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贅沢な終わり

灰色の天蓋が、巡礼路に重くのしかかっていた。

朝から降り続く雨は、古い石畳を鈍く光らせ、私の歩調を容赦なく削っていく。本来なら雨音を枕に長逗留したいところだが、聖地の巡礼宿は情け容赦ない予約制だ。立ち止まることは、すなわち旅の破綻を意味していた。

雨幕の向こう、滲んだ視界に巡礼者専用の休憩所が浮かび上がる。吸い込まれるように飛び込んだ軒下には、先客が二人いた。

「——野宿で、ですか?」

思わず声が漏れた。青年の傍らには、魔獣除けの泥を塗りたくった巨大な背負い袋が鎮座している。その重厚な質量は、ゆうに二十キロはあるだろう。

「ええ。銀貨一枚惜しんで、三十キロは稼がないと、巡礼の火が消えちまうからね」

朗らかに笑う青年の瞳には、一点の曇りもない。金に物を言わせ、ふかふかの寝床を予約して歩く自分の足取りが、急にひどく卑屈で、泥濘のように重く感じられた。

あまりの眩しさに耐えかね、私は逃げるように隣の老巡礼へと言葉を投げた。

「……千二百キロの果てには、一体何があるんでしょうね」

「何もないよ」

老人は乾いた声で、しかし抗いがたい重みを持って答えた。

「そこにはまた、新しい千二百キロが待っているだけだ。巡礼の道に、終わりなどという贅沢なものはない」

雨樋から滴る水の音が、静寂を穿つ。拍子抜けして天を仰げば、いつの間にか雨は止んでいた。湿り気を帯びた風が、噎せ返るような土の匂いを運んでくる。あの一日七里を往く青年とは、もう二度と交わることはないだろう。

胸に宿った小さな切なさを道連れに、私たちは各々の聖地へと、再び泥を撥ね始めた。

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