人間の涙
「雁斗。お前の抹殺器、変わってるぞ!」
「何言ってんだ……って、マジかよ!?」
雁斗は、自分の両腕が金属で覆われていることに驚く。
「兄さん。あれって!?」
「仕組みは解らん。だが、凖とやらの抹殺器と雁斗の波長が偶然に合ったことにより、雁斗の抹殺器が共鳴したことで、あの形に成ったと考えていいかもしれん」
「何だか解んないけど、雁斗さんが凄くなったって事だね!」
「……なんだって構わねえ! 凖の分まで殴ってやるだけだぜ」
「神を殴るのか……下等が!!」
「くっ!」
雁斗は両腕で仮面の者の拳を受け止めた。
「ワタクシの面のように下等の腕を砕いてやる゛!!」
仮面の者の素顔に青筋が浮き出る。
「……こんにゃろ……」
雁斗が間合いを取る。
「雁斗さん!?」
「ならん。かえって加勢が邪魔になる」
「おいおい。さっきまでの余裕が嘘のような殴りようじゃねえか?」
「下等が。先ずは減らず口を封じてやる゛」
(消えた……否……居る)
(そこだ!)
雁斗が仮面の者を殴り飛ばす。
「なっああにいい!?」
仮面の者が頬を押さえる。
「俺も速く動けるみてえだ」
「下等が……調子を゛」
「無駄だぜ!」
※ ※ ※
「兄さんなら、あの速さに追いつける?」
「無理だ。視界で捉えられないのは我も同じだろうが、次元が違う気がする」
「兄さんでも追いつけない!?」
「気持ちが悪いな。姿が見えず、音と声だけが聞こえるなんてな」
「斬牙。雁斗は勝てるの? 私には想像つかないんだけど」
「ラー嬢も同じ気持ちか。正直、俺も雁斗が勝つ姿が浮かばない」
※ ※ ※
「やべえ……息が続かねえ……」
「それが下等の限界だ」
仮面の者が雁斗に掌を向ける。
「……敵に隙を見せやがって!」
雁斗は掌を向けると、掌から矢を放った。
「がっ……は……」
仮面の者の掌に、一本の矢が突き刺さる。
「動揺なんか、らしくねえじゃねえか!!」
「下等が……下等が……」
「がうううう!!」
仮面の者が殴られ、無様に地面に落下する。
「冷獣大群は燃え尽きた……自意識過剰な神も静かになった……終わった」
「油断大敵、だったな゛?」
「グェァ!?」
矢が雁斗の胸を貫通している。
「おっと。ワタクシとしたことが、心臓を狙えませんでしたね゛」
「あああ!! うごぁ!!」
「くたばれ゛」
「……ゆ……だん……した……」
「……」
二が落下していく。
「雁斗!!」
羅阿奈が甲多の風を受けて雁斗を追い掛ける。
「雁斗さん!!」
甲多が羅阿奈と共に雁斗を受け止めた。
「今、治してあげるから!!」
羅阿奈が魔癒術で雁斗を治していく。
「雁斗さん、しっかり!!」
「……甲多……羅阿奈……? 神の奴は」
「斬牙達が」
「そっか。咄嗟とはいえ、奴の喉に矢を射っちまった」
「一歩遅かったら雁斗、死んでたよ」
「ごめんだけど、そろそろ僕の限界」
「「えっ!?」」
雁斗と羅阿奈が落ちていく。
「……無事か」
「兄さん!」
ダガーがビルの屋上に着地した。
「助かったわよ……」
羅阿奈は安堵した。
「羅阿奈。わりいけど、奴の喉を治してくれ」
「……分かったよ」
羅阿奈が仮面の者に魔癒術を使った。
「……どうだよ? 気分は」
雁斗が仮面の者に訊く。
「下等が……生意気に゛」
「喉がやられて焦ったろ。手が貫かれて焦ったろ。泣きやがって! 血を流して……涙を流している。お前は神じゃねえ……人間だ!」
「……殺せ……」
「殺さねえ……。その代わり、殴らせろ。凖の想いが含まれてる、俺のガントレットで!!」
雁斗が、おもいっきり拳を振り下ろした。




