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AM4:00

『今日、この世界は破壊されます』


まるで雨を伝えるようにニュースキャスターがそう言った。







一時間前の放送は既に問題になっていて、あのニュースキャスターの映像が何度も繰り返される。


「バカらしい」と有名かどうかわからない評論家が言い、それに司会者が適当な相槌を打つ。

「しかし、」と有名大学の教授らしき人がそれを否定し、それにテキトーに相槌を打つ司会者。


「バカらしい……」


そう呟いたのは、地元で有名ですら無く、有名大学にさえ所属せずに至って平凡な僕だった。


平凡。そうは名乗ったが、実際の所ソレ以下にあたる僕は溜め息を盛大にわざとらしく吐いて、テレビから視線を外す。


「バカらしい、では無く。バカなのです」


そう言ったのは無表情なメイド服の女性。世間一般の評価は知らないが、おそらく美人と呼ばれる部類の人種だ。


彼女は僕の親から遣わされたメイドで朝から夜、もちろん夜には下の世話までしてくれるという非常にありがたいメイドである。

そんな設定なら僕は泣いて喜んで、二十年程守られてしまったこの、童貞を捨てた事だろう。


彼女の説明をするには些か難儀する事になる。それは平凡以下な僕は当たり前だが、多分言語能力に長けた文豪達でも無理だ。


なぜか。


「……誰だよ」


テレビを見ていたら突然…というかさも当たり前のように今の場所に居たからだ。

彼女が何者か知りたければ彼女に聞くか、ホームズでも呼んでくれ。


「あの女の言ってる事は正しいと言うのに」

「いや、質問に答えろよ」

「実にバカらしい」


無視ですか。あー、無視ですか。

座りながら溜め息を吐く僕とそんなシャツとトランクスタイプのパンツを吐いた男を見下す美女メイド。

立っている彼女が座っている僕を見下すのは仕方がない事だ。もちろん、整った彼女の口から辛辣な言葉が吐かれたら、


「女性がいるのにそういう格好なのはいただけませんね。変態」


ズボンを穿くとしよう。






ワタクシがここに来た理由を話します」




箪笥に埋もれているズボンを探し当てるのに苦労していた僕の耳に彼女の声が聞こえた。

ベルトは見つけたのにズボンは一切見当たらない。


「後で真面目に聞くから、ちょっと待って」

「えぇ、素晴らしい眺めですので…もう少し待つとしましょう」


背後から声が聞こえた。正確には後ろのやや下の方。

タンス上部の引き出しに入れた筈のズボン類が一切ない。ジャージすらない。


「むにぃ」

「ヒャァ」

「実に素晴らしい。この布越しからでも解る弾力。瑞々しさ。是非、埋もれたい」

「えっと」

「しかしながら、私個人といたしましてはもう少し……そうですね、フニフニ感、つまり肉感がほしいです」


なぜ僕は美人メイドにお尻を揉まれてるのだろうか。驚きのあまり男性らしからぬ声が出てしまった。


「いい加減に、」

「今、大事な契約の途中です。邪魔をすると爆発します」


ムニィとさらに力を入れて揉まれるお尻。契約とはいったい何なのか。

一切検討がつかないが、爆発は勘弁してほしい。というかどこが爆発するというのか。お尻?お尻が爆発するの?

とにかく、色々と身の危険を感じた、というか今現在も感じてるので急いでズボンを見つけたい。


「スカートで良ければありますが」

「……」


首だけ後ろに向ければ、無表情でこちらを見上げてる美女メイド。両手は僕のお尻を揉んでいるのが非常にオカシイ。

そんなメイドには手荷物はない。もちろん着ている服以外は何もない。カチューシャがある程度だ。

そんな彼女がスカートを僕に、渡す?



つまり、脱ぐのか。


「どうぞ」

「…………―――ッ!」


絶句。

開いた口が開かないどころか、口さえも開かなかった。

瑞々しい太ももに綺麗な白のショーツ。上半身はメイド服ながら下半身にはそれだけという非常に夢のような光景。



白昼夢というのは怖い。

一瞬ながら有難い幻覚を見た後に、現実を直視した。

彼女の手に握られているのは確かにスカートだ。さも当然のようにエプロンドレスがついている。


彼女の着用している長いスカートに対して、非常に短いが……確かに、メイドスカートだった。


「ズボンが……」

「なるほど、ホットパンツがご所望とは……なかなかにわかっていますね」


ダメだ、落ち着け落ち着くんだ。

このままノまれてはいけない筈だ。喩え美女メイドが片手にメイドミニスカートを持って逆の手で僕のお尻を揉んでいようが、落ち着くんだ。

落ち着いて、深呼吸をしよう。


「冗談はここまでにしましょう」

「力を入れて揉んでるということはソッチが本題かよ!」

「アナタにはこのクソみたいな世界を壊してもらいます」

「頼むから、頼むから真面目な反応をしたいから揉むのをやめろ!」












なぜか彼女が持っていた僕のズボンを穿きようやく真面目な話を聞ける。


「……で、なんだ」

「ご主人様の臀部が魅力的過ぎて生きるのが辛い。世界を破壊してください」

「卑猥で矮小な悩みから壮大な解決方法を選択したな、オイ」


溜め息を吐いて腕を組む。出てくるのは疑問。

少なからず、僕は彼女を知らない。僕のお尻を狙う美女メイドなんて知り合いにいない、もしかしたら嫌すぎて記憶から抹消してるかもしれないが。


次に彼女が言った言葉だ。臀部が魅力的、ではなくて。世界を壊す?無理だ。出来たとしても人間一人では不可能だ。


更には破壊する人間は僕、ということになっている。転生主人公でなければ、天性の才能もなく、社会的に点数をつけるならおそらく24点と微妙な点数がつく僕だ。


「ご主人様」

「その呼び方は僕に対してか?」

「?何か不都合が…?」

「……」


小首を傾げて整った顔をキョトンと…まぁ無表情なのだが、とにかく不思議がる彼女が怖い。


「頼むから、他にしてくれ」

「雄犬」

「他」

「種馬」

「他」

「下僕」

「……僕を貶したいだけか?」

「他意はありません、駄犬」


他意はない。つまり、貶したい一心なんだな。そうだな、絶対そうだ。


「もうご主人様でいい」

「ではご主人様。アナタは人間ではありません」


淡々と言われた言葉に絶句……というか、思わず息を忘れた。

僕が人間じゃない?僕は人間だ。生まれて二十四年と少しの時間を過ごした。怪我をすれば赤い血が出て、腕も伸びないし、特殊な能力も出会いもなかった。確かに今現在、特殊な出会いの真っ最中だが、これは違うだろう。


「何時から人間の血が赤だと勘違いしていたんですか?」


勘違い。もしも血の色が赤以外ならば、俺は人間ではない。人間というジャンルから逸脱した、ナニかだ。

渇いた喉に唾液通して、震えた声を出す。


「嘘……だよな?」

「嘘でございます」


先ほどと同じように淡々と放たれた言葉に殺意が沸いた。

近くにあるのはスリッパぐらいしかないが、確かコイツは昨晩エージェントGを撃退した勇士だ。ダメージは大きいだろう。


「人間の血もご主人様の血も赤です。ご主人様は今、人間に区分されております」

「……今?」

「先程から申し上げてております。ご主人様にはこのクソみたいな、」

「待て、待ってくれ」

「……排泄物のような世界を破壊していただきます」

「オイ!クソを排泄物に言い換えろって意味で止めた訳じゃねぇよ!」

「………このウン」

「やめろ!」

「ではどうしろと言うのですか。まさか私のようなメイドに下の世話でもさせるつもりですか?泣きますよ?泣いて喜びますよ?臀部触っても奉仕ですの一言で片付けますよ?臀部触ってもよろしいでしょうか?」

「乗り気過ぎだろ!あとお尻を触ろうとするな!手をワキワキするな!無表情だと怖すぎるわ!」


いろいろとやり過ぎな美女メイドを牽制して一息。今は人間区分。つまり後はわからないのだ。


「安心してください、ご主人様。臀部は私がお守りいたします」

「アンタから守りたいわ」

「蟻一匹通さない程近くで味わい…お守りいたします」

「本音が垣間見えてるぞ」

「あぁ!なんという事でしょう!ご主人様の臀部が真っ二つに!パフパフを堪能しなくては!」

「垣間見えたからって全開にするな!」


何なのだろうこのメイドは……。真面目な話…かどうかは甚だ不明だが、とにかく真面目っぽい話をするのには臀部を揉んでないと出来ないのだろうか。


「やろうと思えば出来ますが、大義名分を得れるので」

「おい」

「はい?」


ダメだこのメイド、早くなんとかしないと。

ダメだこのメイド、早くもなんともできない。


「まぁいいでしょう。話せば臀部が好きなようにできるようですので」

「一切そんな事言ってないけどな」

「何度も申し上げましたが、ご主人様には世界を破壊していただきます」

「……その世界ってのもなんだかなぁ」

「別に地球を壊せと言ってる訳ではございません。この情報統制のされた世界…私達が生きにくい世界を壊していただきたいのです」

「アンタ……達?」

「私達、ご主人様に仕えるモノ達です」


全く意味がわからない。

今目の前にいる美女メイドはこの世界が生きにくいのか。確かに騒ぐガキ達に注意を促せば自分が何故か怒られるそんな世界だけれど。


「ご主人様、お願い致します」

「……そんな事を急に言われても」

「臀部を触らせてください」

「どうしてそうなるんだ?お前はそこに何を見いだした」

「浪漫、そして夢を」

「カッコいいこと言ってるつもりだろうが、人の下半身を凝視しながら言う台詞じゃないぞ」


本当に怖いんだけど。

とにかく訳のわからない事には手を出したくない。それが美女メイドからの頼みであったとしても。


「第一、なんで僕が」

「ご主人様がご主人様だからでございます」

「他のご主人様でも探しなさいな」


ため息混じりでそう言うと美女メイドは素早く、それこそ捕食者が餌を取るように僕の左手首を掴んだ。


「ご自分の世界を壊そうとした、ご主人様だからこそです」

「…………」






「このクソみたいな世界を壊しましょう。我らが王よ」



登場人物紹介


【僕】

名無し。別に決めるのが面倒だったとか裏事情はない。

世界を破壊する権利を得てしまった平凡な人間。

ある程度の肉もついているがどちらかと言えば細身。


【美女メイド】

同じく名無し。こっちは普通に思い付かなかった。

クソみたいな世界を壊すためにどこからともなく現れたメイド姿の美女。無表情。

外身は美女でメイドと完璧だが中身が【僕】の臀部を付け狙うオヤジ。





アトガキ

手にとっていただき感謝です。

書いていてキリがよかったので投下した次第です。

短編にするには長すぎて、長編にするには短すぎる微妙な長さです。


ジャンルを一応ファンタジーにしているのですが、ここまで一切ファンタジー要素なしです。ファンタジーとは何だったのか。


のんびりと書くので、あぁコイツ更新したのか…程度の気持ちでお願い致します。

感想、指摘、その他ありましたらお待ちしてます。

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