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『高卒で人生終了?――伝説の投資家に資本主義の裏ルールを学んだ俺、4年で資産1億円を築いて元同級生を見返します』  作者: 月神世一


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EP 10

第6章クライマックス「就活解禁に怯える大学生と、19歳で純資産1億円&完全FIRE達成!」

 二月二十七日、金曜日。

 三月の足音が近づき、寒風の中に微かな春の匂いが混じり始めた正午、三晃紙器工業の第一工場・社員食堂の空気は、まるで集団処刑場のような絶望と阿鼻叫喚に包まれていた。

「……あ、あいつら……東京でエリート気取ってた連中が……全員、生き地獄の底へ突き落とされかけてるぞぉぉぉっ!!」

 パイプ椅子を派手に蹴倒し、スマートフォンの画面を血走った目で見つめながら、唾を撒き散らして奇声を上げていたのは同期の山岸だった。

 作業着の胸元をはだけさせ、指先をカタカタと激しく痙攣させている。

「おい山岸、食堂の真ん中で奇声を上げるな。飯が不味くなるだろ」

 俺――倉科湊が、保温ランチジャーから熱々の豚汁と、母が持たせてくれた鰆(さわら)の西京焼き弁当を取り出しながら声をかけると、山岸は涙と鼻水を垂らしながら俺のテーブルへすがりついてきた。

「不味くなるどころの騒ぎじゃねえよ倉科ぁぁぁっ!

 あと二日……明後日の【3月1日午前0時】だよ!

 大学三年生の【新卒就活ナビサイト(マイナビ・リクナビ)のグランドオープン(一斉プレエントリー解禁)】だぞ!?

 高校の同級生たちの裏アカウントを見ろよ!

 『大手企業のインターン全落ちして持ち駒ゼロ、3月1日のエントリーで人生が決まる』『ガクチカに書くことが何もなくて鬱で眠れない』『Webテストの玉手箱とSPIで足切りされまくって吐き気がする』って、地獄の亡者どもの断末魔の嵐だぜ!

 高校を卒業した時は『高卒で田舎の工場勤務とか無理w一生油まみれの負け組w』って俺たちを嘲笑ってた連中が、いざ社会のリングに上がった瞬間、何十万人もの就活生と椅子取りゲームさせられて、ただの量産型ゴミクズとして足切りされてんだよ! ざまぁみろだろぉぉぉっ!!」

 他人の転落を肴にして下品に歓声を上げる山岸。

 だが、その濁った瞳の奥には、自分自身の未来に対する底知れない劣等感と恐怖がべったりと張り付いていた。

「……でもよ、笑ってる俺だって同じ地獄だよ倉科……っ!

 来週はホワイトデーのお返し集金でまた五千円取られ、来月には軽自動車の車検と自動車税の請求書が届くんだぞ……!

 手取り十四万の安月給で、物価高と社会保険料で首が締まって……あいつらが社畜の入り口で怯えてる横で、俺はすでに手取り十四万の回し車で一生タダ働きさせられてんだよぉぉぉっ!!」

 テーブルに頭を打ちつけ、嗚咽を漏らす山岸。

 俺は水筒の温かいほうじ茶を一口喉へと流し込み、冷え切った視線を投げかけた。

「山岸。中学生でもわかる、新卒一括採用と労働市場の残酷な算数をしよう」

「算数なんか聞きたくねえ! みんな苦しんでんだよ!」

「苦しんでいるのは、お前たち労働者が『自分の市場価値』を他人に委ねているからだ。

 日本の大卒就活生は毎年約四十五万人。

 だが、誰もが知る人気上場企業やメガバンク、大手メーカーの総合職の採用枠は、上位わずか【5%〜10%】だ。

 四十五万人に対して、椅子は数千席しかない。

 三流私立大で遊んで何のスキルも実績も積んでこなかった人間が、東大・京大・早慶のエリートたちと同じ椅子を奪い合って勝てるわけがない。

 そして運良く手取り二十万の社畜の内定を勝ち取ったところで、待っているのは毎月の所得税、住民税、社会保険料の強制天引きと、満員電車に揺られる四十年のラットレースだ。

 他人の引いたレールの上で誰かに雇ってもらうために必死で頭を下げる者と、最初から他人のルールを拒絶して資本の城を築く者……。

 最初から、見ている世界が違いすぎるんだよ」

「ぐっ……! う、うるせぇぇぇっ! 正論で殴るなよぉぉぉっ!!」

 耳を塞いで食堂から逃げ出していく山岸。

 その背中を見送りながら、俺は胸ポケットの中でスマートフォンを取り出した。

(山岸、お前には見えていないんだよ。

 東京の大学生たちが三月一日の就活解禁に怯えて震え、お前が数千円の出費に泣いている横で……

 俺が今夜、どんな【前人未到の歴史的頂】へ足を踏み入れようとしているのかがな)

 前話(第64話)の時点で、確定総純資産は【7,650万円】に達していた。

 目標の純資産一億円――日本の全世帯上位二%に君臨する【富裕層】の頂まで、あと残り【二千三百五十万円】。

「定時で上がるぞ。今夜、俺たちの長い戦いが一つの極点(ゴール)を迎える」

 午後十七時零二分、定時退社。

 タイムカードをパチンと切った俺は、夕暮れの心地よい風を切り裂き、地方都市の駅前に構えた合同会社ミナト・キャピタルのオフィスへと自転車を疾走させた。

 ◇ ◇ ◇

 午後十七時三十分、合同会社ミナト・キャピタルのオフィス。

 ダイキンの最新エアコンが静かに二十四度の温風を送り出し、ディフューザーからはペパーミントとベルガモット、そしてほんのり甘いバニラのアロマがふわりと漂っていた。

「湊くん……! お帰りなさい!」

 扉を開けると、そこには白石詩織が待っていた。

 淡いサクラピンクの上質なカシミヤ混ニットに、春の風を思わせる清楚な純白のシフォンティアードスカート。

 ショコラブラックの豊かな髪を首元ですっきりとハーフアップにまとめ、黒縁メガネを外した大きな茶褐色の瞳が、夕陽を浴びてキラキラと輝いている。

 高校時代の地味な面影など微塵もなく、その洗練された佇まいと圧倒的な透明感は、誰もが振り返る最高峰の美少女そのものだった。

 部屋に入った瞬間にふわりと広がる甘い石鹸とアロマの香りに、俺の心拍計がピクリと跳ね上がる。

 デスクの上には、最新のM4搭載iPad Proと、湯気を立てる特製の耐熱グラスが用意されていた。

「白石、待たせたな」

「ううん、全然待ってないよ! 湊くん、工場のライン作業お疲れ様……!

 これ、外はまだ少し肌寒かったでしょ? 買収したハーブ園の有機カモミールと、初摘みの桜の花びらを浮かべた『特製ホットブロッサムハニーラテ』だよ! 温かいうちに飲んでね!」

「サンキュー、白石。生き返るよ」

 グラスを受け取り、一口喉へと流し込む。

 桜の上品な香りとカモミールの清清しさ、そして蜂蜜とミルクの濃厚な甘みが、冷えた身体の芯までじんわりと温めていく。

 めちゃくちゃうまい。

 だが、俺は彼女の華奢な指先に、長時間の画面操作による微かな強張りがあるのを見逃さなかった。

(……いかんな。また俺の経営者センサーが過敏に作動している)

 俺はデスクの引き出しから、あらかじめ用意しておいた重厚な桐箱をスッと取り出し、詩織の前に差し出した。

 銀座の老舗名門サロンが完全予約制で仕立てた『最高級・完熟あまおう苺と一番摘み宇治抹茶の特製スプリングジュエリーパフェテリーヌ』と、遠赤外線グラフェン温熱で手首から指先までを常に三十九度に保つ最新型コードレスメディカルハンドエステ機だ。

「ほら、白石。これを受け取れ」

「えっ……!? これ、すごく大きな苺とお抹茶の層がキラキラ輝いてるテリーヌ……! それに、最新のエステ機……!?

 湊くん、私がお茶を出しただけなのに、どうしていつもこんなに高価なものをくれるの……?」

「勘違いするなよ」

 俺は腕を組み、冷徹な仮面を必死に張り直して早口でまくしたてた。

「中学生でもわかる組織財務と決算期人的資本BCP防衛の講義だ。

 我が合同会社ミナト・キャピタルの最高アートディレクター(お前)が、季節の変わり目の寒暖差によって浅指屈筋および手根管周辺の柔軟性を低下させ、これから決行される超特大ディールの最終契約書デザイン検収を〇・四秒遅延させた場合、決算期エグジットに伴う機会損失は【試算で最低でも月額一千五百万円】に跳ね上がる!

 あまおう苺の高純度ビタミンCと宇治抹茶のカテキンによる活性酸素の急速除去、ならびにグラフェン温熱による指先の微細神経機能維持は、組織の基幹クリエイターの【中長期的アジリティを担保するための戦略的決算期BCP防衛および役員福利厚生投資経費】だ!

 お前への甘やかしなどではない!

 今夜生み出される何千万円もの純利益から逆算すれば、このパフェテリーヌ代などROI(投資対効果)は【実に一億五千万%】を超える!

 極めて合理的でドライな財務上の防衛支出だから、一ミリも遠慮せず胃袋に収めて手を突っ込め」

 息をつかずに言い切った俺の、世界一長くて過保護な言い訳。

 詩織は桐箱を胸にぎゅっと抱きしめ、目をパチクリさせて聞いていたが――やがて、その桃色の唇をふにゃりと綻ばせ、クスクスと愛おしそうに笑った。

「ふふっ……あはは! けっさんきエグジット……? ROIがいちおくごせんまんパーセント……?

 湊くんの言い訳、本当に世界一長くて……世界一甘くて幸せだよ!」

「な、何がおかしい。純粋な企業防衛だぞ」

「うん、そうだね! じゃあ私、湊くんの『防衛経費』で美味しく手をポカポカにして、一億五千万パーセントのお返しができる世界一可愛いデザインを描き続けるね!

 ……あ、湊くん! テリーヌ、お抹茶のクリームがすっごくとろとろで苺が甘酸っぱそうだよ! はい、あーん!」

 フォークに濃厚な抹茶クリームと大粒のあまおう苺をたっぷり乗せ、夕陽に照らされた満面の笑顔で差し出してくる詩織。

 至近距離から漂う甘酸っぱい果実の香りと芳醇な抹茶のアロマ、彼女自身の透き通るような白い肌、潤んだ茶褐色の瞳。

「お、おい……自分で食える……」

「ダメー! 大決戦前の景気づけなんだから! ほら、あーん!」

 観念して口を開けると、濃厚で滑らかな抹茶のコクと、フレッシュな苺の果汁が口いっぱいに弾け飛んだ。

 めちゃくちゃうまい。

 そして――心拍数が異常なスピードで跳ね上がり、俺の脳内プロセッサが完全に一時停止しかける。

(……ダメだ。この女の『あーん』の破壊力は、資本主義のどんなアルゴリズムをも一瞬で溶かしてしまう……)

「ふふっ、美味しい? 湊社長!」

「……ああ、最高だ。……よし白石、本題に入るぞ」

 ◇ ◇ ◇

「白石、今から中学生でもわかる、純資産一億円(富裕層)への最終登頂――【新生活商戦バブルと事業売却(エグジット)】の算数をしよう」

 俺はノートPCを開き、ホワイトボードの前に立った。

「二月後半、俺たちの5大メディア連合、そしてD2C定期サブスク事業は、春の新生活需要を丸ごと呑み込んで爆発的なキャッシュを生み出した。

 『春からの引っ越しに合わせて光回線を契約したい』『新生活に向けて格安SIMと年会費無料クレカを作りたい』『新生活のストレスを癒やすオーガニックティーを定期購入したい』……

 アクセス数は通常の三倍に跳ね上がり、確定純利益は【月1,520万円】を叩き出した」

「いっせんごひゃくにじゅうまんえん……!」

 詩織が息を呑んだ。

「だが、それだけじゃない。

 一億円の頂を完全制覇するために、俺が水面下で仕掛けていた【最後の一撃】がある。

 ――第57話で、俺たちが四百万円で買収し、月利十八万から八十三万へと魔改造(PMI)したマネー特化型サイト『スマート節約ラボ』の【事業売却(エグジット)】だ!」

「えっ……!? あのサイトを、売っちゃうの……!?」

 詩織が大きな瞳を見開いた。

「そうだ。

 東証プライム上場の大手FinTech企業から、正式なM&Aの買収提案が届いた。

 『自社の金融サービスの認知拡大のため、月利八十万円超の優良SEOメディアを丸ごと自社グループに組み入れたい』とな。

 相手が提示してきた買収金額……いくらだと思う?」

 俺はホワイトボードに、巨大な数字を叩きつけた。

「――【現金一括・22,000,000円(2,200万円!)】だ!」

「に、にせんにひゃくまんえん……!?

 湊くん、四百万円で買ったサイトが……五ヶ月で何百万円も利益を出した上に、二千二百万円で売れちゃうの……!?」

「その通りだ! 中学生の足し算と引き算をしよう!

 四百万円で買収し、保有期間中の純利益で約四百万円を回収(元本回収完了)。

 そして売却価格が二千二百万円!

 投じた資金はゼロ(全額回収済み)で、会社には【丸々2,200万円の純現金】が一撃で雪崩れ込んでくるんだ!

 資本家にとって、事業とは育ててキャッシュを得るだけでなく、【最も高く評価してくれる相手に売却して莫大なキャピタルゲインを得る資産】なんだよ!」

 カタカタ、ターンッ!

 俺はクラウドサインの画面を開き、電子署名を完了させた。

『【送金完了】買収対価22,000,000円が、合同会社ミナト・キャピタルの法人口座へ即時着金いたしました』

 画面が緑色に点滅し、銀行アプリの残高が桁違いに跳ね上がった。

 そして――

 新生活商戦の確定売上、月額MRR、自社教材、D2C定期便、コア資産の配当、そして事業売却益のすべてを統合した最終集計ボタンを、俺は力強くクリックした。

【合同会社ミナト・キャピタル&倉科湊 確定資産集計(2月27日)】

・普通預金+運転資金キャッシュ:74,680,000円

・新NISA&コア資産運用評価額(世界株・米国株・米国債):15,800,000円

・残存事業資産評価額(通信ナビ+D2C事業+既存3メディア):18,000,000円

・法人税・消費税追加納税引当プール金完全控除後 純資産内部留保:6,120,000円

★ 確定総純資産残高:【102,400,000円(祝・純資産1億円完全突破!)】

★ 単月事業純利益+エグジット益:【+32,600,000円(過去最高記録!)】

「……いっ、ち、おく……にひゃくよんじゅうまん……!!」

 息が止まった。

 『102,400,000』。

 高校を卒業したあの日、ポケットの中にあったのは、バイト代の残りわずか三万二千円。

 「高卒の工場勤務とか無理w一生ライン工頑張れよw」と同級生たちに嘲笑されてから、一年と十一ヶ月――七百日。

 手取り十四万の食品工場ライン工が、

 時給労働のバイトには一秒も逃げず、

 資本主義のルールと税法の盾を極限までハックし続けた結果――

 ついに、日本の全世帯五千四百万世帯のうち、上位わずか【2%】しか存在しない神の領域――

 ――【純資産1億円(富裕層)】の巨大な頂上へ、完全に到達したのだ!

「中学生でもわかる、純資産一億円の完全FIREの算数をしよう……」

 俺は電卓アプリを立ち上げた。

 純資産一億円を超えた人間だけに許される、資本主義の完全なる上がり(ゲームクリア)――

 それは【絶対的FIRE(完全なる経済的自由)の完成】だ!

 トリニティ・スタディ(米国名門トリニティ大学の資産運用研究)が証明した、世界基準の【4%ルール】。

 この一億円を全世界株式や米国株などのインデックス資産に投じ、毎年資産の4%を取り崩して生活した場合、三十年後に資産が枯渇しない確率は【98%以上】。

 『1億円 × 4% = 【年間400万円(税引後・手取り月約27万円)】』!

「年間四百万円……。

 俺が工場で毎日油まみれになって得ている年間手取り(約百七十万円)の【二・三倍】の現金が、

 俺が一秒も働かなくても、世界中を旅していようが、寝ていようが、一生涯にわたって自動で口座に湧き出続ける……。

 年利5%で手堅く回せば、年間五百万円(手取り月三十三万円)だ。

 贅沢をしなければ、一生涯、二度と誰にも雇われる必要はない」

 労働からの完全な解放。

 他人の機嫌を伺う必要も、理不尽な命令に頭を下げる必要も、生活のために命の時間を切り売りする必要も、金輪際一切ない。

 十九歳の元負け組少年は、資本主義のゲームを完全にクリアし、【無敵の絶対自由】を手に入れたのだ!

「きゃぁぁぁぁぁぁっ!! 湊くん、やったぁぁぁっ!!」

 画面を見つめていた詩織の大きな瞳から、大粒の涙が滝のように溢れ出した。

 彼女はそのまま、勢いよく俺の胸元へと飛び込んできた。

 柔らかな温もりと、想いが報われた最高のカタルシス。

「一億円だよ……! 十九歳で、一億円だよぉぉぉっ!!

 私、一年前は時給六十六円で買い叩かれて、暗い美術室の隅っこで泣いていたのに……!

 私の『スタジオ・シオリ』の口座にも、もう【一千二百万円】以上の純資産があるんだよ……!?

 湊くんと一緒に歩んできて、本当によかった……! 湊くんは、私にとっても、世界中の誰にとっても、最高で世界一のヒーローだよぉぉぉっ!!」

 詩織は俺の胸に顔を埋めたまま、嬉し涙で服を濡らしながら抱きしめてきた。

 俺はそっと手を回し、彼女の柔らかな髪を優しく撫でた。

「白石……お前のおかげだよ。

 お前の神がかったデザインと図解がなければ、自社コンテンツも、MRRも、M&Aも、絶対に成し得なかった。

 お前は俺の、世界で一番の最高のパートナーだ」

「湊くん……っ!」

 詩織は顔を上げ、耳まで真っ赤に染めながら、潤んだ瞳で俺を見つめてきた。

 夕暮れのオフィスに、二人だけの温かく甘い至福の時間が流れていた。

 ◇ ◇ ◇

 午後二十一時、地方都市の小高い丘の上に建つ、九条源蔵の屋敷。

 広大なリビングの欅の一枚板テーブルの前で、俺は『102,400,000円』と刻まれた最新の資産管理スプレッドシートと、事業売却完了の契約書を源蔵の前に差し出した。

「じいさん、報告に来ました。

 純資産一億円――【富裕層】を完全に突破し、完全FIREを達成しました」

 源蔵は老眼鏡をかけ、無言で画面をスクロールした。

 『102,400,000円』。

 その数字を確認した瞬間、老人のぎょろりとした鋭い瞳が、細く、深く見開かれた。

 そして――。

「……カッカッカッ!! ワッハッハッハッ!!」

 屋敷の梁を揺るがすほどの、豪快な大爆笑が冬の夜空に轟いた。

 源蔵はバシバシと自分の太ももを叩き、テーブルを揺らした。

「やりやがったな、青二才が!!

 手取り十四万の食品工場ライン工が、一銭の借金もせず、誰からも施しを受けず……

 資本主義のルールと己の頭脳だけで、十九歳にして【富裕層(純資産一億円)】の頂上へ旗を突き立てやがったか!!」

「教えの通り、時給労働は捨てました。

 自社コンテンツ、MRRサブスク、事業承継M&A、そして事業売却エグジット……資本の最上流を支配した結果です」

 俺が胸を張ると、源蔵は笑いを収め、湯呑みを置いて居住まいを正した。

 その顔には、これまでに見せたことのない、一人の真の『大資本家』として俺を認める真剣な眼光が宿っていた。

「いいか湊。日本の全世帯五千四百万世帯のうち、純資産一億円以上の富裕層は、上位わずか【2%】だ。

 百人のうち、九十八人を遥か雲の下に見下ろす絶対王者の領域だ!

 明後日、三月一日にリクルートスーツを着て就活サイトに群がり、他人に自分を値踏みされて泣き叫ぶ同級生どもが、一生かけても拝めねえ【一億円の絶景】を、てめえは十九歳にして手に入れたんだ!」

 源蔵は立ち上がり、リビングの棚から最高級の年代物ブランデーを取り出してグラスに注いだ。

「金子拓海はタコ部屋で怒鳴られ、佐伯凛は実家の部屋で泣き叫んでいる。

 だが湊、お前の物語はこれで終わりじゃねえ。

 手取り十四万の工場ライン工という『最強の仮面』を被ったまま、裏で一億円を動かす富裕層の若き総帥……。

 来年の春、あいつらが手取り二十万の社畜として社会に出てくる『運命の卒業式・最終回答(答え合わせ)』まで、

 てめえはこの資本主義の絶対覇者として、さらなる富の要塞を築き上げてみせろ!」

「はい、じいさん!」

 俺の力強い咆哮が、静かなリビングに響き渡った。

 窓の外を見上げると、澄み切った早春の夜空に、神々しいまでの満月が輝いていた。

 同級生たちが大学を卒業し、社会に出て自らの市場価値の低さに絶望するまでの、残り六百八十日。

 手取り十四万の食品工場ライン工社長と、覚醒した天才美少女絵師。

 純資産一億円(富裕層)を完全突破し、完全FIREを達成した二人の成り上がりストーリーは、ここから「絶対王者の凱旋」と「運命の最終決戦」へ向けて、さらなる伝説の領域へと突き進んでいく!

【現在の倉科湊ステータス】

・年齢/肩書:19歳/食品工場ライン工・合同会社ミナト・キャピタル 代表社員(第6章完結・純資産1億円突破&完全FIRE達成!)

・総資産残高:102,400,000円(第6章累計:+72,050,000円 ※事業売却益+D2C定期+MRR+ロールアップ)

・月間不労/事業キャッシュフロー:+15,200,000円(事業売却益除く経常月利)

・【今日の源蔵のマネー格言】:「他人に雇われるために頭を下げる奴は一生奴隷、19歳で純資産1億円を築いてFIREした奴が市場の絶対覇者だ。世間の98%を見下ろす富裕層の頂に立ったてめえに、もう二度と貧乏の影は踏めねえよ!」

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