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戦国異世界で國盗りの翁  作者: 大上
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熊を蜜で釣る

「佐土原城ってこんな感じなんだー」


軍議の沈黙を破るように又七郎が城内を探索し終えて部屋へ戻ってきた。

西部戦線の動向はリアルタイムでは入って来ないがどうやら我が軍は劣勢を強いられているようだ。

というのも敵の大将は立花道雪であり、主力を配置しているらしい。


「まあ今はどうすることも出来んじゃろうて。我らは我らの仕事をするだけじゃな」


チラリと鉄山を一瞥する日新斎の口元(・・)はにこやかに微笑んでいる。

何がどうにもできない、だ。そんな事は微塵も思っていないだろうて。


喰えぬ爺から目をそらしながらこれからの謀略に想いを巡らせる。

幾つか手は打ってあるのだがどれが始めに実を結ぶか・・・





再び静寂に包まれる場に動きがあった。


「そこに誰かいるの?」

又七郎が警戒しながら立ち上がる。

軍議の間に一気に緊張が走った。



月明かりを受けた人影が跪きながら襖に浮かび上がってきたのだ



「入れ、三郎」


「ははっ」


返事の後にゆっくりと襖を空けて一人の忍びが入室してきた。

と同時に場の緊張は解かれる。


「流石の又七郎だな。こいつの気配はなかなか判らんものだぞ」


三郎は優れた忍びだ。確実に気配を絶っていたはず。



「なんとなくだよ、普段鳴かない声で鳥が鳴いてたからね」


鳥の鳴き声だけでは人かどうかなどは判別出来るものではない。

その他の環境の微細な変化を捉え、無意識のうちに正しい結論を導きだしたのだ。



やはりこいつの将来が楽しみだな。


「して鉄山よ、何故忍びを我らの前に呼び寄せたのじゃ?」


「この報告は計略の成否に関わらずお耳に入れておきたかったのです、日新斎様。」


三郎の忍びとしての役目は単に敵の戦力状況を探るためだけではなかった。





大友家は凄まじい速度で領土を拡張し有馬、龍造寺という二つの大名家を併合してきた。


確かに荒れた領地の復興は終わったのかもしれない。

しかし果たして彼らとの間にこの短期間で信頼関係を築くことができたのだろうか?


つい先日我が家を滅ぼした者に曇りない忠誠を誓えるだろうか?





答えは否である。


彼らは今、人生の、お家存続の岐路に立たされている。


長年かけて積み上げてきた上下関係もなく、比較的自由な身の振り方ができるのだ。


既に無くなった戦国大名としての矜持は大きな見返りを受けるためには手段を選ばせない。


つまりは島津、大友のどちらにつく方が得かを考えて来たはずだ。




そここそが今回の謀略のミソとなる。


忍びを使いある提案をしたためた書状を旧龍造寺家当主、龍造寺隆信(りゅうぞうじたかのぶ)へと持っていかせた。


内容を簡潔に纏めるとこうなる。





島津家へと下れば天下平定の後、働きに応じて旧領地の自治を認める。





滅びてしまったお家を再興してやるという甘い蜜には肥前の熊は抗えなかったようである。




龍造寺隆信は時が来たら密かに島津家へと寝返ることが決まった。



龍造寺家滅亡の原因である大友家への憎しみからか返答の書状はグシャグシャで血が滲んでいた。



























評価がついて嬉しくなったので久しぶりに更新しました。

どなたかありがとうございます!!

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