EP 7
高単価案件へのピボットと「特別単価(特単)」交渉
五月中旬、初夏の爽やかな風が、工場のスレート屋根を心地よく吹き抜けていく季節。
だが、正午のサイレンが鳴り響いた三晃紙器工業の第一工場・社員食堂には、またしても生気のない怨嗟の声が渦巻いていた。
「……つ、ついにやったぞ……! 見ろよ倉科、俺のスマホの画面をよぉぉぉっ!!」
油染みのついた作業着の袖をまくり、血走った目でスマートフォンの画面を突き出してきたのは、同期採用の山岸だった。
画面には、某大手ポイントサイトの通帳画面が開かれている。
『獲得ポイント:342ポイント(342円相当)』
「昨日な、居酒屋のバイトが終わった後、夜中の三時までベッドの中でアンケート回答と無料アプリのダウンロードをポチポチ連打したんだよ!
三時間かけて、ついに三百四十二円分のポイントをゲットしたぜ!
どうだ倉科、これが『スキマ時間の不労所得』ってやつだ! 工場の昇給千五百円を埋めるために、俺はコツコツとポイ活で資産を築いてるんだよぉぉぉっ!!」
胸を張り、ドヤ顔を浮かべる山岸。
目の下には相変わらず濃い隈が張り付き、睡眠時間を削って手に入れたのが、わずか缶コーヒー二本分の小銭。
俺――倉科湊は、母が持たせてくれたシャケ弁のフタを開け、温かいほうじ茶を一口飲みながら静かに息を吐き出した。
「山岸。中学生でもわかる時給換算の算数をしよう」
「ああん!? また算数かよ! 三百円儲かったんだからいいだろ!」
「三時間作業して三百四十二円ということは、お前の昨夜の時給は【百十四円】だ。
日本の法定最低賃金の十分の一以下で自分の命の時間を切り売りし、目の焦点をぼやけさせ、睡眠不足で今日の工場のライン作業の安全確認を怠る……。
その結果、結束機に手を挟んで怪我でもすれば、治療費と休職で数十万円の損失だ。
ポイントサイトの胴元企業は、お前のような情弱が何時間も画面をタップして広告を見てくれるおかげで、何十億円もの利益を上げているんだよ。
お前は稼いでいるんじゃない。企業の広告塔として、タダ同然で使役されているデジタル小作人なんだよ」
「ぎゃあぁぁぁっ! 俺の努力をゴミみたいに言うなよぉぉぉっ!!」
耳を塞いで食堂の隅へと逃げていく山岸。
資本主義の構造を知らない人間は、常に「他人が用意した搾取の檻」の中で小銭を拾わされ、自分の人生をすり減らしていく。
(……さて、小銭拾いに付き合っている暇はない)
俺は誰にも見られないよう、作業着のポケットの中でスマートフォンを操作し、ASPの管理画面をチェックした。
ファミレスで金子拓海と悪徳マルチの先輩を特商法と金商法で完全論破し、クーリングオフで粉砕してから一週間。
俺たちが運営する特化ブログ三サイト――
①『高卒逆転マネーハック』(通信費・格安SIM特化)
②『新社会人のための固定費ゼロ革命』(新NISA・家計見直し特化)
③『手取り15万からの脱出ロードマップ』(副業・リスキリング特化)
これら三つのメディアを合わせた月間総アクセス数は、ついに【五十万PV】を突破していた。
そして、月間の成約件数は、格安SIMや光回線、クレジットカードを合わせて【三百件以上】を安定して叩き出している。
現在の純資産は八百四十万円。月間事業純利益は約百六十万円。
これだけでも、世間の副業サラリーマンからすれば神のような数字だろう。
だが――俺の頭の中にあるロードマップから逆算すれば、これでもまだ通過点に過ぎない。
(記事をこれ以上がむしゃらに増やしても、作業量が増えるだけでスケーラビリティが鈍化する。
……労働時間を一分も増やさず、記事数を一本も増やさずに、手に入る売上だけを一撃で二倍、三倍へと跳ね上げる【資本のレバレッジ】を発動させる時だ)
午後十七時零二分、工場のタイムカードを切って定時退社した俺は、自転車を力強く漕ぎ、実家の作業部屋へと直行した。
◇ ◇ ◇
「湊くん、お帰りなさい……! 資料のグラフ、全部最新データに差し替えておいたよ!」
作業部屋の扉を開けると、そこには白石詩織が待っていた。
淡いラベンダー色のサマーニットに、風に揺れる白いチュールスカート。
ショコラブラックの髪を後ろで緩くハーフアップにまとめ、黒縁メガネを外した大きな茶褐色の瞳が、夕陽を浴びてキラキラと輝いている。
すっかり垢抜けて洗練されたその姿は、何度見ても息を呑むほど美しく、部屋に入った瞬間にふわりと漂う甘いアロマの香りに、俺の心拍計がピクリと跳ね上がる。
「サンキュー、白石。助かったよ」
「えへへ……! あ、それとね湊くん、これ! 駅前の老舗パティスリーで見つけてきた『最高級・完熟日向夏の爽快タルト』! 冷やしておいたから、商談の前に食べよう?」
詩織は小皿に乗ったタルトをデスクに置き、満面の笑みを咲かせた。
瑞々しい黄色の果肉が宝石のように並び、爽やかな柑橘の香りが部屋いっぱいに広がる。
「日向夏のタルトか。……白石、お前、今日も指先を酷使していただろ」
俺は引き出しを開け、あらかじめ用意しておいた小箱をスッと取り出し、詩織の前に置いた。
銀座の特選サロンから取り寄せた、最高級オーガニックカカオの濃厚ショコラテリーヌと、指先を心地よく加圧して温める最新のパームマッサージャーだ。
「ほら、白石。これを受け取れ」
「えっ……!? これ、すごく高そうなチョコテリーヌ……! それに、手のマッサージ機……?
湊くん、私がおやつを持ってきたのに、どうしていつもこんなに素敵なものを返してくれるの……?」
「勘違いするなよ」
俺は腕を組み、冷徹な仮面を必死に張り直して早口でまくしたてた。
「中学生でもわかる組織財務と人的資本レバレッジの講義だ。
これから行う大手ASPとの極めてシビアな単価交渉において、我が事業部のアートディレクター(お前)が糖分不足や指先の疲労によってプレゼン資料のリアルタイム修正を〇・五秒遅延させた場合、交渉決裂による将来の機会損失は【試算で最低でも月額百万円】に跳ね上がる!
日向夏のビタミンCと高純度カカオポリフェノールの相乗効果による抗酸化作用、ならびにパームマッサージャーによる指先の末梢神経機能の維持は、組織の基幹クリエイターの【交渉戦闘力を極大化させるための戦略的BCP防衛および役員福利厚生投資経費】だ!
お前への甘やかしなどではない!
将来生み出される何千万円ものメディアキャッシュフローから逆算すれば、このテリーヌ代などROI(投資対効果)は【実に十万%】を超える!
極めて合理的でドライな財務上の防衛支出だから、一ミリも遠慮せず胃袋に収めて手を突っ込め」
息をつかずに言い切った俺の、世界一長くて過保護な言い訳。
詩織は小箱を胸にぎゅっと抱きしめ、目をパチクリさせて聞いていたが――やがて、その桃色の唇をふにゃりと綻ばせ、クスクスと愛おしそうに笑った。
「ふふっ……あはは! こうしょうせんとうりょく……? ROIがじゅうまんパーセント……?
湊くんの言い訳、本当に世界一長くて……世界一甘くて幸せだよ!」
「な、何がおかしい。純粋な企業防衛だぞ」
「うん、そうだね! じゃあ私、湊くんの『防衛経費』で美味しく手をポカポカにして、十万パーセントのお返しができる神資料を画面に出すね!
……あ、湊くん! タルト、すっごくジューシーだよ! はい、あーん!」
フォークに一口分のタルトを乗せ、夕陽に照らされた満面の笑みで差し出してくる詩織。
至近距離から漂う甘酸っぱい果実の香りと、彼女自身の透き通るような白い肌、潤んだ茶褐色の瞳。
「お、おい……自分で食える……」
「ダメー! 交渉前のエネルギー補給なんだから! ほら、あーん!」
観念して口を開けると、爽やかな日向夏の果汁と香ばしいタルト生地の甘みが口いっぱいに広がった。
めちゃくちゃうまい。
そして――心拍数が異常なスピードで跳ね上がり、俺の脳内プロセッサが完全に一時停止しかける。
(……ダメだ。この女の『あーん』の破壊力は、どんな百戦錬磨の営業マンよりも手強い……)
「コホン! ……よし、白石、時間だ。画面を接続するぞ」
午後十七時三十分ジャスト。
俺はノートPCのZoomを起動し、指定されたオンラインミーティングルームへと入室した。
◇ ◇ ◇
画面の向こうに現れたのは、ピシッとしたジャケットを着た三十代前後の男性だった。
国内最大手アフィリエイトサービスプロバイダ『A8.net』のメディアリレーション推進部・シニアアカウントマネージャーの神崎だ。
『倉科様、白石様、本日はお時間をいただきありがとうございます! いつも御社の三メディアには、格安SIMや光回線、金融案件で素晴らしい送客実績をいただき、大変感謝しております!』
丁寧で腰の低いビジネスマナー。
だが、その瞳の奥には、数多くのトップアフィリエイターと渡り合ってきた大手ASPの営業マン特有の鋭い光が宿っていた。
「神崎さん、こちらこそいつも迅速なサポートをありがとうございます。
さて、単刀直入に本題に入らせていただきます」
俺は画面共有を開始し、詩織が美しくデザインした『月間送客実績およびコンバージョン推移レポート』を提示した。
「現在、弊社の主力メディア『高卒逆転マネーハック』において、御社経由で掲載している大手格安SIM『〇〇モバイル』の案件についてです。
現在の通常単価は、新規回線開通1件につき【3,000円】となっております。
――この単価を、来月一日より【8,000円(特別単価)】へと引き上げていただきたく、本日はご連絡いたしました」
画面の向こうで、神崎の眉がピクリと跳ねた。
『……三千円から、一気に八千円ですか。
倉科様、通常単価の二・六倍以上という引き上げ幅は、弊社としても前例が極めて少ない水準でして……。
広告主のマーケティング予算にも上限がございます。現状の三千円のままでも、御社には月間二百件以上の確定報酬をお支払いしておりますので、十分に手取りは確保されているかと思うのですが……』
やんわりとした牽制。
素人のアフィリエイターなら、「やっぱり無理ですよね……」と引き下がるところだ。
だが、俺の表情は一ミリも動かなかった。
「神崎さん。中学生でもわかる、広告主とASPのROI(投資対効果)の算数をしましょうか」
『……算数、ですか?』
「そうです。世の中の大半の三流アフィリエイターは、『もっと稼ぎたいから単価を上げてください』と、自分の都合だけで交渉しようとする。
そんな要求が通るわけがないのは当然です。
ですが、俺が提示しているのはおねだりではありません。
【広告主と御社にとって、単価を八千円に引き上げることが圧倒的な増益に繋がる論理的根拠】です」
俺は画面をスクロールし、三つの決定的な客観データを提示した。
◇ ◇ ◇
「第一に、【驚異的な承認率と、ユーザーのLTV(顧客生涯価値)の高さ】です」
俺はグラフを指し示した。
「一般的なアフィリエイトサイトにおける格安SIM案件の確定承認率は、せいぜい七十〜八十%程度です。
虚偽の申込みや、審査落ちによるキャンセルが多発するからです。
しかし、弊社の直近三ヶ月間の確定承認率を見てください。
――【96.4%】を記録しています」
『……きゅうじゅう、ろくパーセント……!?』
神崎が息を呑んだ。
「なぜこれほど高いのか?
第27話で構築したSOPにより、事前のMNP予約番号の発行手順や本人確認書類の撮影ルールを、詩織の神図解で読者に徹底的に教育しているからです。
さらに、公式LINE(DRM)で乗り換え後の設定までサポートしているため、開通後三ヶ月以内の早期解約率は【わずか1.2%】。
広告主からすれば、他サイトから入ってくる質の悪いユーザーと比べて、弊社の送客ユーザーは『年間六万円以上の通信費を確実に支払い続ける超優良顧客』なんです。
CPA(顧客獲得単価)が八千円になろうが、広告主にとっては一瞬で回収できる極上の投資なんですよ」
『う、ぐっ……確かに、広告主側の担当者からも、御社からの獲得ユーザーの継続率は異常に高いと評価されておりました……』
神崎の額に、微かな汗が光る。
だが、俺の追撃は止まらない。
「第二に、【検索上位キーワードの独占と、送客ボリュームの保証】です」
「『格安SIM 乗り換え 手順』『格安SIM 違約金 なし』など、購買意欲の極めて高いロングテールキーワードにおいて、弊社の記事はGoogle検索で一〜三位を独占しています。
単価を八千円に引き上げていただけるのであれば、現在サイト内で他社SIMを掲載している【比較ランキングの第一位】の枠、および記事冒頭のバナー枠を、すべて御社の『〇〇モバイル』に独占固定します。
これにより、現在の月間二百件から、【月間三百五十件(一・七五倍)】への送客コミットをお約束します」
『月間三百五十件……!』
神崎の目が大きく見開かれた。
大手ASPにとって、大口クライアントへの送客シェアを握ることは、自社の売上ノルマと業界内のポジショニングに直結する死活問題なのだ。
「そして――第三の理由です」
俺は冷徹な眼光を、Webカメラのレンズの向こうの神崎へと真っ直ぐに向けた。
「実は昨日、競合のクローズドASPである『レントラックス』様、ならびに『フェルマ』様の担当者様から、弊社に対して直接オファーをいただきました」
『……えっ!?』
「内容は、同ジャンルの競合SIM案件への独占乗り換えを条件に――
【1件につき、特別単価8,500円】での掲載打診です」
ピシリ、とZoomの画面越しに空気が凍りついた。
「弊社としては、これまで立ち上げ初期から手厚くサポートしてくださった神崎様との信頼関係を最優先にしたいと考えております。
ですが、弊社も営利組織です。
一件三千円と八千五百円……同じ送客枠で手に入るキャッシュフローにこれほどの開きがある以上、合理的な経営判断として、他社ASP様への乗り換えを検討せざるを得ません」
俺は静かに、しかし絶対のプレッシャーを込めて微笑んだ。
「神崎さん。八千円の特別単価を引っ張ってきて、月間三百五十件の独占送客枠を御社で死守するか。
それとも、この枠を他社ASPに丸ごと奪われ、月間数百万円の取扱高を失うか……。
――御社のシニアアカウントマネージャーとしての決断を、お聞かせいただけますか?」
完璧なチェックメイトだった。
感情論ではない。
実績、読者の質、競合他社の引き合いという【客観的な市場価値】を突きつけられた営業マンに、断る選択肢など最初から存在しないのだ。
神崎は数秒間、息を呑んで硬直していたが――やがて、深く息を吐き出し、画面越しに深々と頭を下げた。
『……参りました、倉科様。
ここまでのファクトとLTVデータを揃えて交渉されたアフィリエイター様は、私の営業キャリアでも初めてです。
分かりました。今から私が直接、広告主の本部長に電話を入れ、私の責任で【1件8,000円の特別単価】を承認させてまいります!
ですからどうか……比較ランキング一位の独占枠は、弊社にお預けください!!』
「交渉成立ですね。広告主様へのご提案用として、今お見せしたスライドのPDFをチャットでお送りします。よろしくお願いいたします」
通話を終了した瞬間。
「……きゃぁぁぁぁぁっ!! 湊くん、やったぁぁぁっ!!」
隣で画面を見ていた詩織が、勢いよく席から立ち上がり、俺の首元にギュッと抱きついてきた!
「ぶふっ……!? し、白石……!?」
ふわりと舞い散るラベンダーの香りと、柔らかくて温かい感触。
至近距離で弾む少女の息遣いに、俺の脳内プロセッサが瞬間的にオーバーヒートを起こし、警報アラートをけたたましく鳴り響かせる。
「すごいよ、湊くん……! 本当に単価が三千円から八千円になっちゃったよ……!
神崎さん、最後は完全に湊くんのプレゼンに圧倒されてたもん……っ! 湊くん、やっぱり世界で一番かっこいい実業家だよぉぉぉっ!!」
「お、おい白石、離れろ……! 心拍数が二四〇を超えている……!」
「えへへ……離さないもんっ!」
満面の笑顔で俺の胸にすりすりと頬を寄せてくる詩織。
その天使のような破壊力に、俺はまたしても完敗を認めざるを得なかった。
◇ ◇ ◇
その日の深夜、丘の上の九条源蔵の屋敷。
欅の一枚板テーブルの前で、源蔵は湯呑みを片手に「カッカッカ!」と豪快に喉を鳴らしていた。
「一件三千円を八千円に吊り上げたか! ケッ、青二才のくせに、商売の急所を的確にえぐり込みやがったな!」
「ええ。中学生でもわかる算数です」
俺はノートPCを開き、画面に跳ね上がった収支シミュレーションを提示した。
「月間三百件の成約で、通常単価なら売上は【90万円】でした。
それが、特別単価八千円になった瞬間――
成約件数が同じ三百件のままでも、売上は一撃で【240万円】へと跳ね上がります!
労働時間を一分も増やさず、外注費を一円も増やさずに、差額の【+150万円の純現金】が毎月丸々口座に雪崩れ込んでくる計算です」
「そうだ、それこそが【商流の川上を支配するレバレッジ】だ!」
源蔵は机をバシッと叩き、鋭い眼光を俺に向けた。
「世の中の情弱労働者はな、『収入を増やしたいなら残業しろ、アルバイトを増やせ』と自分の身体をすり減らすことしか考えねえ。
だが本物の資本家は違う。
自分の希少価値を盾にして、相手から引き出す『単価』そのものを跳ね上げるんだよ!
――おい湊、これで今月のお前の総資産はどうなる?」
俺は電卓アプリをタップし、最新の資産管理シートを表示させた。
【現在の倉科湊・資産ポートフォリオ(5月下旬)】
・普通預金残高(運転資金・着金確定分):7,420,000円
・新NISA運用資産(オルカン+S&P500評価額):2,480,000円
・今月特単確定・未着金売上キャッシュ:+1,800,000円
★ 確定総資産見込み残高:【9,900,000円(大台目前!)】
「……九百九十万円。
来週、特単報酬の着金と同時に――ついに、悲願の【純資産1,000万円】の大台を一撃で突き破ります」
「へっ、よくここまで辿り着きやがったな」
源蔵の口元に、獰猛で、しかし誇らしげな笑みが浮かんだ。
「いいか湊。資本主義において、『最初の1,000万円』を自分の頭と腕だけで築き上げた奴にはな、一生食いっぱぐれない【無敵の資本家の血】が流れるようになるんだ。
――次なる第43話だ。
十九歳のライン工が拝む、通帳残高『10,000,000円』の最高の景色を見せてみろ!」
夜の窓の外、初夏の夜空に輝く満月が、俺たちの登ってきた軌跡を静かに照らし出していた。
手取り十四万の食品工場勤務の少年が、資本のルールをハックして手に入れる、最初のグランドステージ――。
純資産一千万円の大台突破のファンファーレが、すぐそこまで鳴り響いていた。
【現在の倉科湊ステータス】
・年齢/肩書:19歳/食品工場ライン工・個人事業主(特単交渉完全勝利・資産1,000万目前)
・総資産残高:9,900,000円(前話比:+1,860,000円 ※特単承認による利益爆増)
・月間不労/事業キャッシュフロー:+2,400,000円(特単適用・メディア自動化純利益)
・【今日の源蔵のマネー格言】:「時給を上げるために働く奴は三流、単価そのものを吊り上げる仕組みを作る奴が一流だ。成約率とLTVのデータを握れ。数字の前にひれ伏さねえ広告主はこの世に一社もいねえんだよ」
読んでいただきありがとうございます。
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