薄明の談論
怒っている。それは判る。でも、それ以外解らない。無いって言った?なにに、いつ。アイツって誰?私と一緒にいた誰かのこと。きっと最近のこと。何か、今までと違う、ああ、
「二人っきりで、随分仲が良さそうだったよね。いつからそんな関係だったわけ?」
ふと思い当たったのに気付いたのか、唇の端を吊り上げてルカが嘲笑う。みたこともないかおだった。これだけ整った顔立ちをしていても似合わない表情なんてあるんだな、なんて一瞬脳裏を過ぎった。
…私そんなに日ごろの行いが悪かったかな。最近誤解されてばかりだ。
「…違うよ。ルカの考えてる事は、たぶん違う。」
情けなく眉尻が下がるのが自分でも解る。きっと説得力なんてこれっぽっちも無かったんだろう。ルカはわずかに片眉を上げてみせただけだった。
「話をしよう、ルカ。出来れば座って落ち着けるところで。」
言わなくてもいいことだと考えていた。回避すべき未来なんて言うほど大げさなものは無いし、逆に成さなければならない目標が示されているわけでもない。理解してくれと嘆願する必要はないし、言ってしまえば、ちょっとずるいことだから、黙っていようと。
でも、実際には何やら不穏な影がちらついていて。それに泣く人が居て。それを、もしかしたら、影から笑っている人が居るかもしれなくて。その笑顔と、かの無実を望むのならば。
「協力者はきっと、もう少し居てもいいはずだから。」
そう言ってへたりと笑えば、ルカは何かを堪えるように唇を噛み、ややあって大きく息を吐いた。
「…ルナのその目、昔っから嫌いだったんだよね。」
「…うん?」
くしゃりと前髪を掴んで、苦々しげにルカは言う。
「ここに居るようで、居ないような。どこか違うとこを見てるのに、ちゃんと筋が通っていて。」
自分がひどく幼く、無力に感じられるのだと。どれだけ知識を蓄えても、能力を養っても、それは変わらなかったと。
「あー、それは…ごめん。」
「そういうとこも嫌い。」
おうふ。染み付いているとりあえず謝っとこうな日本人精神が…ではなくて。うん、まあ、前の記憶があっても無くてもこんな感じだったらしい私がいつも引っ付いていたから、つられてルカまで子供気無くなったのかと思っていたのだけれど。そっか、違ったのか…
「…いいよ。話そう。」
もう一度、これ見よがしに溜め息を吐いたルカは、そう言ってすうっと左手を払う。空気が揺らぎ、わずかに足元がぐらついて、無意識に下げた視線をはたと上げれば。
「お帰りなさいませ、ルカ様。」
ルカの部屋だった。え?なに?ワープ?テレポート?そんなのできるの?ルカ天才なの?急な場面展開(物理)にちょっとついていけないよ?というかマイラの対応慣れてるね?日常茶飯事なの?いつものことなの?
「マイラ、お茶淹れて。あと、メイア呼んできて。」
いいよね?と問うてくるルカに頷いて返して、勧められるまま椅子に座る。えええ、さっきのって空間切結でしょ、すごいなぁ…
「…それで、ルミィ・エディスとはどういう関係なの。」
向かいに座ったルカがじろりとこちらを見やる。関係、と聞かれピンとくる言葉が無かったため、しばし視線を泳がせた後、
「えーと、友達…?」
「はぁ?友達同士でキスするわけ?」
「…はい?」
なんだその誤解。どこから生まれた。一体ルカは何を見てそん…んんんんんん、
「…あー…その辺を見たのね…」
きっとあれだ、おでここっつんの辺りだ。なるほど見た目男女であの距離じゃそう見えても仕方がないのか…女子間のスキンシップ多かったからなぁ前の私…
「キスはしてない。それに、ルミィは事情ちゃんと知ってるから。」
とんとん、とチョーカーを指先で叩いて示す。
「…話したの?」
「うん。帳が下りてたでしょ?」
「だからか…」
そう言って安心したように、それでもどこか不本意に、ルカは溜め息を吐く。
「あんまり溜息つくと幸せ逃げるよ?」
「じゃあ逃げた分ルナが捕まえといてよ。これから大脱走の予定があるから。」




