《目標:ニューヨーク》
同日―世界のどこか
この会議場らしき場所は、異様な静けさに包まれていた。円形のテーブルを中心に、複数の影がホログラムを囲むように座っている。
ホログラムの放つ青白い光が彼らの顔を照らし、正体の分からない陰影だけが浮かび上がっていた。一人がゆっくりと口を開く。
「世界は今、衝撃に包まれているようだな。しかし、依然として現実味がなく、宙に浮いたままの連中も多い」
別の人物が、くつくつと笑いながら続けた。
「なら、地面に立たせてあげなくてはな。浮いたままでは議論も危機感も芽生えん。かわいそうだろう?」
「議論の場は平等に与えなければ」
そう言い、ホログラムに指を滑らせる。空間に浮かんだ光の粒たちは列を成し一つの映像となっていく。それはゆっくりと姿を変え、精密な地球儀へと変化した。
その表面には赤い点が一つ。脈打つように点滅している。
「準備はすべて完了しております。許可さえ頂ければ、いつでも実行可能です。次のご指示を」
ホログラムの光を背に、リーダーと思しき人物が静かに立ち上がった。その声は淡々としているのに、なぜか底冷えするような圧があった。
「――許可する。計画を遂行せよ。分かっているな、失敗は許されない。いいか、これは『最初の計画』だ。ここで躓けば、世界に舐められる。第1印象ほど重要なものはない。計画は完璧だ。後は予定通りにこなすだけだ」
「了解しました。これより指示を出し作業に移ります。そして、実行班には成功率を最大に保つため、細心の注意を払うよう伝えておきます」
そう言ってその人物は一礼し、静かに部屋を後にした。扉が閉まる音がひどく重く響く。残ったリーダー格の男が、ホログラムを見上げながら呟いた。
「さて、世界の諸君。ショーの始まりだ。――3月4日まで、存分に楽しんでくれ。用意した『イベント』達が、このゲームをより面白くしてくれるはずだ。気に入ってもらえるかな?反応が楽しみで仕方ない」
ホログラムに映し出された地球儀には、一つだけ赤い文字が踊っていた。
《目標:ニューヨーク》




