*. いつかの話
「清太くん。」
「はいぃ!」
見上げるとそこには心配そうな表情をした凪紗さんがいた。
「私、横になってなさいって言ったよ?」
凪紗さんは眉尻を下げながら俺に叱る。
今日、俺は熱を出してしまい、学校を休んだんだ。凪紗さんも看病のためにと一緒に学校を休んでくれて、買い出しから帰ってきたらしい。
「す、すみません。」
横になっていると暇で、つい洗濯物を畳んでいたら、凪紗さんに見つかってしまった。
「めんめだからね?」
凪紗さんは洗濯物を俺から取り上げて、ベッドに連れていってくれた。
ベッドに俺を寝かせると、布団を被せて、リズミカルに優しく叩く。
ポンッポンッポンッ
さすがに恥ずかしくて、顔が熱くなってきた。
「る、凪紗さん。俺、子供じゃないんで。」
やめてくださいと言いながら俺が凪紗さんの腕に手を伸ばすと、ゆっくりと俺の手を掴んだ。
「ひとりで、眠れなかったんでしょう?」
凪紗さんはじーと俺を見た。確かに眠れなかったけれどそれは眠くなかっただけで、凪紗さんが寝かしつけをする理由にならない。
「ちゃんと、横になってますから。ポンポンするのはやめてください。」
俺が困った顔をして言えば、凪紗さんはポンポンをやめた。
ぎゅっ
「え?」
凪紗さんが俺の手を握っていた。
「せめて、手くらいは握らせて。心配だから。」
頭が熱でぼぅっとしてきた。俺は断る余裕もなくて、凪紗さんの手を受け入れた。
凪紗さんの手はあたたかくて、ぬくもりが手を伝って、俺のなかに広がるようだ。
俺は目蓋が重く感じて、眼を閉じた。
「おやすみ、清太くん。」
凪紗さんの優しい声が聞こえた気がする。
連載です。次から本編1話です。




