格の違い
「どこ行くんだ?」
「どこって……学校だよ、雁斗さん」
翌朝、雁斗が起きてくると、ランドセルを背負った甲多が玄関で靴を履いていた。
「……忘れてた、すっかり」
「雁斗さんは学校どうするの?」
「……訊いてみる……」
、雁斗はケータイを取り出すと、迅に電話を掛ける。
「は!? ……聞いてねえよ! あー。そう。分かったよ」
雁斗は電話を切った。
「迅さん。なんだって?」
「もう手続きを終えてるから、いつでも登校できるって。……お前と同じ学校によ」
「え! 僕、雁斗さんと一緒に学校に行けるの!?」
「みたいだぜ? 親父のやつ、お前から色々聞いたらしいからな。それで一緒の学校になったんだろう」
「それは嬉しいけど……荷物は? 勉強出来ないよ?」
「……実はな……」
「雁斗君? お父さんから荷物が届いてるわよ」
甲多の母親が言う。
「……電話で、もう送ってあるって言ってたんだ」
雁斗は送られた荷物を確認する。
(揃ってる!?)
「雁斗君。甲多と学校に行ってらっしゃい。甲多も喜ぶから、ね?」
「分かりました。行きます」
雁斗は身支度を整えると、甲多の母親に一礼して家を出た。
「……向かいの家? ……ああ、例の幼なじみか」
甲多が向かいの家の前で待っているのを雁斗は確認して待った。
「おはよー! 甲多」
「おはよう。美加」
二人は馴れた様子で挨拶を交わす。
「ん? ねえ、甲多の後ろにいる子は誰なの?」
美加は甲多に訊く。
「彼は、桜庭雁斗。訳あって僕の家に居候してるんだ」
「へー。そう……じゃあ、あたしも自己紹介しなきゃね!」
美加が雁斗に近づく。
「あたしは美加、美山美加。甲多とは幼なじみなの。甲多の家で住んでるのなら、あたしとはご近所さんね! これからよろしくね、雁斗君!」
「よろしく頼む」
「……じゃあ行こうか! 美加、雁斗さん」
三人は学校へと向かった。
※ ※ ※
「やれやれ。どいつもこいつも手間が掛かる」
「ガウゥゥゥ!」
迅に冷獣が襲い掛かる。
「俺も忙しいんだけどなあ」
迅が刀を鞘に収めて、腰で構える。
「ガウゥゥゥ!」
冷獣の前足が迅を掠める。
「終わりだよ」
「ガアァァァ!」
「やれやれ。自由に羽ばたけよ」
迅は刀を鞘に収めると、鳥を見送った。
「ゆっくり買い物も出来ないか……」
迅は戦うために置いていた買い物袋を持ち上げると、家に向かって歩いていった。
※ ※ ※
「ねえねえ! 趣味は?」
「その紫色の髪は地毛?」
「凄く肉付き良いけど、何かスポーツやってるのか?」
「好きなタイプは?」
「何の教科が得意だ?」
「何の係りをやりたいの?」
「わかんない事があったら、聞いてくれ!」
雁斗は自己紹介のあと、あっという間に質問攻めに遭い、放課後にはグッタリしていた。
「お疲れさま、雁斗さん。今日は初日で疲れたでしょ?」
甲多が机で伏している雁斗に話し掛ける。
「……おう……。学校なんか、抹殺師の事を優先してたから……あんまり行ってなくて……久々で疲れた」
「最初は大変だけど、徐々に馴れていけばいいんだよ。さあ、帰ろ?」
「おう~」
雁斗は気力で立ち上がると、ランドセルを肩に掛けて教室を出た。
「遅いよ、甲多!」
「あれ? 先に帰ったんじゃあ……」
「一人で帰るのは嫌だったのよ」
「ごめんね。じゃあ帰ろ!」
三人は校門を出て、帰り道を歩く。
「あのさー。雁斗君て……モテるでしょ?」
「……はあ!?」
雁斗が驚いて立ち止まる。
「相手が対等でも目上でも目下でも、雁斗君はすぐに打ち解けてるし、なんか~こう……人を惹き付ける魅力が有るのよ」
美加が熱弁する。
「そうか? 自分じゃ判らねえな」
「美加は雁斗さんが気になるの?」
「そりゃー、知らないことが有るからね。……もしかして、やきもち妬いてる? 甲多」
「そんなんじゃないけど」
多は金髪ツインテールの幼なじみを見ながら答えた。
「心配不要だよ……だって!?」
美加は言葉を濁すと走り出した。
「待ってよー、美加!」
甲多も走る。
「……やれやれ。二人共、幼なじみって予防線を張ってるなあ?」
雁斗も走り出した。
※ ※ ※
「ガウゥゥゥ!」
「ガウゥゥゥ!」
「ガウゥゥゥ!」
「俺の飯時に来るとは、いい度胸だ」
迅が腰に刀を構える。
「「ガウゥゥゥ!!」」
三匹の冷獣が、迅を囲むように襲い掛かる。
(抜刀!)
「「ガアァァァ!!」」
迅の居合いが、三匹の冷獣を瞬殺した。
「動いたら……腹へった」
刀を鞘に収めると、迅は陽が落ちた道を歩いて家路に着いた。




