9話
はい次の日。
とりあえずカバンをチェック。
金は元どおりでした。まぁ、あの後来てない筈だから当たり前なんだが。
とりあえずおっさんが呼びに来る前にこっちから行く。
「おいおっさん。飯は」
「なんだクソガキ、もう来やがったのか。今日はもう終わりだ。お前が来るのが遅いのが悪い」
こいつまだわかってねぇんだな。良かろう。
「騎士団呼んでくるな」
「おい待て!飯は本当に終わりなんだよ!お前が起きねぇのが悪いんだろ」
「嘘つけ。部屋に入られたらすぐ起きるっつうの。出さねえなら金返せ」
「ふざけんな!俺は起こしたぞ!扉叩いただろうが!」
それは起きないわ。ごめん。
とりあえずテキトーに謝っといて、もう1つの用事を済ませる。
おっさんに洗濯用の桶を借りて洗濯をします。
なんと使用料銅貨2枚。今度はぼってないとかなんとか。
洗濯の仕方は簡単。
魔術で水出す。
魔術で洗う。
魔術で乾かす。
以上。
魔術は便利で、元々簡単に誰でも魔法を使える用に作られたものらしい。
なのだが俺は本当に簡単な魔術しか使えない。
理由としては、母さん曰くイメージが大事らしい。
だがそれも意味がわからん。
なぜなら、魔術は魔術紋っていうタトゥーとか魔法陣?みたいなもんに魔力をそそぎ、魔法名を口で唱えるだけなのだ。イメージいる?
なので俺には見たことない魔術は使えず、簡単なものしか出来ない。
魔術の良いところは、魔術紋を紙に書いたものでも出来るし、体に直接書いたりタトゥーみたいに彫ったものでも発動出来る。
しかも、魔術は技術的に進んでいるらしく、1つの魔術紋で多種類の魔術を使用出来る。
俺は1つの魔術紋で洗濯を出来たりもするのだ。
初めて使った時は、これだけで生活出来るんじゃないかと思ったよ。
洗濯をした後、水を入れ替え体を洗う。
この宿風呂ねぇんだと。田舎のクソガキが入れるやつはな!
「おらおっさん。桶」
「壊したりしてねぇだろうな。弁償してもらうぞ」
「いやしてないよ。俺いい子だからね?そんなことすんのおっさんの方だからね?」
「自分の物にんな事するか!お前今日だけだよな。とっとと出てけ。もう用ねえだろ」
最後まで嫌なおっさんだったな。今度嫌がらせにめっちゃ泊まってやろ。
宿を出て当面の目標を新たに決めようと思いましたが、1番大事な寝る所、つまり宿になるが泊めてもらえる可能性が今かなり低い。
なのでいっそ住める所を探そうと思い、ギルドのオバさんに聞きに行った。まともに相手してくれるのオバさんだけだもんね!
目的地のギルドに到着。早速中に入りオバさんを探す。が、いないんですけど。
見回してもいないので、受け付けに聞こうと思う。思うのだが、受け付けが2人しかいない。
片方は長蛇の列。そこは昨日と一緒。
もう片方。誰も並ばずスカスカの受け付け。
そこの受け付けのねぇちゃんがどう見てもヤンキーみたいなねぇちゃんだ。すごくいやなよかんがします。だがしゃあない。チャレンジ!
「すいません。お聞きしたい事あるんですけどいいですか?」
「………………」
「あのー?お姉さん?ちょっといいですか?」
「………………」
いやお姉さん。無言でガンつけるのやめてね?怖いよ。可愛いお顔が台無しだよ?
でも諦めたら野宿になってしまう。町中で野宿とか色んな意味でキツイよね?
「お姉さーん。質問あるんだけどー」
「チッ」
酷くなったね。泣きそう。
「お姉さん。ちょっとだけだから。聞いてよー」
「チッ。あっち並べよクソガキ」
あかん。メンタルボロボロなんですけど。
「いやあっち列長いでしょ。時間かかるのは嫌だからさ。それに俺お姉さんのが好みだし」
「は?お前喧嘩売ってんのか?ガキでも容赦しねぇぞ?」
めっちゃ怒ったんですけど。なんでやねん。
「いや本当だよ。だから聞きたい事あるんだけど、いいかね?」
「断る。お前みたいに平気で嘘つくクソガキは嫌いだ。ぶっ飛ばされる前にとっとと帰れ」
みんななんなの?この国子供冷遇の法律でもあんの?
「嘘ついてないじゃん。俺の相手すんの嫌なら他の人呼んでよ。オバさんいない?」
「知るか。あっち行け」
もう泣こ。…………泣いたら逆に蹴られそうだな。
どうにかお姉さんを説得出来ないか頭を回していると、周りで仲間みたいのと話してる奴らや、受け付けの列で浮かれて騒いでる奴らが急に静かになった。
なんだと思って周りを見ると、1人の爺さんがギルドに入ってきたみたいだ。
その爺さんは俺のいる所の受け付けにまっすぐ来た。
「小僧。終わったか?俺も受け付けしたいんだが」
「いや、ま「いえ!今終わりました!ほらクソガキとっととどきな!」
えー。態度変えすぎやん。この爺さんなんなんだ?
渋々俺は受け付けから離れる。
んで爺さんの後ろに並んだ。
「小僧。お前何してる」
「え?いや受け付けに用事」
お姉さんと話してた爺さんが急に話しかけてきた。びっくらこいた。
「お前冷やかしにでも来たのか?んな事してないでとっとと出てけ。そもそもガキが1人で何してやがる」
爺さんデカくてごついから怖いんですけど。周りもチラチラこっち見てんですけど。
「いや冷やかしなんかしてないよ。ここにいるオバさんに元々用があったんだよ」
「は?オバさんだ?」
「そう。昨日受け付けしてくれたオバさん。名前は知らないんだけど」
「あんだと?おいねぇちゃん。昨日このガキの相手した奴誰か知ってっか?」
「い、いえ、知りません。というよりこんな子供を相手する人なんていないと思いますけど……」
おいふざけんな!イタズラも冷やかしもしてねぇよ!
「だとよクソガキ。お遊びは余所でやんな。みんな忙しいんだよ」
「いや本当だって。お姉さんよりちょっと背が高くて、結構ふくよかで、お団子頭にしてるオバさんだよ」これで伝わるかな?
「あ?それってギルマスのメリダじゃねぇか?………いやあいつが受け付けなんてしねぇよな」
「そうですよ。ギルドマスターは多忙で受け付けなんてする暇ありませんから。それにこの子供の言う様な特徴の人は居ませんからまた嘘ですよ」
またって言うなよ!言ってねぇだろ!
「んじゃそこの人気者のお姉さんに聞いてよ。昨日、俺がオバさんに受け付けしてもらってる時居たから」
「なに?おいシャーリィ!昨日このガキ見たか?」
急にべっぴん姉ちゃんに声をかけるとめっちゃびっくりしながらこっちを向いた。可哀想だろ。
「え?え?あの、えっと、わ、私は忙しくてその子の事はちょっと…………」
この人もだめかー。
「でも誰が受け付けしたかは知ってるよね?」
これなら答えれるっしょ。
「いや、えっと、忙しくて………誰がいたか……」
いや嘘つくなよ。さすがにわかんだろ
「だとよクソガキ。もう気は済んだろ。邪魔だ、帰れ」
とか言って俺をめっちゃ威圧してきた。ひでぇな。どうしよ。
逆に爺さんに聞くか。無駄に歳とってねぇだろうし、爺さんは俺の言ったこと結構普通に聞いてくれてるみたいだし。
「残念ながらその帰る所で今困ってんだよね。爺さん住むとこって誰に聞けばわかるか知ってる?」
「あ?どう言うことだ?」
おー、やっぱ聞いてくれんじゃん。
「ざっくり言うと俺旅してるんだけど、どこの宿もクソガキお断りなんだよ。だから諦めて代わりの家探してるってわけ」
「ガキが1人で旅だ?………お前名前は?」
「クライスト」
「………そんだけか?親は?」
「親父はクラース。母さんはアイリス」
家名はダメって言われたけどこっちは関係ないよねー。
「………お前、アルバークの一族か?」
「それにはお答えできませーん」
そっち出すなよ。親父にバレたらぶっ飛ばされるんだぞ。
なんて思ってるとすげぇ急にみんな俺の方見始めた。怖い怖い。
「それでガキの1人旅か。って名前を出したらダメなんだろ?嘘ついてんのか?」
やばい。逆に疑われた。勘弁してくれよ。
「家名は言われたけど名前出すなとは言われてないから」
「本当か?…………わからん。だがもう1つ確認していいか?そうすればわかる」
こっちの質問多分答えなたくないやつだ。辛い。
なんて思ってると予想通り面倒くさくなってきた。
この爺さん闘気を纏い始めた。最悪だ。
「お前が本当にアルバークの一族ならこれくらいは受けても大丈夫だよな?」
は?受けても?なんかすんのかよ。
と思ってると爺さんが急に目の前から消えた。
凄まじい速さで後ろに回り込んで来た。こいつバカか。
そして、俺の頭をぶん殴ろうとしてきたので遅めの臨戦態勢。
「身体強化」
と言って魔術を使用する。魔術は名称を言えば発動出来ます。
次に闘気を纏う。生命力の1割を変換。
最後に超集中、という自分で名付けた状態に入る。これをすると体感速度が上がり、周りが遅くなっている様に感じることが出来る様になる。
これ全部夜の訓練で死にかけて編み出した。必死になるとここまでする様になるんだなって、子供ながらに思ったよ。
準備完了した所で振り向きながら爺さんの拳を避ける。
ついでに闘気を右手に集中して、爺さんの顔面目がけて寸止めパンチをしてやった。でも爺さんデカくて全然腕届いてないや。泣きそう。
お互いに腕を突き出した状態で少し固まっていたが、爺さんが闘気を消した。はいおわたー。
「おい小僧。今何しやがった」
「パンチ」
「違う!魔術を使ったろ!」
え?そんな怒鳴る?ツッコミどころそこなの?
実際周りもぽかんとしてこっち見てるし。
「使ったけどなに?なんもなかったしょ?」
「お前、闘士だよな。なのになんで魔術を使える?」
こいつなに言ってんだよ。
「誰だって魔術くらい使えるでしょ。なに言ってんだよ」
「……………お前、親から何も教わってねぇのか?」
なんか俺ピンチくさいな。確かに、家出されてから常識知らずの田舎のガキ扱いしかされて無いんだよな。
「小僧、ちょっと俺について来い。姉ちゃん、用事が出来たから用は無しだ。悪いな」
「いや、ついて行くなんて言って無いじゃん。誘拐って言うんだぞそれ」
「いいから来い。来ないと引きずって連れて行くからな」
え?怖い。って言ってもついて行くしか無いみたいだ。この爺さん、俺より多分強いし。俺のカウンターがっつり見てたもんな。
しょうがなく爺さんについて行くことにした。
めちゃめちゃ人に見られてるんだけど。
本当家追い出されてから嫌な事しか無いな。
しかもどんどん面倒な方向に行ってる気がして泣きそう。あかーん。