表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/61

57 突然、生命の危機に陥るのは勘弁してもらいたい!

「随分と遅かったな、アヤノよ」


「うん、ちょっと道に迷ってね」


路地裏から抜け出した俺が宿に戻ると、すでにヤエたちも戻っていて、ソファーに座ったり、ベッドに寝転がったりとくつろいでいる最中だった。


「それにしたって時間かかりすぎじゃない?」


なぜか不機嫌そうな表情の朱夏が、怪しむように目を細めた。


「それくらい道が入り組んでいたんだよ」


それに対し、俺はそう答えた。


本当は、残念サキュバスと再開したりしたことで遅くなったのだが、それは隠しておくことに決めた。

街中でサキュバスに会ったなんて言ったら、面倒なことになるのは明白だからだ。


「ふーん、そうなの」


「ああ。……それより、お前らの方は随分早く帰って来たんだな。デートはどうしたんだよ?」


「「「デート……?」」」


俺が聞くと、なぜか三人ともピクッと反応して、あからさまに不機嫌な態度をしだした。


なんだ、何か嫌なことでもあったのか?


ちなみにだが、俺はこのデートは結構楽しかった。相手が男というのが大いにマイナスだが、カジノを楽しめ、さらに、その恐ろしさを知ることもできたという実りもあったからな。


それに、何より自分の金を一銭も使わずに遊べるというのは、かくも楽しいものだと分かったのだ。


自分の財布を開かず、相手の金を使ってカジノに興じる。

なんと素晴らしいことか! 嗚呼、生きててよかった!!!!


「……どうしたんですか?」


急に黙り込んだ俺を見て、高宮が怪訝そうに声をかけた。


おっと、話が逸れてしまったな。


「ううん、なんでもない。そんなことより、なんか嫌なことでもあったのか?」


俺が聞くと、不機嫌そうな朱夏がソファーから立ち上がり、顔を歪め、堰を切ったよう泣きだした。


ど、どうしたんだ!?

まさか、ナンパ男たちに酷い目に遭わされたんじゃ……。


「あ、あいつら酷いのよ!! アタシを子供扱いして……アクセサリーショップでナンパ男も店員も子供用のを勧めてくるの!!」


え、しょうもな!?


「え、しょうもな!?」


「しょうもないってなによ!?」


しまった、思ったことが声に出てしまった。


でも、そんなに泣くことか?

ムカつくのは、まあ分からんでもないけど。


そんなことを思っていると、それが態度に出てしまったのか、朱夏が涙目で睨んでくる。うわ、可愛い。


「ま、まあ、朱夏が怒る理由は分かったけど、店員たちも悪気があったわけじゃないと思うぞ?」


「そんなこと分かってるわよ!! ムカつくものはムカつくのよ!! 結局、大人用は却下されちゃったし!!」


俺が宥めても、朱夏(涙目可愛い)は、プンスコと怒りは収まらないご様子。


確かに、自分が気にしていることをされるのは傷つくよな。

まあ、仮に俺がナンパ男や店員の立場でも、同じことをしたと思うけど。

朱夏に大人用のアクセサリーは、100%似合わないし。


「それで怒って帰って来た、と?」


「そうよ!」


「じゃあ結局、アクセサリーは買わなかったのか?」


「いいえ、店で一番高い物を買ってもらったわ」


買ったんかい!

しかも店で一番高いやつ(子供用)を!!


しっかし、一発目から強烈だったな……この分だと高宮たちのも碌でもなさそうだなぁ。

あー、嫌だなー。聞きたくないなー。


だが、怖いもの見たさというか何というか、聞きたくもある。


「……高宮さん、あなたはなぜ不機嫌なんでしょうか?」


俺は、恐怖よりも好奇心が勝り、高宮にも聞いてみることにした。

まあ、高宮だから朱夏よりもまともだろうしな。


「……腕を折って投げ飛ばしたら動かなくなったので、帰って来ました」


ただの傷害事件じゃねぇか!?

しかも、下手したら殺人にもなりうるやつだ!?


誰だよ、高宮はまともとか言った奴!? 一番あぶないじゃねぇかよ!!


「さ、参考までに、どうしてそうなったのか教えてくれ……」


「ビーチに連れていかれて、そこで素っ気ない態度をとっていたんですよ」


「ふむふむ」


「そしたら、その男が私をハズレ扱いした挙句、綾乃さんを狙おうとしたのでやりました」


なるほど。それは男が悪いな。

間違いない。そうに違いない。そう思うことにしよう。そうでないとやってられない。


よし、この話は男が悪いということにして終わりだ!


次は、ヤエだな!

…………………………ヤエか。


「……ヤエさん、あなたはどうして不機嫌なんですか?」


「……妾は皆と別れたあと、男の一人と高級れすとらんに行ったのじゃ」


知ってた。


「男は妾に、気の済むまで食べて良いと言ったのじゃ。だから、妾も遠慮なく食べることにした。しかし……」


なんだろう、話のオチが見える気がする。


「満腹になる前に店の料理が無くなってしまっての。じゃから、別の店に行こうとしたら、連れの男が逃げてしまったんじゃ」


「まったく、甲斐性のない男じゃ!」と、ヤエは苦虫を噛み潰したような顔をして、吐き捨てるように言った。


いや、お前に好きなだけ食わせられるような甲斐性のある奴は、どこに行ってもいないと思うのだが。


それにしても、この街の高級レストランは、水一杯1000ベルとかいう、代○山システム(頭おかしい値段設定)だったはずだ。

その店の料理を枯渇させたとなると、その勘定は……恐ろしい! ちょっとしたホラー映画よりも怖いぞ、これは!


……とまあ、全員の不機嫌になった理由を聞いてみたが、物の見事に全部碌でもないな!

俺の他人の金をカジノで擦ったというエピソードが可愛く見えてしまうレベルだ。


俺が辟易としていると、ヤエが俺に近づき、急に匂いを嗅いできたのだ。


「お、おい……どうしたんだ急に?」


「スンスン……お主、なぜ身体に発情した雌の臭いを纏わせておるんじゃ?」


「……は?」


なんのことだ?

俺がいつそんな臭いを……あっ、サキュバスと再会した時のアレか!?


「ふーん、その顔、心当たりがあるみたいね」


「何もしていたのか、しっかりと教えてもらいましょうか。フフフ」


「い、いや違うんだよ……サキュバスに路地裏に連れて行かれて……」


「何それ? もっと上手い言い訳しなさいよ」


違うんです、本当なんです。


「綾乃さんの身体で、お楽しみだったんですね? ……許しません、殺します」


「クク、たっぷり話を聞かせてもらおうかの」


三人は、素早く俺を取り囲み、ジリジリと距離を詰めた。


あ、これはもう逃げられない。


どうしてこんなことになったんだ?

そんなことを考えたが、どこで死亡ルートに片足を突っ込んだのか全く分からない。


ただ分かるのは、俺が生きて明日を迎えることは、不可能であるということだけだ。


突然のことで混乱する俺の首を、三人と手が一斉に掴んだ。

恐怖か窒息かは知らないが、一瞬にして気が遠くなるのを感じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ