弟子入り
「何の実験をしていたとな?」
「そう。そもそもの目的はなんだったの!」
甲多が凄い剣幕でレクイエムに訊く。
「そうだね……」
レクイエムは眉間にシワを寄せる。
「……成果、かな」
「成果?」
「どんな形でもよかった。とにかく何か成果をだしたかったんだ」
「そんな!? いい加減すぎない?」
「何が起きるか分からないから実験をする。あのときはガムシャラだったよ」
「いくらなんでも無茶苦茶だよ!」
「だが、やった。そして、結果的に抹殺師へと繋がったのさ」
「冷獣だって生まれちゃった」
「実験に、研究には失敗は付き物。それが大事になってしまった」
「……レクイさんは……抹殺師なの?」
「左様。私が抹殺師の第一号だ。自分が生み出してしまった化け物を倒すため、血の滲む思いをした」
「血の滲む思い?」
「言葉では伝えられんよ。だが、寿命を削ってまで若返った訳は、そんな思いをしたからだ」
「……覚悟……」
「なんにしても、覚悟をしなければ進めない。それだけの事だ」
「……つまり、冷獣を倒すためなら命を捨てる覚悟ってこと?」
「そのつもりだ」
レクイエムは静かに答えた。
「悲しいよ、レクイさん」
「悲しい?」
「そうだよ。せっかく生まれてきたのに、死ぬことを前提に物事を進めちゃってさ。そりゃ、レクイさんが結果的に冷獣を生み出してしまっただろうけど、それでも簡単に命を捨てちゃ駄目なんだよ!」
「甲多、キミは……」
「僕も抹殺師なんだ。同じ抹殺師のレクイさんが命を捨てる覚悟なら、僕も覚悟するよ」
甲多は、レクイエムに真剣に言い放った。
「私はキミよりも長く生きている。私とキミを同列に語るのはよすんだ」
「長生きしてれば凄いの? 歳上なら偉いの? 違うよ……違うよ! いつ生まれようとも、どんな人生を送ろうとも……命は等しいんだよ!」
「優しいんだね」
「レクイエム。甲多は優しいだけじゃなくて、物凄く頑固なんだぜ。言い出したら聞かねえんだ」
「私の覚悟をへし折るか」
「死なないように戦うの!」
甲多が念を押す。
「とんだ少年だねえ。私が押し負けるとは」
「相変わらず頑固だ」
雁斗は少し、レクイエムに同情した。
「まあ、話が済んだようだな。これからどうする気だ?レクイエム」
迅が訊く。
「そうだねえ……では、雁斗と甲多を鍛えてやろうかねえ」
「だから俺は雁……はあ!?」
「鍛えるって……修行!?」
二人が驚く。
「死なずに戦うには強くなるしかない。そのための手助けをしてやろうと言っているんだ」
「あんたに教えを乞えば強くなれんのかよ?」
「それは、お前次第だ」
レクイエムが雁斗を促す。
「面白れえじゃねえか」
「決まりだねえ。さて、甲多は?」
「僕もお願いします!」
「私は厳しいよ?」
「上等だよ!」
「気に入った。私は甲多が気に入った!」
レクイエムが立ち上がった。
「やり過ぎるなよ」
「約束できんねえ」
迅の言葉にレクイエムはイタズラっぽくニヤけた。




