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地球儀をこの手に  作者: 化琉壮一


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3月4日7時8分

 ※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

 2085年1月5日。世界中にあるすべてのスクリーンが

 ――一斉に暗転した。

 テレビ、電子掲示板、車載モニター、スマートフォン。人工衛星の通信網に至るまで、例外は存在しなかった。数秒の沈黙。そして、再起動された画面の中央には『誰か』が現れた。

 照明のない空間。人影は逆光の中で形だけを浮かび上がらせ、顔も表情も読み取れない。だが声だけは、世界中の耳に刺さるような鮮明さで響いた。

「グリニッジ標準時3月4日7時8分。私たちは世界を掌握する」

 その宣告は、恐怖というより『理解不能』という衝撃で世界を凍りつかせた。

「抵抗しても無駄だ。私たちは今日この瞬間から活動を開始する。――3月4日、その日が楽しみだ。」

 最後の言葉とともに映像は消え、世界のスクリーンはただの反射板と化した。残されたのは誰の声かすら分からない不気味な余韻だけだった。

 国際連合本部―2085年1月5日

 宣戦布告からわずか数分後。国連内はまるで巨大なボイラーの中に閉じ込められたかのように熱と混乱で満ちていた。

「誰がこんな真似をしたんだ! 全世界同時だぞ、前代未聞だ!」

「戦争どころじゃない。これは文明そのものへの挑戦だ!」

「各国のテロ組織を即刻洗え!この事態には一刻の猶予もない。これは人類史上最大の緊急事態だ!」

 多言語の罵声、怒号、議論が入り混じり、空間は阿鼻叫喚の様相を呈した。各国が黙々と議論し合う場とは場違いな状況がそこには広がっていた。代表が同時に指示を叫び、通訳が追い付くことは無く、辺りには書類が散乱し、デジタル画面は異常警告を赤く点滅させ続ける。

 この光景を地獄と呼ぶ者もいただろう。だが、それでもなお『未知』の前に人間が見せる当然の反応にすぎなかった。

 同時刻―インターネット上

 国連とは対照的に、ネットの反応はあまりに軽く、そして無邪気だった。

「こんなの、本でしか読んだことないぞ! 現実で起きるとは思わなかった!」

「映画で見たことあるような展開じゃん。」

「主人公はまだ?もう仕事の時間なんだけど?」

「3月4日って何が起こんの?まさか地球終わる?」

「メテオ落ちる?」

「おいそれ魔法のやつだろ。」

 恐怖よりも娯楽。そして災厄よりもネタ。この世界では、危機すらSNSの『祭り』として娯楽として消費されていく。

 中には冷静に状況を整理しようとする者もいたが、その声は軽薄なコメントの奔流に飲み込まれ、誰の目にも留まることはなかった。

 ――この日が、後に『人類史最大の転換点』と呼ばれることになるとは、

 この時点で想像できた者は、世界のどこにもいなかっただろう…

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