何事も一日にして成らず
「こ~た~」
リビングで雁斗が項垂れている。
「どうしたの雁斗さん。元気ないね?」
「疲れてるんだよ~。やっぱ慣れないことはするんじゃねえな」
「もう! 一週間、学校に通って疲れてたら、これから先どうするの! ……冷獣と戦うよりも楽なはずなのにさあ」
「冷獣……。この一週間、見てないどころか、気配を感じてもねえな」
雁斗が壁掛け時計を見ながら言う。
「本来は、それが普通だよ?」
「分かってるけどよ」
雁斗はテレビをつける。
【今日は天候が崩れますので傘を持って】
「……マジで!? ……こうしちゃらんねえ!」
雁斗は立ち上がるとリストバンドをはめた。
「甲多、始めるぞ」
「何を?」
「決まってんだろ? 特訓だ」
雁斗は黒いベストを着ると、外に出た。
「待ってよ」
甲多も外に出る。
「……そんじゃ……まずは」
雁斗はリストバンドを変化させた。
「とりあえず変化させないとな」
「いきなり出来るかな?」
「いきなりは無理だ。絶対」
「……言い切ったね?」
甲多は雁斗の言葉に触発されて、リストバンドを見た。
「……くっ!? ……ウーン!!」
甲多のリストバンドは変化しない。
「どうだ? 上手くいかないだろ?」
雁斗がクスクス笑っている。
「笑ってヒドイよー! 僕は頑張ってるのに!」
「いやあ悪い悪い」
雁斗は謝りながら、リストバンドに戻す。
「コツを教えた方がいいな」
「あるの!? コツ」
「まあな。よく見てろよ?」
雁斗はリストバンドを掌に乗せると、目を閉じる。
(リストバンドに電撃が!?)
「そんで……こうだ!」
雁斗は、電撃を発するリストバンドを握り締めた。
(眩しっ!?)
甲多は目を閉じる。
「やれやれ。閉じたら意味ねえよ?」
雁斗が目を開いて言った。
「う~ん。難しいよ」
「最初から出来たら苦労はねえさ。俺も苦労したからな」
「そうだね。よし!」
甲多は掌にリストバンドを乗せる。
(僕も……やるんだ!)
「もう少しぃぃぃ!」
甲多が念じるように集中する。
「その意気だぜ」
甲多のリストバンドに電撃が発する。
「お!! 凄く電撃が出てきたよ!」
「お……おう!?」
「上手くいけー!」
甲多は気合いを入れながら、リストバンドを強く握った。
(そう簡単には出来ねえよ)
「……どう……なの?」
「マ……ジ……デ!?」
雁斗が驚きを隠せないでいた。
「失敗だった?」
甲多が、リストバンドが変化したクナイ状の抹殺器を見ながら言う。
「いや……成功だ」
「やったあ!」
喜びのあまり、甲多はジャンプした。
「良かったな」
「うん! よーし、クナイなら投げてみる!」
「おい、甲多!?」
雁斗の目の前をクナイが通過して落ちた。
「上手く投げれなかったなあ。けど簡単にはいかないよね」
落ちたクナイを拾いながら甲多が言った。
(いまの……感じは!?)
雁斗は瞬きをする。
(クナイが通り過ぎた時、風を感じた)
「どうしたの? 雁斗さん」
「はは! ……ハハハハハ!」
雁斗が大笑いする。
「えっ……僕、何か変?」
「違ーよ。でも驚いてるんだ、俺」
「驚いてる?」
甲多が不安そうにしている。
「どうやら、お前は稀少みたいだ」
「レア?」
「ああ。抹殺師には、俺のような無属性と属性持ち……通称、稀少がいるんだ。んで、お前はおそらく稀少だと思う」
「属性? 僕は何の属性なの?」
「……風だぜ」
「僕が……風の稀少!?」
「ん?」
雁斗は空を見上げる。
「冷てっ!」
雁斗は頬に降った雨粒を拭う。
「そういえば、雨の予報だったね」
「……雨……雨!? 甲多、洗濯物取り込まねえと!」
「あ! 頼まれてたんだった!」
甲多が急いで取り込みに行く。
「俺も手伝うぞ!」
雁斗も洗濯物に走った。




