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55 たった一人での観光タイム!

ナンパ男に別れを告げた俺は、とりあえず、街のめぼしい観光スポットを一回りすることにした。


まず始めに訪れたのは、白い砂浜とエメラルドブルーの海を一望できる"デレニスビーチ"だ。


一年を通して、温暖な気候のこの街のビーチは、観光客からの人気も高く、そういうスポットの多いデレニスでも、特に人の集まる場所だ。


そして、今もカップルやナンパ目的の男女が大勢集まり、喧騒に包まれている。


そんな場所に、一人でいる俺って……。


謎の敗北感、虚しさを感じてしまい、無駄に心にダメージを負った俺の耳に、カップルの会話が聞こえてきた。


「ヒナちゃーん、ホントに可愛いねぇ」


「キモいです。触らないでください」


「そんなこと言わないでさぁ……」


「近づくのもダメです。半径5メートル以内に入ってこないでください」


なんか不穏な空気だ。

そして、なんか知り合いのような……。


「……ちっ、こいつはハズレだな。アヤノちゃんあたりの方が良かったかな?」


「なんですって?」


「えっ、聞こえてた!? い、いや……これは違うんだよ……」


「私をハズレ呼ばわりした挙句、私の綾乃さんを狙おうと? ……ウフフ、お仕置きです♪」


「ヒ、ヒギャァァァァァァァァァ!!!!?」


あっ、男の腕があらぬ方向に……。


いやぁ、さすが世界的な観光名所だな。

危ないやつも沢山いるみたいだ。


絡まれたくなかったので、俺は、断末魔の叫びが響く、地獄絵図と化したビーチに背を向けた。



ビーチを離れた俺が次に訪れたのは、高級レストラン街だ。

ここはデレニスにおいて、カジノ、ビーチに次いで有名な場所である。


高級食材をふんだんに使った料理は、舌の肥えた美食家をも唸らせ、世界中の金持ちが足を運ぶというレストランが数多く立ち並ぶ、そんな場所だ。


うーん、どこも高価(たか)そうな外観をしているな。


こんな場所にヤエを連れてきたら……うぅ、寒気が……考えただけでも恐ろしい。


ただでさえ、やつに無制限に食わせたら、普通の店でも100万は軽く飛んでしまうのだ。

ただの水でさえ1000ベル以上取るような店で、ヤエに食事をさせたら、きっと天文学的な金額になってしまうだろう。


そういえば、ナンパ男と一緒に食事に出かけたヤエは、今どこにいるんだろう?


それが頭をよぎった時、レストラン街のある店に人だかりができていることに気がついた。


「なんだあの娘! もう100回は追加注文してるぞ!」


「あの小さな身体のどこにそんなスペースがあるんだ!?」


「店の料理食い尽くすつもりかよ!?」


人だかりの中から、そんな声が聞こえてくる。


へぇ〜、そんな娘がいるのか。

実はそれがヤエだったり……なんて、そんな訳無いよな。


すると、店の中からも声が漏れてきた。


「ふぅ……おい店員、おかわりじゃ!」


「か、かしこまりました!」


「お、おい……いくらなんでも食べすぎじゃないのか!?」


「何を言うとる、まだ腹八分目程度じゃ。あ、これおかわり!」


「そ、そんな……」


「お、お客様……現在のご注文の時点で既にこの額なのですが、お支払いは……どちらが?」


「この男じゃ」


「うわああああああああ!!!!」


うわぁ、なんか修羅場みたいだな。


人だかりが多くて、店の中は見れなかったが、男に悲鳴からして相当な値段になっていたのだろう。


それにしても、大食いしていた娘の声は、聞き覚えがあったな……のじゃ口調なところも、うちの狐人族とソックリだ。

多分別人だろうけど。


……多分別人だろうけど、鉢合わせする前に、ここから離れた方が良さそうだな。

なぜだか、今、あの二人組と会うのはまずいと俺の脳が危険信号を出しているし。


そんなわけで、俺はレストラン街をダッシュで駆け抜けたのだった。



まったく、せっかくの観光タイムなのに、ロクなやつと遭遇しないな。


とはいえ、ここはさすがに大丈夫だろう。

何せここは、良質なジュエリーなどのアクセサリーや衣服が販売されている店が集まる所だ。

気品溢れるマダムや名家のお嬢様はいても、変な輩などは存在し得ない場所なのだから。


まあ、そんな所には、俺も大して用はないが、せっかくだし少し冷やかしに見てみるか。


そして、適当な店に入ろうとドアに手をかけた時、店内から幼い少女の怒る声が聞こえてきた。

……今日何回目だよこの展開。


「はぁ!? なんでアタシに似合うのがこんなお子様向けのアクセサリーなのよ!?」


「い、いや……とっても似合うと思うよ?」


「それってアタシが子供だって言いたいの!? ……もういいわよ!!」


そんな声とともに、少女の怒りを体現したような大きな足音が響き、ドアの方へと近づいて来るのを、俺は感じ取った。


「さようなら、二度と話しかけないで!!」


とっさに物陰に隠れた俺に気づくことなく、少女はプリプリ怒りながら去って行った。


身を隠していたから、俺は少女の姿を確認できなかったが、まるで朱夏のような怒り方だったな……きっと違うけど。


と、とにかく、ここからも早いとこ離れた方が良さそうだな。


そうして、できるだけ遠くを目指して走った結果。


「アレ、ここ……どこ?」


俺は、完全に道に迷ってしまった。


しまったなぁ……不案内な場所で不必要に歩き回るべきじゃなかったか……?


いつの間にか、人通りの少ない路地に来てしまった俺は、いまさら後悔の念に襲われていた。


歩いた感じだと、そこまで街の中心地から離れた感じはしなかったんだけどなぁ。

そんな時、俺の背後から--


「お姉さ〜ん、そんなトコでひとりでなにしてるんですか〜?」


幼い少女の声で、声をかけられたのだった。


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