神の素顔
「もう! ビックリして手元がブレたじゃない! 記憶が消える? そんなわけないわ」
「いや……。魔癒術を使えば記憶が消える」
「根拠は有るの!?」
「ああ。俺も記憶が消えてるからな」
「斬牙……消えてるって!?」
「俺は施設で育った。けど、思い出せないんだよ……六年前まで共に過ごした施設の奴等の顔も名前も……」
「ただの物忘れじゃない? 六年前って言ったら六歳でしょ? 忘れても仕方ないって!」
「……雁斗と再会したのが三年振りだったと甲多から聞かされた。俺は五年振りだと思っていたんだ」
「それも、ただの記憶違いよ!」
「ラー嬢……俺とラー嬢が会ったのは年明けだ。三年振りじゃない」
「何、言っちゃってるの?」
「年明けに、俺は冷獣と戦って大怪我をした。普通なら病院送りだ。けど気付いたら、怪我が嘘のように治っていた。その時ラー嬢は、三年振りねって俺に声を掛けたんだ」
「……嘘よ! そんな筈は!?」
「じゃあ、三年前にラー嬢、自分で雁斗に言った約束を覚えているか?」
「約束?」
羅阿奈は雁斗と交わした約束を思い出そうとするが、思い出せないでいた。
「やはり覚えてないか。雁斗の奴、キツイだろう」
「私……雁斗に何を約束したの……!?」
「俺からは言えない。言うべきでない」
「……分かったよ……。控えるよ……魔癒術」
(魔癒術が記憶を代価にしてるなんて!? それに雁斗と約束した事って!?)
「話、終わったなら構える! 油断大敵!」
凖が燃え盛る冷獣を見下ろしながら言った。
※ ※ ※
「フフフ……。さあ、終わりにしようか」
仮面の者が両手を空に挙げる。
「何をする気か知らんが……邪魔させてもらおう!」
ダガーが仮面の者に迫る。
「兄さん!」
「!?」
ダガーが甲多に呼び止められた。
「仮面の上に何か浮いてる! 迂闊に近づいたら危ないよ!」
「確かだ。礼を言う、甲多」
「なんだ。来ないのか? それならばワタクシから、いかせてもらう」
仮面の者が両手を振り下ろした。
「何あれ!? あんなの……反則だよ」
「まともに食らえば命はない!」
ダガーが片手から光線を放つ。
「無駄だよ。ワタクシの最大攻撃を防ぐのは不可能」
「……神が人を見下すか! ……」
「当然だ。神より優れたものは存在しない。神は見下ろすのみなのだ」
仮面の者の放った光弾は、ダガーの光線を呑み込んでいく。
「すまぬ甲多。我には……!」
「……兄さん……。そうだ!」
甲多は斬牙の元に向かっていく。
「……ダガー、踏ん張れ……てんだ……」
雁斗が全身傷だらけの状態でいた。
「雁斗。目に見える重症だ、退け!」
「バカ言うな……ての! 仮面の素顔……見るまでは……逃げて……たまるかって!」
「青髪の少女の治癒を受けろ。そのままでは死ぬ」
「外傷が酷いだけだ……自分で治す」
雁斗は治癒術で傷口を塞ぐ。
「雁斗さん!」
甲多が斬牙達を連れてきた。
「やるだけやるぞ!」
「うん!」
斬牙の炎と甲多の風が合わさり、巨大な光弾を包み込む。
「そんなもので止めたつもりですか? 愚かな」
仮面の者が光弾の威力を上げる。
「……ぐう!!……」
「兄さん! 僕達も長くは……!!」
「……すまぬ。我には策が浮かばぬ!」
斬牙の炎も甲多の風もダガーの光線すらも、仮面の者の前では、付け焼き刃にしかならなかった。
「……油断大敵な!」
「ぐっ!!」
背中に痛みを覚えた仮面の者が振り向くと、凖が二撃目を構えていた。
「敵に背を向けること……命取りな!」
凖が仮面の者に矢を射る。
「愚かだ!」
仮面の者が、背中の矢を引き抜いて向かってきた矢を弾いた。
「知らないようだね。矢は一本ずつでは簡単に折れてしまうことを!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!」
「片腕で済むんだ。安いものだろう?」
仮面の者は、切断した腕を上空へ放ると、光線を放ち跡形もなく消し去った。
「わああああああ!!!!」
上空に放られた片腕を見てしまった甲多が感情のままに風を放った。
「甲多の風が……押していく」
雁斗は見送ることしか出来なかった。
「凖とやら!?」
ダガーが凖を抱き抱える。
「下等な奴等が。よくもワタクシの最大攻撃を宇宙に飛ばしてくれましたね。はらわたが煮えくり返るとはこのことです!!」
「……黙りやがれえー!」
「困ったものですよ……学習能力がないのですか? ワタクシの仮面は鋼。斬ろうが突こうが無駄です」
「ほざきやがれ」
雁斗が離れる。
「その言葉、そのまま返そう」
「後ろか!?」
仮面の者が振り向くと、ダガーの拳が仮面を砕いた。
「キサマら……神の怒りに触れたことを……後悔させてやる゛!!」
仮面の者の素顔は、青筋が引き立つ程に白かった。
「この者を頼む」
ダガーが羅阿奈に凖を引き渡す。
「雁……斗……。これを」
凖が雁斗に自分のリストバンドを託す。
「どうして俺に!?」
「羅阿なんから話を聞いていた。ウチの力は……羅阿なんを護るのに……使ってくれる人に……託したい。片腕じゃ……弓は引けない……代わりに弓を引いてな……」
凖が気を失った。
「俺なんかに……託してくれて、ありがとな」
雁斗が凖のリストバンドを着けた。
「光栄に思え。神が直々に罰を与えるのだからな゛!!」
「うるせえ。この世に……神様なんか……いりゃあしねえ!!」
雁斗が抹殺器を発動した。




