返り咲く心
「雁斗さん!」
甲多に呼び止められ、雁斗が立ち止まる。
「……なんだ? わざわざ追ってこなくても」
「追い掛けるよ!」
「ほんと……お節介だな」
「解ってるくせに」
甲多が花を見つめる。
「説得する気か?」
「ううん。こればっかしは、雁斗さんが決めるべきだからね」
「じゃあ?」
「誰かが追わなきゃ、雁斗さん、どっかに消えてしまいそうだったから」
「そんな勢いだったか?」
「そうだよ!」
「そりゃ悪かった」
雁斗は寝そべる。
「夏に寝そべって平気なの?」
「平気なわけあるか。戻り辛えんだ」
「ははは」
甲多は座る。
「やっぱりショック……だよね」
「まあな。事故じゃなくて、冷獣に殺されてたなんてな」
「えっ、そっち!?」
「うん?」
「僕は、てっきり迅さんに嘘をつかれてたことがショックだと思ってたよ」
「……親父が嘘をついたのには理由があった。確かに嘘つかれてたのは気分が良いもんじゃねえよ? けどな、真実を知っていたら俺は抹殺師をやってなかったはずだ。だから、それは構わないんだ」
「お母さんが冷獣に殺されてた事実の方が辛いんだ?」
「……いいや。それも難とか納得した。今更、冷獣にお袋が殺されてたからって抹殺師を辞める気はねえさ」
「じゃあ、どうしてそんなに怒ったの?」
「あんだけ苦労したラグナロクを雑魚呼ばわりされた事と、その言葉に反論できなかった自分に腹がたったんだ」
雁斗が起き上がる。
「そんなに、あのレクイエムって人が凄いってこと?」
「さあな。そもそも、あいつは抹殺師なのか?」
「リストバンドを着けてなかったよ。その代わりに空を飛んだり、相手の動きを止めたり、手で身体を貫いたと思ったら傷を一瞬で治しちゃったり」
「な、なんだって!?」
「僕の疑問は、そもそも何の実験をしていたのかだよ」
「あんまり関係ないんじゃねえか?」
「……それに、あと一年で日本が滅びるなんて言ってたけど、言い方がまどろっこしいかった!」
甲多が立つ。
「そりゃ……そうだけどよ」
「僕、レクイさんに訊いてくる!」
甲多が家に向きを変える。
「おい甲多! んな素直に答えるわけねえだろ!?」
「もしも、僕の質問を素直に答えられなかったら……怪しさが増すだけだよ」
甲多は振り向いて雁斗に言った。
「……そうだった……頑固だったな、お前は」
雁斗は手を挙げた。




