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第1章:嵐の前の微笑み



めちゃくちゃ気持ちよく寝てたのに、最悪の音で叩き起こされた。


ベッドから這い出して、眠い目をこすりながら目覚まし時計を殴りつけて止めた。そのまま洗面所へ向かう。


鏡の前に立って、自分の顔を見つめる。


一晩で何この惨状?髪はボサボサ、顔は殴られたみたいに腫れぼったい。


マジで、このあたしがホームレスみたいに起きるわけ?ありえない。


まあ、熱いシャワー浴びて髪整えればどうにかなるでしょ。


数分後、もう出かける準備はバッチリ。雑誌の表紙を飾れるレベルってやつ。


結局、見た目がすべてってこと。制服に着替えた。卒業まであと数日だし…。待ってるのは大金と高給取りの未来、もしかしたらイケメン金持ち旦那とか?まあ、それは後で考える。


階段を下りていくと、父さんがスマホでニュースを見てた。世界の終わりみたいな顔して。母さんは朝食の仕上げをしてて、匂いだけでヨダレが出そう。テーブルに並べてくれて、みんなで食べ始めた。料理は最高だった。


「学校はどう?また学年トップ?」


「もうちょっとで!でも安心して、母さん。あのクソ遼がのうのうとしてられるのも今のうちだから。今夜は必要なら脳みそぶっ飛ぶまで勉強するし」


母さんはため息をついた。


「もう少し勉強を控えめにして、もっと青春を楽しんだら?若いうちしかできないこともあるのよ?あなたもそう思うでしょ?」


母さんは、スマホでニュースを見ている父さんに目を向けた。


パパ、ニュース読んでるときって、マジで聞いてないから。何言っても『うん』って言うだけなんだってば」


「まさか」


「ん。じゃあ見てて」


パパを見て、あたしは大声で言った。


「パパ、今日あたし万引きしちゃった!」


「へー、水野か」パパは画面から目を離さずに答えた。


ママは呆然と立ち上がって、パパの頭をポンと叩いた。あたしとママは顔を見合わせて爆笑した。


「ごめん、ニュース読んでたから……」パパは少し焦った顔で言った。


「どうしたの、あなた?仕事のこと?」ママが訊ねた。


「昨日、会社の同僚の娘が行方不明になってな……どうやらまた一人増えたらしい」


「男と駆け落ちでもしたんじゃない?よくあるじゃん、ティーンの恋愛ごっこ」あたしは食べながら、さらりと言った。


「水野、お前もティーンだろ」パパがあたしを見た。


「あたしはティーンじゃないし。17だし、ほぼ大人じゃん。ていうか、物心ついた頃からこういうのずっとあったじゃん。別に今さらって感じ」


「水野、あんた冷たいわよ。知り合いが大変な時なんだから、せめて思いやりくらい見せなさいよ」ママはあたしにがっかりした目で言った。


パパはあたしを見ると、ポケットから小さな箱を取り出した。


「まあ、話は変わるけど、学校に送ってく前に、お前にママと二人でやりたいことがあるんだ」パパは少し嬉しそうに言った。


「何?」あたしはワクワクして訊いた。


パパはゆっくりポケットに手を入れて、小さな箱を取り出した。


「お前の誕生日にって、ママと二人で買ったんだ。こういうアクセサリーとか好きだろ?まあ、俺は馬鹿馬鹿しいと思うけどさ……人それぞれ趣味ってもんがあるからな」


箱を受け取って開けると、真ん中に紫色の小石がついたネックレスが入っていた。正直、安っぽい安物。今日だけつけて、あとは引き出しにしまって二度と出さないだろうな……と思ったけど、とりあえず笑顔を作って言った。


「ありがと、ママ、パパ」


その後、パパとママがあたしを抱きしめてきた。お決まりの家族ハグ、感動シーンってやつ?もういいってば。


朝食の後、あたしとパパは車に向かった。今日はパパが学校まで送ってくれる日だ。

なんか静かすぎて、音楽つけた。 クソみたいな曲なのに、パパは軽くノってんの。マジでパパの音楽センス、犯罪レベルじゃん?


いきなりラジオからニュースが入る。


「日本各地で失踪事件が相次いでいます。本日すでに二百件に達し…」


その瞬間、パパがラジオを切った。


「そのニュース、もう見た。いいか、紗綾香。学校から一人で帰るな。友達と一緒か、タクシー使えよ」 「今日、迎えに来てくんないの?」 「今日はママと買い物だ。遅くなる」 「はーい」


学校まで送ってもらって、車を降りる前にいつものハグ。友達の前だったら世紀の黒歴史確定だけど、誰も見てないからあたしも抱き返した。


「またな、娘」


授業はあっという間。あたしの得意な数学だし。もう帰り道。


道で立ち止まる。友達待ってたのに、スマホにメッセージ。


「ごめん、今日ママが迎えに来ちゃった。店員が病気で手伝ってって」


「わかった、大丈夫」って返した。


一人で帰るしかないじゃん。


歩き出すと、通りがガラガラ。田舎だってわかってるけど、人が消えたみたい。この町、ゴーストタウン化してね?まあ、みんなもっといいとこ探して出てったんだろうけど。ここ、マジで世界の果てだし。


家の前に着いた。ポツンと頭に水滴。見上げたらどんよりした空。絶対大雨降る。


家に入って、いつもの叫び。


「ただいまーっ!」


でもシーンとしてる。


やっとプライベートタイム。冷蔵庫開けてサンドイッチ、ジュース。着替えもせずリビングでテレビつけて、ドラマ一気見しながらサンドイッチ食ってたら最高じゃん。プリンセスライフもいいとこ。


そしたら二階からドーンって音。


ピタッと止まる。一人だと思ってたのに。


サンドイッチテーブルに置いて、階段へ。


静けさがゾワゾワする。心臓バクバクうるさい。風の音だったんだろうな…ってテレビに戻ろうとしたけど、やっぱり行くことにした。


階段をゆっくり上って、自分の部屋まで。そーっとドア開ける。


なんもない。別に変なとこない。やっぱり風だったんだ。


そしたらまた大きな音。今度はパパとママの部屋から。


近づくほど音が大きくなる。


もしかして二人とも家にいた?


部屋の前まで行って、ドアノブ回す。ドアを開けた。


そこに男が立ってた。背が高くてフード被ってて、鉄の仮面。目が赤く光ってて、あたしを獲物みたいにじっと見てる。体がガタガタ震える。声も出ない。一歩でも動いたら死ぬって本能が叫んでる。震えが止まんないのに、落ち着こうとしてそーっと一歩下がった。


足元に何か触れた。


床を見る。


パパとママが倒れてる。息がない。


声が出ない。


嘘だろ…。


何これ。

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