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嫌われ者と能力者  作者: あめさか
第二章 寺内奏子編
38/232

分担

 俺達はテントの中の物を元の位置に戻し、来た道を戻り始めた。


「取り敢えず、委員長が能力者だって説が濃厚になってきたんじゃないかな」

「確かに、あんな所で暮らさないといけない事情を考えればね……」


 七原は悲しげな顔で(うなず)きながら、


「で、委員長が能力者だとして、どう動くの?」


 と、問い掛けてきた。


「今は、とにかく情報が必要だ。委員長の家庭の事情とかな」

「委員長と親交が深い人に話を聞けばいいのかな?」

「それで聞き出せるとは思えないよ」

「何故?」

「委員長は、たぶん周囲に自分の事情を漏らさないタイプなんだと思う。誰かに言ってたら止められるだろ、テント暮らしなんて」

「そうだね。今朝までは、普段通りって感じだったしね。でも、それならどうやって調べればいいんだろ?」

「うーん。家族には話を聞きたいところだよな」

「なるほど。情報集めには相当な時間が掛かるかもしれないね」


 七原がそう言うと、黙って聞いていた優奈が口を開く。


「でも、そうも言ってられないのかもしれません」

「どういうこと?」

「さっき、こいつが言ったように怒りが能力発動の引き金になっているんだとしたら、今日中に何とかしないといけないんですよ。天気予報でも今日は午後から雨だと言ってましたから……」

「雨だから? どういうこと?」

「雨が降れば、さすがに寺内さんも家に帰るでしょう。そこには当然、家出の原因となる家庭環境がある。そうなれば……寺内さんは能力を使ってしまうかもしれません」


 なるほど……それで人体発火なんて事が起きないとも限らない。


「じゃあ、どうすればいいんだろう?」

「本人に話を聞くしかないと思います」

「それって物凄く危ないんじゃない?」


 七原は不安げな顔で言う。

 こういう話になったなら、当然、俺が行くしかないだろう。


「俺一人で行くから、大丈夫だよ」


 俺の言葉に、優奈が鋭い視線を向けてくる。


「あんたは寺内さんに接触しないで。当面の間、寺内さんに近付くのは禁止だから」

「はあ?」

「どんな事情があるのか、まだ分かってないけど、寺内さんが狙ったのは他ならぬ、戸山望なのよ」


 七原が『なんだかんだで心配されてるじゃん』というような顔で俺を見るが、この場において否定するわけにもいかない。

 俺は言葉を飲み込んだ。


「優奈ちゃんの言う通りだと思うよ、戸山君。戸山君は大人しくしておいて。私が委員長に話を聞くから」


 七原がそう言うと、優奈の視線が七原に向いた。


「いや、実桜さんも同じですよ。寺内さんの怒りには、実桜さんも関係しているかもしれません。寺内さんが何故、能力を使ったかが明確では無い以上、実桜さんが寺内さんに近付く事も許可できないです」

「でも……」

「実桜さんが原因で、寺内さんが罪を犯してしまったら、どうするんですか」

「……そうだね」


 七原が肩を落とす。

 優奈が七原を止めてくれたのは有り難い。

 だが――。


「だったら、どうするんだよ。誰が委員長と話すんだ?」


 こういう事が得意な奴と言えば――。


「遠田か?」


 まあ、遠田なら上手くやってくれるだろう。

 遠田はコミュ力が高いから、委員長とも打ち解けるはずだし、すでに知り合いって可能性もある。

 しかし遠田に、そんなリスクを負わせていいのだろうか?


「違うわよ。遠田さんが首を突っ込んで来るのにも、わたしは反対だから」

「じゃあ、誰が行くんだよ?」

「わたしが行く」

「は?」


 驚いた。

 優奈が、こんな風に(みずか)ら危険を冒すとは思えなかったからである。


「優奈は委員長と面識が無いだろ」

「だから、わたしが行くのよ。わたしに対する寺内さんの怒りは、確実にゼロだと言える。なんせ、わたしは寺内さんに会った事がないからね」

「ヘタな事をしたら、どうなるか分からないぞ。発火能力なんだから」

「大丈夫。あんたみたいなヘマはしないから」

「確かに優奈は慎重派だし、こういう事を上手くやりそうだと思うよ。だけど、委員長は何を考えてるか分からない奴だ。100人の内99人まで不快だと思わないような行動でも、委員長がそうだとは限らない。考え直した方がいいんじゃないか?」

「何を言われても考え直すつもりは無いから」

「何でそこまで……」

「発火能力なんて最悪すぎるのよ。人体発火なんて事が起きれば、その噂が一気に広まってしまう。そうしたら、その噂を聞きつけて『あの人』が帰って来るかもしれないでしょ?」


 優奈は楓の事を『あの人』と呼ぶ。


「なるほど。確かに原因不明の人体発火ともなれば、大きなニュースになってしまうかもしれないな。まあ、俺の立場から言えば、楓が戻ってきたら顔面をバットで突くチャンスなんだけどな」

「ダメ。あの人には絶対に帰ってこさせない。だから今回は、わたしが仕切る。あんたは、わたしの指示通りに動いて」


 俺は仕方なく頷いた。

 七原もだが、優奈もまた、一度決意を固めてしまえば、他の意見はがんとして受け付けない。


「じゃあ俺達は何をすればいいんだよ?」

「まだ寺内さんと何も話してないのに、どんな指示を出せっていうの? ちゃんと指示は、その都度するから」


 少し考えて、やっと優奈の意図する事が分かった。


「ああ、そういう事か」

「そう。わたしは寺内さんと話しながら、テレパシーで麻里奈に指示を伝える。そして、麻里奈が、あんたに伝えればいい」

「なるほど」


 確かに双子のテレパシーを使えば、優奈が委員長に接触し、その裏で俺達が暗躍するという分担が出来る。


「とりあえず、放課後は部室で待ってて。わたしが指示を出すまで」

「わかったよ。くれぐれも言っておくけど、今回の件は、身の危険に直結している。委員長に嫌われないように注意しろよ」

「あんたにだけは言われたくないセリフね」



 その後は全員無言で歩き続けた。

 双子は目配せをしている。

 恐らく、委員長とどうやって接触するかの論議をしている最中なのだろう。


 そして、七原は苦々しい顔で(うつむ)いていた。


 委員長を疑わないといけない事。

 優奈が危ない目に会うかもしれないという事。


 それを覆す事は出来ないだろうかと考えているのだろう。

 しかし、いくら考えても代案は思い浮かばないはずだ。この状況では、優奈が委員長と接触するというのが一番合理的な方法なのだから。


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