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楽して生きたい拳闘士  作者: 猫背
第1章
12/59

11話

弟子にされてから1カ月過ぎた。

この世界の1カ月がどんくらいとか1年が何日かは、実は未だに知らんけど。多分大差ないかな?


この爺さんの弟子になるのは俺の想像を超える面倒な事だったらしい。


まず修行と称して俺をいじめる。

内容は組手と魔物討伐。

組手は勝つどころか、攻撃が当たらない。

やる気無いからまぁそれはいい。

だが、ジジイの攻撃は大抵死ぬかもしれない攻撃ばかりで泣きそう。おかげ?で防御面は上達してる。


魔物討伐は2回死にかけた。

1度目はベアーの変異種のレッドベアーというやつにぶん殴られて半死半生になり、爺さんに助けてもらった。マジ焦った。


2度目はベアーに頭を噛まれて振り回されたあげく、ぶん投げられた。

闘気で頭を守ったんだけど投げられた時、体の左から木にぶち当たり、左半身ぐにゃぐにゃにされてまたも爺さんに助けられた。セーフ。


死にかけたのは2回なんだが、結構危険な目に合わされるから何度も爺さんに抗議したんだけど、毎回無視されて泣きそう。


他の困り事は王国での俺の立場?がかなり変わる事になった。

ギルドに行くともの凄く見られる。だが話しかけてこない。

受け付けのお姉さんは俺に愛想を振りまいてくれるようになったけど、常にビビられてる?って感じ。俺まだ子供だからね?そんな目で見ないでね?


あとは俺をギルドに登録してくれたオバさん、ギルドマスターのメリダオバさんにめっちゃ気に入られた。なんでか聞いたら、面倒事が押し付けやすくなったらしい。

それ多分魔物討伐だよね?それ俺がやらされてるからね?


さらに面倒なのが爺さんに取り入ろうと俺に寄ってくるやつが出てきた事だ。

嫌がらせに1度連れてったら飯抜きにされた。

2度と嫌がらせはしませんって泣きながら土下座したら焦りながら許してくれた。あぶねー。


そんな感じの毎日がいつも通りになってきたある日、始めて客が来た。


「久しぶり。その様子だとまだまだ死にそうに無いねアラド」

アラドは爺さんの事。


「なんだ?何しに来たマーリン」

「あんたに弟子が出来たって聞いてね。どんな子か見に来たのさ」

このお姉さん何者?隣に娘さんみたいな子がいるけど。


「別に大したもんじゃねぇよ。とっとと帰れ」

「少しくらいいいだろ?ちょうど稽古中みたいだしね」

「うるせぇ、小僧の気が散るだろ。殺しちまったらどうすんだよ」

そんな危ない攻撃しなけりゃいいだろ。すんなよ。


「人に見られるくらいどうって事無いだろ?早くやりなよ」

「お姉さん。僕修行とか言っていじめられてるんだ。お願い。助けて?」

「……………え?」

「クソガキ嘘ばっかついてんじゃねぇよ。第一、こいつがお前を助けるわけねぇだろ」

「ワンチャンあるしょ」

ダメかな?とか思ってるとお姉さん笑い出しちゃったよ。ダメかー。


「ふふ、君面白いね。もしかしてアラドを笑わせて弟子にしてもらったの?」

「違うよ。嫌だって言ってるのに爺さんが無理矢理」

「それはかわいそうね。それじゃ、私の所に来る?私は魔導の専門だけど、1からしっかり教えてあげるよ?」

マジで!?魔導が何かはよくわからんがチャンスだろ!


「小僧、やめといた方がいいぞ?魔術なり魔法なり才能無いと俺んとこより酷い目に会うからな」

「は?なんで?死にかけるより酷いってなんだよ?地獄でも行くのか?」

「あ?地獄?それは知らねぇけど、あいつは王国お抱えの魔導師で、実力は世界一とも言われてる」

うおー。すげぇじゃん。


「だが俺と違って周りに取り巻きなりお偉いさんだかがいるんだよ。才能無いとそいつらにいじめられっぞ」

「今とあんま変わんねぇじゃん」

「あいつらはもっと陰湿だぞ。四六時中見張られてる様なもんだしな」

それは嫌だなー。逃げ道無いじゃん。


「んじゃ、とっても残念だけどお断りさせていただきます。才能があったら喜んでお願いしたんですけど」

「ふーん。やっぱり君面白いね。魔導師の事嫌いじゃないんだ」

え?なんで。


「この小僧はただの阿保だからな。なにもしらねぇんだよ」

酷いジジイだ。否定出来ない事ばっか言いやがる。


「あら?そうなの。実はね、闘士と魔導師は仲が悪いの。魔導師の方が強くて、賢くて、有能な人が多いからなの」

「俺はこいつより強いけどな」

わかったからチャチャ入れんなよ。はい強い強い。


「へー。それ闘士は魔導師嫌うのなんとなくわかるけど、魔導師はなんで闘士が嫌いなのさ」

「それはあんたみたいに闘士は阿保ばっかりでムカつくからよ!」

ずっと黙ってた女の子が俺を馬鹿にする様にデケェ声で言ってきた。こいつ………絶対めんどくさい!


「いきなり喧嘩腰になっちゃダメだろ?自己紹介しなさい」

そういえばお姉さんも俺もしてなかったな。


「遅くなったけど俺はクライスト。よろしくお姉さん、お嬢さん」

「よろしく。私はマーリン。こう見えてアラドより年上だよ」

アンチエイジングの魔導師なのな。わかった。


「ほへー、そうなんですか。それでお嬢さんのお名前は?」

「あなたなんかに教える気はありません」

「はい了解。んじゃ爺さん、あとよろしく」

と言って俺は小屋に戻る。が、爺さんに首根っこ掴まれた。お客様をおもてなししなよ。


「なに帰ろうとしてんだ。ていうかお前ナメられてるぞ?良いのか?」

「別にいいだろ。まどうしさますごーい。ぼくじゃかなわないやー。んで修行すんの?俺やりたく無いしお客様対応しないとダメだろ?」

と言って小屋へゴー。出来なかった。


「んじゃ組手すっぞ。気ぃ散らして死ぬなよ」

「いや手加減しろよ。そんなだから闘士へぼいって言われんだぞ」

とか言ってる間に爺さんがパンチの連打をかましてくる。まだ喋ってたっしょ。危ないよ。


最初は軽い運動なのか、闘気を使わず攻撃してくる。

だが、俺はこんな攻撃受けも避ける事も素の状態じゃ出来ないので闘気を纏う。

だいたい生命力2割を使うのだが、これでギリギリ防げるくらいだ。


闘気は、纏えば身体能力が闘気の量によって上がるのだが2割を全身に纏うだけで普段の1.5倍の動きが出来る。

闘気は防御にも使用でき、腕や脚に集中させると刃物も弾いたり出来る様になる。

これのおかげでくまさんに頭噛み砕かれなかったのだ。


爺さんの攻撃に合わせて闘気を使い攻撃を防ぐ。

蹴りなども入れてくるが、俺が避けたり防げるギリギリの速さにしてくれているみたいで、なんとかかわす。

防御でいっぱいいっぱいになってるとジジイが、


「小僧。いつまで遊んでんだ。早く反撃しやがれ」

「耄碌してんのかクソジジイ。どう見ても防ぐので手一杯だろうが」

「いいからやれクソガキ。また魔物に食われかけっぞ」

なんて無茶振りしてくる。地味にトラウマ抉るなよ。


俺は無視して避けていると、このクソジジイが闘気を使い始めた。ますます反撃なんか出来ないだろ。

しかもジジイはギアを上げた様で、攻撃が更に早くなった。

俺は超集中を使って攻撃をかわす。これでもギリギリ避けられるってぐらい厳しい。


メチャメチャ激しい攻撃してきやがるくせに、ちょいちょい反撃しろって言って来やがる。勘弁してよ。


だが、ジジイは俺にどうしてもやらせたいらしく、たまにわざと隙を作る。

いつもは無視してたけど、今日に限って結構露骨にやってきた。なんのアピールだよ。弟子すげぇだろとかいらないだろ。


しょうがなく俺はジジイに合わせて隙だらけのボディに拳を叩き込む、つもりだったんだが。


「クソガキ、甘いぞ」

とか言ってカウンターしてきやがった!

闘気を2割増しにしてなんとかジジイの拳をかわすことが出来た。


「おいクソジジイ!危ねぇだろ!殺す気か!」

「なに言ってんだ。こんなの当たり前だろうが。

お前本物の阿保か?」

さすがにムカついた。乗せられてやろうではないか。


俺は闘気を更に5割増しにして、ジジイの拳をかわして懐に入り込む。

ジジイはもちろん俺を見ている。そして俺をぶちのめそうと膝蹴りをかましてくるが、


「バリア」

という魔術で壁を作って防ぎ、右ストレートをジジイの腹に思いっきりぶち込む。

すると、少しは効いたのかジジイは少し後ろに飛び退いた。


「おいクソガキ!魔術は使うなって言ってんだろ!修行にならねぇだろ!」

「あるもん使ってなにが悪いんだクソジジイ!悔しかったらお前も使えよ!」

なんて言い合いしていると、またマーリンさんが大声で笑った。俺たちそんな面白い顔してた?


「あっはっはっはっは!アラド、その子の言う通りだろ。悔しかったら魔術を使える様になりなよ。なんなら私が教えようか?」

「ふざけんなコラ!んなもん無くても俺は負けねぇよ!」

「はいはい、そうですね。それにしてもクライスト君。君、魔術使うんだね。抵抗とかないの?」

「え?どういうこと?」

闘気と魔力は相性悪くないんだけどな。


「さっきも言ったけど、仲が悪いから。闘士の中にも君みたいに使える人はいるけど、嫌いなものは使わないし、魔導師が見たら絶対バカにされるからね。闘気より便利だろ?ってね」

なるほど。確かに言われそう。


「でもそれじゃ闘士みんな、魔術も魔法も防ぎようないじゃん。どうしてんの?」

「すごく単純な話。物を使うか逃げる」

こっちのがよっぽどバカにされんだろ。


「あんた本当に闘士なの?そんな事も知らないし、平気で魔術使うなんて相当バカね!」

この子ヒドイ。俺泣いちゃうよ。


「まぁ結局のところ、魔導師すごいって事ですね。爺さんも見習えば?」

「俺の方が強いから見習うとこなんて無い。そもそも魔導師だって後ろでこそこそしてる根性無しだろ。そんな奴らにナメられるんじゃねぇよ」

俺のせいでは無くね?俺闘士の代表とかじゃ無いから。むしろそれ爺さんじゃん。


「ねぇ。それなら、私達の弟子同士でちょっと手合わせしない?面白そうでしょ」

「師匠!?突然何を言うのですか!」

「そうだ!いじめは良くないぞ!俺はまだ死にたくない!」

「クソガキ負けたら飯抜きだぞ」

何ノリノリで言ってんだこのジジイ。絶対負けるだろ。


闘士が絶対魔導師に勝てない理由がある。

それは闘士の攻撃が当たらない。

魔術や魔法で作った障壁などは闘気で破壊出来ないからだ。つまり無理ゲー。


「俺降参!負けた!はい終了!」

「1回だけだからお願い。ちゃんと手加減させるから」

「いいからやれ。勝ったら今日は休みにしてやるぞ」

マジかよ!?修行始めて以来無かった休みが目の前に!


「わかりました。師匠がそこまで仰るならやります」

「本当に休みをくれるならやる」

「本当だっての。だが勝ったらだからな」

「言ったなバカめ。俺は何をしてでも勝つぞ」

「お前何する気だよ」

俺は休みの為に鬼になる!許せ、名も知らぬ少女よ!


「それじゃ始めて」

入り軽いな。

「バリア」

と、予想通り本人をドーム状に包む障壁を展開した。


魔術はとても便利で、自分の想像通りの形に発言してくれる。さっき俺がやった様に膝蹴りを防ぐだけの小さいバリアを張る事も出来るし、お嬢さんみたいに広く使う事も出来る。

おかげで俺はもう手出しできません。


「これでもうあなたに勝機は無いわよ!攻撃が当たる前に降参しなさい!」

だがしかし俺にも秘策がある。

俺は走った。爺さんの小屋に向かって。


「おいクソガキ!てめぇ何してる!」

「ふはははは!これで君も俺を攻撃出来まい!」

「ふざけんな!小屋になんか当たったらどうする気だお前!」

と言う様に小屋の目の前に行き、攻撃したら小屋に当たるかもしれないと相手に思わせる作戦。名付けて、人質ならぬ小屋質作戦。


「何よそれ!卑怯よ!正々堂々と戦いなさい!」

そんな事言われても他に出来る事ないし。

「なるほど。でもそれじゃ決着つかないよね」

と言うとマーリンさんがパチンっと指を鳴らした。

すると、あら不思議。小屋が障壁で守られてるではありませんか。オワタ。


「これなら大丈夫よね?はいがんばってー」

「軽いよ。ていうかそれずるじゃない?こっちも爺さんに1回攻撃出来る権利ちょうだいよ」

「その1撃で終わっちゃうじゃない。だから却下」

この人鬼だな。でも美人だから許しちゃう。


「もういいかしら?あなたが攻撃してこないならこちらから攻撃するけど」

「だってよ爺さん。やっておしまい!」

「いやだ。とっととやれ」

もうちょい助けようって気ないのかね。


「遅い。こっちからいくわよ!ファイヤーボール」

「危な!熱いよ!」

咄嗟に飛び退いて避けたが、地面に着弾した時に炎の玉が弾けて熱が伝わってきた。

ていうかこれも当たると死ぬよ?危ないからやめよ?


なんて思っていると、どんどん打ってきた。

ていうか魔術は横文字使うのね。火炎弾とか言わんのか。


くだらない事を考えながら避け続けていると、急に体勢を崩した。

魔術で出来た窪みに足を取られてしまったのだ。てへっ。


「これで終わりね!」

と、俺に火炎弾をぶっ込んできた。マジで殺す気だ。

魔術は闘気で防げないからね?この子わかってる?


当たると死ぬので俺も防ぐ。魔術でね。

「バリア」

「闘士のくせに魔術使ってんじゃないわよ!卑怯よ!」

「んじゃそっちも闘気使っていいよ。それならおあいこでしょ」

「そんなもの使わないわよ!いいから早く降参しなさい!」

と言い、更に魔術でガンガン攻撃してきた。


ちょっとまずい。

攻撃で障壁が削られては魔力を注いで障壁を補修、という流れを続けていたのだが、魔力がかなり減りが早い。

だが、爆風がすごくて動けない。どうしよ。


「へいお嬢さん!もう魔力尽きちゃうんじゃないの?降参したらどうよ!」

「あんたと違ってまだまだ余裕よ!そっちこそ早く降参したら?」

と俺が叫んでお願いしたところ、まさかの余裕宣言。しかもわざわざ魔術で俺に返答するという嬉しくないアピール。


このままだと本当に負ける。休みが無くなる。

なので、爺さんに絶対見せたくなかった奥の手を使うことにした。ガチガチの切り札である。


逃げ回って6割くらいまで減った闘気と魔力7割の内、6割を合わせる。

これかなり難しいんだよねー。でも闘気と魔力の操作はめっちゃ得意なので、失敗はしない。


合成に成功したところで全身に纏う。

「身体強化」

残った魔力で自分を強化。

準備オッケーってとこで、障壁を解除する。

そして、腕をクロスして顔を守りながら女の子目がけて全力で走る。


「何!?あんた何してるの!?」

まぁ驚くよね。普通なら出来ねぇから。

俺は質問には答えず障壁を思いっきり殴り壊す。

「嘘!?どうして!?なんで!?」

「混乱してるとこ悪いけど、この距離じゃもうなんも出来ないよ?どうする?」

と、一応確認する。


「ぐぅ………降参よ!これでいいんでしょ!」

「うぇーい勝ったー」

これで休みゲットや!と思って爺さんを見ると、口をあんぐり開けてこっち見てる。

怖くてマーリンさんの方を見ると、こっちは目ん玉飛び出すんじゃないかと思うくらい目を開いてる。2人とも怖いよ。やめてよ。


すると爺さんがダッシュで俺んとこ来た。

いやだから怖い。


「お前…………今、魔術使ったのか?」

「身体強化だけね」

「何やった?どうやった?おい」

めっちゃ怖い。あと体ゆすらないで。ゲロ吐いちゃう。


休みやっともらえるかと思ったけど、もしかしてよりメンドくさくなった?

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