任の景気づけなんだから! ほら、あーん!」

 観念して口を開けると、パリッとした皮の食感とともに濃厚な果汁がジュワッと口いっぱいに弾け飛んだ。

 めちゃくちゃうまい。

 そして――心拍数が異常なスピードで跳ね上がり、俺の脳内プロセッサが完全に一時停止しかける。

(……ダメだ。この女の『あーん』の破壊力は、どんな大富豪の資産をもってしても一瞬で溶かされてしまう……)

「ふふっ、美味しい? 湊社長!」

「……ああ、最高だ。……よし白石、本題に入るぞ」

 ◇ ◇ ◇

「白石、今から中学生でもわかる、資本主義の究極の皮肉――【同級生の内定先企業の『大株主』へ君臨する資本支配構造】の算数をしよう」

 俺はノートPCを開き、ホワイトボードの前に立った。

「山岸の話によると、東京の内定をもらった同級生たちが、大学のグループLINEで『東証プライム大手の看板』を自慢して、高卒の俺たちを嘲笑っているらしい」

「……えっ? 湊くんたちのことを、まだ見下してるの……?」

 詩織が悲しげに眉をひそめた。

「ああ。あいつらにとっては、『東証プライム上場の大手メガ企業に入社すること』が人生の最高到達点であり、絶対的なステータスだからな。

 ……だが白石、あいつらが来春から手取り二十万で頭を下げて入社する、その東証プライム大手企業群……

 いま、誰のシステムを使って採用活動をしていると思う?」

「あっ……!」

 詩織がハッと息を呑んだ。

「そうだ!

 第72話〜第74話で導入した、俺たちの就活AI SaaS『ES-Master for Enterprise』と内定辞退防止モジュールだ!

 あいつらの内定先である大手IT企業、メガバンク系金融グループ、大手総合メーカーの人事部長たちは、

 俺たちの開発したAIツールのダッシュボードを開いて、あいつらの合否を決めたんだ!

 だが――それだけじゃない」

 俺は画面に、スイス系プライベートバンクと楽天証券法人口座の信託ポートフォリオを大画面に映し出した。

「前話(第76話)で設立したシングル・ファミリーオフィス(SFO)を通じて、

 手元の潤沢なキャッシュと有価証券担保融資(ロンバード・ローン)を駆使し、

 あいつらの内定先企業である東証プライム上場企業3社の株式を、市場およびブロックトレードで静かに買い集めた。

 その結果――」

 カタカタ、ターンッ!

 俺はエンターキーを叩き、金融庁の大量保有報告書(EDINET)の画面を提示した。

【合同会社ミナト・ホールディングス 大株主保有状況】

① 東証プライム大手メガIT企業(同級生の内定先筆頭):

・保有株式比率:【発行済株式総数の 3.8%(第4位大株主!)】

② 大手総合サービス企業(同級生の内定先):

・保有株式比率:【発行済株式総数の 4.2%(第3位大株主!)】

③ 大手消費財メーカー(同級生の内定先):

・保有株式比率:【発行済株式総数の 3.1%(主要株主!)】

★ 投資総額:【2億8,000万円(ロンバード・ローン+事業キャッシュより充当)】

★ 年間受取配当利回り(平均4.2%):【年間 +1,176万円(受取配当等の益金不算入で完全非課税!)】

「……えぇっ!? だ、第四位大株主……!? 第三位大株主……!?」

 詩織の息が止まった。

「そうだ!

 中学生でもわかる、株式会社の力関係の算数をしよう!

 会社の所有者は誰だ? 社長か? 社員か?

 違う、法律上の会社の真の所有者は【株主(オーナー)】だ!

 あいつらが必死に頭を下げて入社し、上司に怒鳴られ、手取り二十万円の給料をもらうために命を削るその企業を、

 俺たちミナト・ホールディングスは【上位数パーセントの議決権を持つ主要大株主】として上から支配しているんだよ!」

「……っ!! あいつらが威張ってる会社の……オーナーが、湊くんなんだ……!」

「そうだ。あいつらが真面目に働いて生み出した会社の利益は、

 配当金として毎年一千万円以上、俺たちのホールディングスの金庫へ無税で吸い上げられる。

 あいつらがどれだけ残業しようが、成果を出そうが、その果実はすべて【株主である俺たちの不労所得】に変わる構造だ!

 『雇われる側の労働者』と『会社を所有する側の資本家』……。

 最初から、勝負にすらなっていなかったんだよ!」

「きゃぁぁぁっ! すごい……! すごすぎるよ湊くん……!

 あいつらが誇らしげに持ってる内定通知書は、湊くんの会社で働かせてもらうための整理券だったんだね……!」

 詩織は歓喜の声を上げ、勢いよく俺の胸元へと飛び込んできた。

 至近距離で弾む少女の息遣いと、柔らかなブラウスの温もり。

 俺の心拍計が激しく跳ね上がり、脳内プロセッサが心地よい熱を帯びる。

「お盆の夏休みインバウンド超特需(翠月亭・花咲庵)、D2C定期便、そしてこの配当金が合流した、今夜の確定データだ!」

 俺は資産管理スプレッドシートの統合ボタンをクリックした。

【合同会社ミナト・ホールディングス グループ連結資産集計(8月10日時点)】

・前回までの確定総純資産:528,400,000円

・東証プライム主要株主配当金(中間確定分):+5,880,000円(益金不算入)

・老舗旅館『翠月亭』お盆前インバウンド確定純利益:+19,500,000円

・古民家茶房『花咲庵』盛夏特需純利益:+7,800,000円

・BtoBエンタープライズ+大学包括+辞退防止SaaS月割純利益:+22,100,000円

・個人向け就活SaaS+メディア連合+D2C定期純利益:+24,200,000円

・月額アカデミー(MRR 600名分純利益):+5,900,000円

・コア資産運用配当&米国債利息:+1,080,000円

・法人税・消費税追加納税引当プール金:▲61,860,000円

★ 確定総純資産残高(純資産ベース):【553,000,000円(祝・純資産5億5,000万円突破!)】

★ グループ運用総資産規模(バランスシート総額):【10億2,840万円(総資産10億円突破!)】

★ グループ月間経常純キャッシュフロー:【+1億1,800万円(月利1億1,800万超え!)】

「……ご、おく……ごせんさんびゃくまん……! そしてバランスシートは……十億円超えだよぉぉぉっ!!」

 詩織は俺の胸に顔を埋めたまま、嬉し涙で服を濡らしながら抱きしめてきた。

 俺はそっと手を回し、彼女の柔らかな髪を優しく撫でた。

「白石、お前のおかげだよ。お前が作ってくれた信用力があったからこそ、市場の株を買い集めて大株主として君臨できた。最高のパートナーだ」

「湊くん……っ!」

 夕暮れのオフィスに、二人だけの温かく甘い至福の時間が静かに流れていた。

 ◇ ◇ ◇

 午後二十一時、地方都市の小高い丘の上に建つ、九条源蔵の屋敷。

 広大なリビングで、俺が提示した東証プライム大株主名簿と『553,000,000円』の資産管理シートを見つめていた源蔵が、ふっと老眼鏡を外した。

 そして――。

「……カッカッカッ!! ワッハッハッハッ!!」

 屋敷の太い梁をビリビリと震わせるほどの、豪快な大爆笑が夏の夜空に轟いた。

 源蔵はバシバシと欅の一枚板テーブルを叩き、テーブルを揺らした。

「同級生どもがイキがって自慢する内定先の『大株主』に就任したか!

 ワッハッハッハッ! 痛快だ湊!

 手取り二十万の奴隷の鎖を誇らしげに見せびらかす阿呆どもの、首輪の鎖を握る飼い主に化けやがったな!」

「ええ。あいつらが必死に汗水垂らして稼いだ利益は、配当として俺たちの懐に入ります。

 バランスシートは十億円を突破し、月間純キャッシュフローは一億一千八百万円ペースに到達しました」

「ケッ! 月利一億一千八百万か! 工場の初任給の八百四十年分を毎月口座に叩き込む怪物の完成だな!」

 源蔵のぎょろりとした鋭い眼光が、獲物を仕留める直前の猛獣のようにギラリと光った。

「いいか湊。二十一歳にして日本の全世帯の上位〇・一%の絶対覇者となったてめえに、もうこの国で敵う奴はいねえ!

 お盆の帰省費用に泣く山岸や、内定通知書を握りしめてイキがる阿呆どもに、

 来春の卒業式で、一生立ち上がれねえほどの【資本主義の絶対的な格差の暴力】を叩きつけてやれ!」

「はい、じいさん!」

 俺の力強い咆哮が、夏の静寂を切り裂いた。

 窓の外を見上げると、盛夏の澄み切った夜空に、神々しいまでの満月が輝いていた。

 高校卒業から三年と五ヶ月。

 同級生たちが大学を卒業し、社会に出て自らの市場価値の低さに絶望するまでの、残り二百四十日。

 手取り十四万の食品工場ライン工社長と、覚醒した天才美少女絵師。

 純資産五億五千万円を突破し、同級生の内定先企業の大株主へ君臨した二人の快進撃は、ここから来春の卒業式へ向けた「絶対王者の最終回答」という、伝説のフィナーレへと突き進んでいく!

【現在の倉科湊ステータス】

・年齢/肩書:21歳/食品工場ライン工・合同会社ミナト・ホールディングス 代表社員(純資産5億5,000万・総資産10億円突破!)

・総資産残高:553,000,000円(前話比:+24,600,000円 ※東証プライム配当+インバウンド特需+MRR+SaaS)

・グループ運用総資産:1,028,400,000円(バランスシート10億円完全突破!)

・月間不労/事業キャッシュフロー:+118,000,000円(グループ連結月間純利益・過去最高益更新!)

・【今日の源蔵のマネー格言】:「大企業の内定通知書を誇る奴はただの使い捨ての奴隷、その大企業の大株主になって配当を吸い上げる奴が真の資本家だ。首輪を握られた奴らがどれだけイキがろうが、来春の卒業式での答え合わせは完全なる処刑台になるんだよ!」

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